最高のプロポーズ
第49章
キース国王は妊娠5ケ月に入ったレノミンを国営で農業を行っている山里にデートに誘った。
コチャ領の人たちは思いっきり反対したが、
「車での移動でそんなに揺れないから大丈夫。その場所はコチャ領からそんなに遠くないよ。安全第一でもちろん運転します」
国王からの要請に逆らえる国民はいない・・・仕方がないので、ミンク、ダリア、ジャル、バルト、サンドロが同行する。
国王はもちろん同行を許可して、彼らにも車を用意した。
ダリアはレノミンのそばを離れるのは、本当に不満そうだったが、あまりにも必死の表情で国王が頼むので他の車に乗ることになった。
「ダリアがとっても不満そうですが、初めての二人でのデートに他人が同乗するのは無いですよね?」
「でも、国王もよく護衛が一緒でなく出歩けましたね?」
「それは・・・サンドロ以上の人間が、まだ軍部にいない・・・・宰相の息子たちでさえあの3人には、誰も逆らえない、本当に素晴らしい人材だから・・・彼らが付いているのに反対する人間は王宮にはいないと言う事でしょう・・」
「レノミンさんの御父上は本当に素晴らしい領主だったのでしょう」
「ええ、きっと・・・私にはわかりませんが、レノミンさんは、お父様を無くしたショックでこの世を去ったのだから、きっと、想像以上に素晴らしい人だと思います。ダリアがノックアウトされる人ですよ・・」
「本当のお父さんはどんな人?」
「---父は、普通のオジサンです。ビールをよく飲んで、いつも私の心配をして、ご飯をいっぱい食べるだけで、褒めてくれるような父でした」
「いいお父さんだね」
「はい、いい家族でした。突然、死んだので本当に申し訳ないと、思っています。小さい時から体が弱くて迷惑ばかり・・・兄弟にも謝りたいです」
「・・・・・・」
「でも・・・」
「でも?」
「カタクリ国の王妃の話で、少し救われています。前世では役立たずの人間でしたが、この世界では、ナナ王女の夢とココ王女の夢を、レノミンさんが叶えてくれたって、命をつないてくれてありがとうって・・・・・だから、また、命を授かって本当に嬉しいです。願わくば、日本の両親にも、この世界で元気に暮らしていると伝えたいです。どこかでどうにか生きていると・・思ってくれたら最高ですね」
「ねぇ、レノミンさんのお父さんって、当時の僕より年上だった?」
「ええ、年上です」
「良かった。それを聞いてなんだか安心したよ」
国王が、レノミンを連れて来たところは、国王が今一番、力を入れている所だった。景色を見ただけで、コチャ領の人を、説得してまでも連れて来てくれた意味がレノミンにはわかった。
山がピンク色・・・里は緑・・・・
「これは・・・」
「桜は無いらしい・・・、でも、レノミンさんがアーモンドの花を、とっても喜んでいたと聞いて植えた。実は王都で売られていたアーモンド、僕も食べた。そして、真似した。その時、聞いた話でピンクの花を咲かせるって、桜は探したけど見つからなかった。でも、アーモンドの花が咲いて、田んぼに稲が伸びている。いいでしょ?ここ?」
「田んぼを作るのは、ハナ国から教えてもらって、随分前から試験的にお米を作っている」
「今日は天気が良くて、最高のピクニック日和だ。本当なら子供たちも連れて来たかったけど、今日は遠慮してもらった」
「そうなの?グレースには、バレてたの?」
「あんなに慎重に準備を進めていたのに、やっぱりバレていたの?・・・どうして、グレースは、素直に学校に行ったのかしら?例え、町に買い物に行くのも絶対についてくるのに・・・」
「それは、レノミンさんが余りにも外に出ないから、グレースも出かけるチャンスが少ない」
「そうでした。本当に言われないと気が付かない事が多い・・・グレースには悪い事していたと思います。きっと、本当は、沢山、外に出たいでしょうに・・・」
「イヤ、でも、それは正解でしょう。これからは、外にでる機会が増えて、でも、家に帰えると思う気持ちが、グレースには自然に湧き出て、そして、家に帰る。彼女にはいい教育です。それが無かったら今頃、包帯人間になっているかも・・・・」
「本当ですね。はははは・・・」
国王はすでにテントが張られている平地に車を停めて、レノミンを大切に降ろした。
テントの中にはすでに沢山の料理が並べられている。もちろん、蟹もある。きっと、すべて、レノミンが好きな物ばかりだろう・・・・
その中でも目を引いたのはアーモンドチョコ、一口食べて、カリっと、音がした。
「スゴイ、美味しい」
「妊婦さんが食べていい物か?わからないから食べ過ぎないでね」
そして二人は手を繋いで二人は散歩する。川が流れ、滝のある場所もある。マイナスイオンが二人を包む、こぼれ日が優しく振り注ぎ、まるで日本にいるみたいだ。
少し歩くと、休む場所にはすでに椅子とクッションが用意してある。足元にはキャンドルが並んでいる。国王の気遣いが感じられる。
国王はこの日の為に、どの位準備をしたか?そして、いつも思うのは政務は大丈夫なのかと・・・?
「ここに座って、」
国王が言われてレノミンは柔らかい椅子に座る。その場所から見えるのは大きな湖とキレイな山々、
「美しい・・こんな場所があるなんて・・・サンシン国は素晴らしいです」
「この場所を見つけた時は僕も少し震えた。この場所はぼくの宝物。誰にも知られていない。だから、ここで君に結婚を申し込みます」
「------」
「レノミン・ファースト、僕は退位します。エミリオに王座を譲ります。だから、君もグレースに領主を譲って欲しい。僕たちはただの人になる。そして、僕は君の二人の父親の様な父親になりたい」
「------」
「エミリオが、僕より国王の仕事に向いているのは、知っての通りで、経済学者のニースは、抜群の腕でエミリオを導いている。ころころ国王が変わるこの国は、王室を軽視している。だから、長く在位できる国王が必要だ。それにはエミリオが一番いいと思う。幼い時から王座について、この国を導いて立派な国王になる。このことはすでにエミリオとグレースには許可を取っている」
「グレースも・・?」
「うん、グレースも君が病気になった時に、覚悟ができていた。君が元気になるのであれば、自分は何でもしようと・・・だから、今回の提案は、直ぐに賛成してくれた。二人ともとってもいい子だね」
レノミンは涙が止まらい・・・
「レノミン、あっちを見て、」
湖の上に大きな布に描かれた、『愛している。家族になろう。結婚して下さい。』
最高のプロポーズだった。
レノミンは頷いた。そして、
「はい、お願いします」
国王は手を上げて、喜びを表すと、沢山の花火が上がった。みんなは知っていて、グルだった。でも、レノミンは子供たちの気持ちも、みんなの気持ちも嬉しくて、温かくて、素直に結婚したいと思った。
「結婚して、家族になって、赤ちゃんを産みたいです」
「レノミン様、おめでとうございます。おめでとう!おめでとう!おめでとうございます!」
コチャ領のみんなもやって来て祝福する。
国王が、レノミンを高く抱き上げた時に、一瞬で椅子に戻された時の国王の顔は、一生忘れられないだろう・・・・。




