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トップシークレット

第34章

 二人は穏やかな気持ちでレノミンの部屋を訪ねた。


 トントン、

 「レノミン様、少しよろしいですか?」


 「どうぞ・・・丁度良かった。3巻の原稿が出来上がって、今回は主人公が飼っているネコのぬいぐるみをオマケにしようと思ってデザイン画を描いたのですが?どう???これ・・・・」


 「見本になるように毛糸でも作ってみました」

 「レノミン様、昨日の夜は寝ていないのですか?」

 「そうなの・・夢中になってしまって、このネコどう?」


 「片方の腕の肉球だけが大きいのですが・・・」


 「そうなの今回、一人の男の子が、自分の飼いネコの肉球の匂いを嗅ぐシーンがあって、あえて肉球を大きくしてみました」


 「発売まで読めないのが残念ですが、このネコ本当に可愛いです。グレース様が見たらきっと欲しがりますよ」


 「でしょ、見せられないのが残念です」

 「では、さっそく、バルトに原稿を渡して、それから販売計画を立ててもらって下さい。では、お休みなさい・・・・」と、言ってそのままベットに流れ込むレノミンに、二人は顔を見合わせて微笑んだ。(また今度・・)


 その後、バルトに原稿を渡すと飛び上がり喜んで、自らが早馬に乗って王都に出向き、構成の確認や、前回と同じ表紙に、こっそり目立たないように、そのナナと言うネコのイラストも入れたりしてみた。今回も販売ルートは売店に決まった。後はオマケの準備を始める。今回も超極秘生産になる。


 「今回のオマケはぬいぐるみとなりますが、布で生産しますか?」

と、数日が経ち、元気を取り戻したレノミンにバルトは聞く、


 「私は毛糸がいいと思っています。国王もこの国は布製品に力を入れているが、その他も柔軟にした方がいいとおっしゃっていました。同じ繊維製品ですので、毛糸も伸びていければと思っています」


 「このさわりごごちが好きなので・・・どうでしょうか?少し毛糸をアレンジして逆立てて、モフモフ感をだしました。ピンクの肉球は通常ですが、可愛いでしょ?」


 「---か! か、か、可愛いです」

 (え!!なんだか・・バルトはネコ好きなのか?顔が崩れて・・・ニコニコしている。)


 「黄色いネズミの生産も、少し落ち着き始めましたので、多分、ナナネコの生産に入っても大丈夫だと考えられます」


 「黄色いネズミは、他の3か国にも輸出していましたので大変でしたが、やっと従来の生産で落ち着き始めています」


 「また、忙しくなるのは問題ないの?」


 「はい、彼女たちの子供たちも学校に通うようになり、それなりにお金がかかりますので、喜ぶと思いますよ」

 「そうだといいのだけど・・・無理させることはしたくないの・・・・」

 「では、まとめて1週間くらい、工場をお休みにして、その後、本格的に生産に入るのはいかがですか?」


 「いい案だと思います。それで行きましょう。レノミン様は国王といつそんな話をしたのですか?」

 「え?」

 「繊維製品の話?」


 「いいえ、あなた達と話しているのを、聞いていただけです、でも、微力ながらこの国の為になればいいかと思いました。例えるなら、わたくしは、毛糸販売大臣でしょうか?」


 「色物にぬいぐるみは無理だと考えていましたが、身近な動物はアリかと思って、それなら、毛糸で作りたいと思いました。----Ⅼ葉だとバレますかね?」


 「バレても同系列の商会だと、言うことにしますので安心です。後は、今回も、この別荘のトップシークレットになり、バレた時には工場は解散となります。と、通達します」


 「お願いします。国王側にも秘密で・・・」

 「はい、かしこまりました」


 廊下に出て、バルトは考える。

 (国王が、嫌いと言う事ではないらしい、そして、きっと、この国はお好きなようだ)と、しかし、ただ、それだけだろう・・・・と思いながら歩いていた。


 王都、BL発売日、いつもの様に5ケ所で5人は待機する。


 今回、売店の好意で10cmくらいのナナネコのぬいぐるみを置かせてもらった。もちろん盗難防止で板に張り付けてある。


 通学時間・・・今回は売れ始める時間がとっても早かった。


 10時にはもう一度、そして、もう一度、積み上げをし、お昼の時間に備えた。その頃にはナナネコは手あかで随分汚れてきた。

 (何度も盗難に遭いそうになって、くたびれて来た。)



 お昼が過ぎて、このままでは完売になると思い、近くの倉庫に出向こうとした時に、声を掛けられた。

 「バルト、何しているの???」と、エミリオ様だった。


 エミリオ様は現在は王宮にお住まいになっていて、王宮での食事に不安があり、現在はダリアと単身赴任中だった。ダリアがお構えなく、


 「あら、これレノミン様の新作ですか?随分、汚れてますが、可愛そうに・・・アレ、これ、もしかして第3巻ですか?あ~~~~王都に来ていて良かったです。発売日に手にすることが出来て、有難い、有難い、これ、ください」と、お金を出して品物を受け取る。


 「僕にもひとつ・・・」

 「エミリオ様、こちらはちょっと・・・後でご説明に伺いますので、今回は見逃して下さい」

 バルトはダリアに目配せをしてその場から立ち去ってもらった。


 下校時間にすべて完売となり、王都でも販売は終わった。その後は全国展開になる。


 バルトは重い足取りで、宮殿に向かった。


 「今日は本の販売で王宮には誰も来れないの?」

 「はい、5人全員での販売になります」

 「あんな道の売店で沢山、売れるの?」


 「はい、売れます。本は本屋だけで、売る物ではないと考えました。本屋に置いてもらうのも料金が発生します」


 「ダリアは大人の本で、僕には貸せないと言っていたけど、そのネコ、お母様が作ったのですか?」

 「はい、そうです」


 バルトはダリアに渡して、ダリアはぬいぐるみを洗濯する。


 「こんなに汚れて・・・」とエミリオが言う。


 「お母様の本はもっといい場所で販売はできないのでしょうか?ぬいぐるみがこんなに汚れて、お母様に申し訳ないです」


 「はい、しかし、この本は、すでに3巻目で王都では今日、すでに完売しました。レノミン様はどのように販売しても完売の方を喜んでくださると思います」


 「レノミン様は本が沢山売れて、領土の人に沢山の仕事が出来て、それがお金になって領民の生活を豊かにすることを、一番に考えていらっしゃる、とてもいいご領主様です。例え、ご自分の本が道端で売られていても、ぬいぐるみが多少汚れていても、領民の幸せの方が、大切だと思っていると思います」


 エミリオは頷いた。

 「このナナネコはこの本の為に作られましたが、残りの4個もエミリオ様にお届けします。グレース様は、このネコの存在を知りません」


 「グレースは知らないの?」

 (エミリオ様・・・笑顔が隠し切れない・・)



 「はい、もちろん、国王も知りません。だから、申し訳ありませんが、エミリオ様には、この本の事を秘密にしていただきたいと、思いこちらに参上しました」


 「うん、わかった、残りのナナネコも僕の物だね」

 「はい、そうです」


 エミリオは嬉しそうにしていた。やはり、ご両親と離れて、一人で王都にいるのは寂しいのかも知れないとバルトは考えていた。

 「それで、今後も次の本が出るの?」

 「それは一応、未定です。レノミン様が決めることですので・・・」


 「僕も王都の人達の為、国民の為に何が出来るか考えるよ。何かに囚われていた自分が、恥ずかしいと思ったとお母様に伝えて下さい」

 「はい」


 「宮殿の修理もすでに完成が近いですが、エミリオ様もご一緒に戻られますか?」

 「本当は一緒に戻りたいけど、もう少し、ここで頑張ってみる」


 「はい、かしこまりました」


 宮殿を後にして、5人はまた集まる。

 「今回の失敗は挽回できないかも知れない・・・」


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