親子二人旅
第37章
国王とエミリオが、コチャ領を去って、3年の月日が流れた。
3年前、宮殿に向かう車の中で、エミリオは国王にため息をつきながら・・・
「お父様、私は私が王宮の修繕で、王都に居る間にお母様にプロポーズをなさって、私たちは家族で宮殿に入ることを夢見ていました。ハァ~~・・」
「エミリオ、夢と現実は大きく離れていることが実感できて、良かったな! 現実は甘くないと言う事だ! 」
「---しかし、お母様とグレースの部屋はケチらずに、一番、力を入れましたのに・・・私のプレゼントを見ることも叶いません。いつか、お母様は、王都に出向いて下さるのでしょうか?」
「エミリオ、宮殿にはお母様の部屋は必要ない、もしも結婚できたなら、お父様の部屋にお母様は寝ることになる。豪華な部屋は必要なかった。仕方がない、その部屋は僕が使おうか?」
「いいえ、お父様のお部屋は1年前の部屋です。あの奥の部屋は誰も入った形跡がありませんでした。
僕たちが出て行ったままの状態だったので、清掃だけで済みました。
「いい部屋だったのに・・・」
「------」
今日はコチャ領とカタクリ国の橋の完成式典。
コチャ領からはレノミン、グレースが出席、カタクリ国からはカスター国王と皇太子が出席して、滞りなく式典は終了した。
その後、レノミン、グレース一行は、カタクリ国の王都へ招待されて、向かっている。最近は、どの国もハナ国より車を買い入れ、王族、貴族はいまでは車を持つことがステータスとなっていた。
車の普及に伴い道路整備もされて、両国は大きな雇用も産んだ。
経済は今の所4か国とも順調といえる。もちろん、貧乏サンシン国も、キース国王の手腕によって、大きく改善された。
今、グレースは10歳になろうとしている。しかし、10歳の女の子には見えないくらいの美しさを備えている。
「お母様、カタクリ国は美しい国ですね。道が切り開かれ、遠くの山や川が見えます。王都までは、まだかかるのでしょう?カスター国王はこの道沿いを、とっても安全にするために沢山の人達を道沿いに誘致したのです。おじい様は、お力がありますね」
今回、カスター国王のたっての願いで、レノミン、グレースと一緒にカスター国王も一緒に同乗している。王都までの道を、自分の手で説明したいが為に・・・・。
「本当に綺麗な街道です。コチャ領も橋から街中までは力を入れて整備しましたが、圧倒的に違いがわかります。そして、街道沿いのお花が、とっても美しいです」
「この街道沿いはいわば、サンシン国への続く道となっていて、カタクリ国の人々はサンシン国への憧れもあって、国民が協力してくれた。もうすぐ、その意味がわかるよ」
その意味とは王都の街に入ってわかった。
王都の人々はエミリオとグレースを歓迎していた。自国の王妃の、凱旋と言う感情があってのことだろう・・・しかし、毎回、産まれる王女に多額の公費をつぎ込む王家を、受け入れない国民も多い。
グレースは周りの人々が手を振ってグレースたちを歓迎してくれたことに感動して、窓を開けて、手を振った。
街道の声はいっそう大きくなり、
「グレース様~~~~、レノミン様~~~!!!キャー!!!」
そして、たまに・・・・
「Ⅼ葉様~~~」とも声がかかった。
これは異例なことで、王族は決してしない、グレースが顔を出したことで、多くの国民はあまりの美しさに沸き立った。
「なんという、美しさ・・・我が国の彫の深さを受けついでいらっしゃる。わが王女・・・」
そう・・・・国民は女系の皇女を拝礼することが無かった。噂だけで、デマとまで言い出す輩もいる程のレアな少女だった。
「グレース、危ないから乗り出してはダメヨ」とレノミンは注意するが、
「大丈夫、お母様、少し、車に酔ったから、窓を開けて手を振った方が楽しいわ・・・おじい様の警備を信じましょう」
カスター国王は少し青い顔をして頷いた。その時、運転席の皇太子が、
「グレース、安心して、今日のこの日の為に、どれ程入念に点検したかわからない。この車もハナ国から届いた最新の車で安全性を高めてもらっている」
そう話すのは、カスター国王によく似ている爽やかな皇太子であった。
「皇太子、自らの運転で恐縮です。本日はありがとうございました」
「いいえ、誰よりも、早くこの道をこの車で走ってみたかった。皇子達の中では今日のこの役は取り合いでした」
「そうなんだ・・・私たちに、早く会いたいのかと思ったのに・・・」
カスター国王は顔をくちゃくちゃにして
「ハハハハ・・・」と笑った。国王は良くグレースに電話して、近況を尋ねる事が日課になっていて、その話を、周りの王族もたまに耳にしていた。誰もが国王に、こんな顔をさせるのはグレースしかいない事は周知の事実だった。
そして、国王が、二人をこの国に迎え入れる日をどんなに楽しみにしていたかももちろん知っていた。
3皇子の事があり、あの日からは自分の子供でも、しばらくは近づけなかった国王だったが、今日は皇太子に運転を許したのは、この日の為に皇太子が本当に尽力してくれた為だった。
もしも、二人が滞在中に何かあった場合の事までも、すでに準備しているカスター国王であった。
王宮に近づくにつれて街道の国民は増えていき、コチャ領の、バルト、サンドロ、ジャル、ミンクの緊張し始めている。
サンドロの車が近づき、グレースに窓を閉める様に伝える。
グレースは近頃は落ち着きが出てきて、その指示に頷いて従うようになった。それを見て、レノミンは暖かい眼差しをグレースに向けた。
国王までも、
「グレースは賢い子に成長している。レノミンの愛情で立派になった」
「おじい様、いやだ、私は昔からいい子ですよ」
「そうだ、そうだ、ははははは・・・」
皇太子は孫に甘いとはこういう事だろう・・・あんな言葉、この国のどの皇子も、頂いたことがないと、考えていた。恐るべし・・・グレース・・・
パレードのような車列は、そのまま宮殿広場に止まって、レノミンとグレースは初めてカタクリ国の地に、足を踏み入れた。二人が車から降りて、正式なお辞儀をして、カタクリ国の王族にご挨拶をすると、王妃はレノミンとグレースを見て泣いていた。レノミンはココ王女に本当によく似ていたので、王妃はレノミンの手を離さない・・・そして抱きしめ、泣いていた。
「王妃・・・・レノミンを宮殿で休ませてやってくれないか?」
「すいません、国王、レノミンさん、グレースさん、ようこそカタクリ国へ、長い間、お待ちしていました。お疲れでしょう、今、直ぐに、お部屋にお通しいたします」
「国王、王妃、皇族の皆様、ご招待ありがとうございます。しばらくの間、こちらで勉強させていただきます。娘と二人よろしくお願いします」
とレノミンは挨拶した。レノミンは30歳近くになっているが、大人しいまま年を重ね、今では、息をのむような美しい女性になっていた。
出発前、キース国王はどんなに気をつけるかを毎日のように、電話と手紙で注意して心配していた。
周りの皇子や貴族たちは、ココ王女にない美しさに言葉が出なかった。
グレースはカスター国王の手を握り、少し、催促した。それに気づいて、
「ううん、」と咳をして、周りに行動を促した。
「おじい様、私は宮殿を見せてもらってもいい?こんなに大きいのね・・・」
「そうか?では、こっちの一番いい席で、お菓子でも頂こうか?グレースが気に入るといいのだが・・」
「本当?」
「ああ、行こう!」
二人が手を繋いで、嬉しそうに話しながら、国王自慢の庭園に向かっている姿を見て、また、行動は止まってしまった。




