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経済学者ニース

第30章

 次の日、グルガシ国の10分の1くらいの海岸線を見て回った。


 グルガシ国王自身も、このような長距離移動が、始めてだったので、国内の視察がどんなに大切かを思い知った。

 国民を飢えさせるわけにはいかない・・・魚介は豊富だが、塩の影響で農業が駄目になる事もある。


 それに加えてS国と戦争が始まれば、多くの国民が、餓死するのではないか?と旅の途中から考えだしていた。

 「車はいいね。移動が速くて、しかし、燃料がどうするか・・・・」

 

 「はい、このままでは燃料不足になります。実は私たちの後を、ハナ国の燃料車が、もう少しで追いつきます。合流して、もう一度、カタクリ国まで戻りましょう」


 「カスター国王は、3皇子の事もあります。その後は、コチャ領と一番近い所の国境をサンシン国が開けてくれました。キュル皇子も回復し、グレースも蟹を待っています」


 「シン国王、ありがとう」


 サンシン国の国境にはすでにバルトとギシが出向き、王都では急遽、宮殿の整備がエミリオの手で行われていた。今回、エミリオは皇太子の立場を使い、宮殿の修復に精を出した。


 「多分、国王は、こちらに立ち寄る事は無いと思いますが、一応、死体とかそのままではいけないと思い町の業者にお願いして、清掃と修復の計画を立てましょう」


 バルトとギシは、その任務を自分の商会の人間に命令して、すべてはエミリオ様の確認が必要だと言い残し、国境に発った、エミリオは、王都の店を積極的に使った。それは、いわば迷惑料とも言えた。

 ジャルが全面的に警護と補佐を担当していた。


 そして、ギシが皇子に紹介したのは年を取った商売人だった。

 「皇子、こちらはいかがなさいますか?」


 「すべての物は質素にして下さい。壊れたもので売れそうな物はお金に換えたいので、そちらの方もお願いします」

 「換金ですか?」

 「はい、セカンド家、サード家には、随分とむしり取られてました。王家はとても貧乏です。しかし、この宮殿のいい所は丈夫な所です。もしもの時に、この宮殿は王都の人々の為に開け放して、避難の場所になればいいと考えます」


 「皇子・・・・・あなたは立派な人だ」

 「普通でしょう。今までの王族が、酷かったと父は言っていました。父は、国民も誰も死んで欲しくないと言うのが口癖です。だから、あなたも長生きして下さい」


 「しかし、宮殿で、いつかは素敵な夜会が開かれて、高貴なお方がこの宮殿に集まり、活気があることも、実は、国民の憧れでもあります。今は、国の立て直しの為に、物をお売りになられても、ここに又、王族の方たちがお暮しになって、国民の見本となり、憧れの存在であって欲しいと、思っている国民もいる事を、皇子には知って頂きたいです」


 「あなたは・・・?」

 

 「はい、私は昔、おじい様にお仕えしていた者です。いつか、今日という日が来ることを、願って生きてきました。前国王が亡くなってから、その弟やその家族たちはやりたい放題でした。しかし、前国王は違いました。国民の手本となる人格の持ち主でした。今、国はキース国王の下で立て直しを図り始めました。そして、後継者になる皇子はこのように優秀です。だから、今、私はきっと夢を見ていると思っています」


 「------」

 「あなたは誰?」


 「名乗る程の者ではありません。しかし、王都の経済が回るようにして、何があっても国民の生活を守りたいと、思っています。ギシ達とはいい商売仲間です。ですから、皇子、王都の為に何かすることがあれば私をお使い下さい」と、老人は頭をさげた。


 エミリオは少し不安ではあったが、この老人を少し信じてみる事にした。

 今の宮殿には、使用人は居なかった。荒れ果てて、埃だらけで臭いもすこし変だった。


 「父上がおっしゃるにはここで働いていた使用人はもう使いたくないと、全てを外の業者と一つ一つの契約を結ぶことを任されています」


 「ですので、宮殿に入る人間の経歴書があった方がいいのですが、それを、判断して、業務を委託する形にするようにと伝言がありました」


 「人の調査と業務委託ですか?」

 「はい、」


 「それは、また、経費節約にはならない、余計にお金がかかりますが・・・」


 「国王が、おっしゃるのには、ここでチェックをしないと、また、命が狙われて、余計に警備や設備のお金がかかると・・・私たち二人は何度も暗殺されかけています。この国に信じられる使用はいません。だから、今回、使う人間は間違えがあった場合は殺します」


 「その条件を飲める業者を、探して欲しいと、そして、永久にこの宮殿で働けることはありません。イヤイヤ、働く必要もありません。要らないと思った時には、契約を切るだけです」


 「国は貧乏で財政は赤字です。それでも税を納めてくれる国民の為に、無用な人件費を削りたいとの命令です。ですので、前職で、王宮に関わった者たちの親戚も遠慮してもらいます。特に厨房関係者は契約しません。毒入りですから・・・」


 「もしも、この条件で、あなたが王都の経済の為になると思うのでしたら、あなたにこの調査と業務委託の業務を任せたいと思います。どうでしょうか?」


 老人は皇子の前に跪き、

 「皇子に忠誠を誓います。わたしは前国王のもとで働いていた、経済学者のニースと申します。ただ今の国王と皇子の考えに賛同します。この業務を賜りたいと思います」


 「よろしくお願いします」


 その日はまた石油領主の家に泊まった。


 そこでそれぞれの国に連絡を取り、コチャ領への連絡はスライム携帯を使って、そこから、また、それぞれの地点に連絡を回していった。


 サンシン国の国境の開設は準備が整い、カタクリ国との協議も終わっていた。


 明日にはまた、カタクリ国に入国し、それからカタクリ国王を見送り、シン国王とコロネ国王はサンシン国に車で向かう事にした。


 別荘の家令は、エミリオ皇子が調査と業務委託契約を、ニース経済学者に委託したと報告する。


 「ねえ、その学者さんは大丈夫だと思う?」


 「はい、良く、ギシたちと儲け話をしてお金儲けの天才だとバルトは言っていましたが、経済学者だったとは思ってもいませんでした」


 「そんな優秀な学者さんが、町中でせっせと、お金を回してくれていたから、何とか王都が立っていられたのか・・・???とりあえず、この件は皇子に一任してあるので任せてみましょう。高い授業料だ」


 「はい、国王、しかしながら、この立案は国王でいらっしゃる。実にいい案だと私も思います」


 「国民の中には、まだ王宮に娘を売りに来る親もいます。この制度が上手く活きれば、バカな親もいなくなり、節度のある宮殿になるのではないでしょうか?」


 「もうエミリオにあんな思いはさせたくないから・・・とにかく、少し、エミリオの事もよろしくお願いします。今日はグレースは?」


 「はい、今日は宿題がたまっていますので、ティアが付きっきりです」


 「そうなんだ・・・グレースはあまり勉強とか好きではないのに大変だね」


 「いいえ・・・・やればできるグレース様!!! と、いつもレノミン様は言い聞かせています」

 「ーーうん! それで、行こう! 僕もそう思っているとグレースに伝えて、お土産は蟹だよと・・・、あっ!宿題が終わってから頼むね」

 (グレース?何かやらかしたのか・・?)


 「あのぅ・・、レノミンさんは・・?」

 「はい、原稿に取り掛かっています。最近は忙しくて、筆が、進まないとぼやいておいででした」

 「そう、では、おやすみ」

 「失礼いたします」


 石油領主の屋敷は、午前3時には出発できた。夜が明け、朝を迎え、カタクリ国に入国、そこから、二手に分かれて、サンシン国を目指して、旅は続いて行った。


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