教育改革
第22章
怖い夢を見た翌日からこっそり、国王を観察することにした。
家令は、ダリアが、レノミン様の侍女として、学校に付き添う為にレノミンの侍女が居なくなった為、誰が侍女を専任で採用してはいかがかと、打診した。
レノミンは侍女が居ない方が国王を見張ることを自由に行えると考えて断った。
「国王も今まで侍女を付けたことがないとおっしゃっています。いかがいたしましょうか?」
(それはそうだ。現代人は自分のことは自分でするのは当たり前。)
「ええ、国王のお好きにしてあげて下さい」
「後、国王は今日、学校に視察に行きたいと申し出がありましたが、レノミン様がいかがなさいますか?」
「え!!!学校に?」
「はい、皇子とグレース様の様子をこっそり覗きたいとおっしゃって・・・国王・・・」
「---原稿が全然進んでいないので、ご遠慮します」
「---レノミン様、バルトの事は気にしなくて大丈夫ですよ、レノミン様が借金と言う言葉に弱いのを知って、わざと、原稿を書くように仕向けているのですから、何度も言いますが心配ありません。最近はダリアの高麗人参が他の3国からの注文が多く、国王は本当に金山だ!
と叫んでいる位ですから・・・ご自身のお体を大切にして程々にして下さい」
レノミンは頷く。
国王は学校に車で出かけると言うので、サンドロが付いて行く事になった。サンドロは今では国王が出かけるのが待ち遠しい。
「運転を覚えた方が僕は楽だから、最初は僕の運転を見て覚えて欲しい」
「本当に運転させて下さるのですか?」
「いいよ、君、恐ろしく身体能力があるから、すぐに覚えられると思うけど・・・。
「この車、ハナ国の国王が下さった最新の物で結構、いい感じです。馬力もあるし、少し大きいけど安全だと思うよ。ただ、壊したら我が国では直せないのがちょっとね・・・技術を習いにハナ国に行くのはどう?でも、レノミンさんの許可がいるけどね」
「------」
サンドロは、黙ったままでしっかり国王の運転を助手席で見ている。
「ギアを上げて行かないと進まないから・・・こうやって、ハンドルは回すだけで簡単でしょ」
運転を教えながら学校に到着する。王都でも、少しはマシな官僚を、これから作って行くためには学問が大事と考える。模範になる学校があれば、視察してハナ国のような、受験制度を設立していきたいと考えていた。それに、少しエミリオが心配だったのもある。
グレースと違い、大人しいタイプの子だった。きっと、母親に似たのだろう。そうなると、グレースは僕に似ているのか??と考えながら、学校長に挨拶をかわした。
学校長はきっと、理事長のレノミンを、舐めてかかっていたのだろうか?学校経営について一度も領主の意見を聞いたことが無かった。前領主は厳しい人で学校で起こった事を毎月必ず報告していた。
「理事長はレノミンさんだけど、実務はあなたが行っているの?」
「はい、国王・・・」
学校長は思ってもみなかっただろう、自分の学校に国王が訪ねてくるとは、まして、皇子と王女がこの学校に通うことになるなんて・・・。
心臓がどきどきして足が震え、声が上手く出せない。
「この学校を卒業すると、何かいいことがあるの?はくが付くだけ?その後はどうしているの?」
「はい、比較的、こちらの領土は商売を行っている人が多いので家業を継ぐことになります」
「家業を継ぐか?1週間後に私が作ったテストを行いたいので学力に自信がある生徒は誰でも受けられるようにしてくれる?」
「テストですか?それはどのような?」
「テストだから、教える事はできないよね。はははは・・」
「はい、そうですね。学年は?」
「学年とかいいから、頭がいい子が欲しいので、17.8で、何年も前からここで学ぶものはないと嘆いていたらしいから、10歳以上ならだれでも受けて下さい。お願いします」
「あっ!それから、会計の人を呼んで!うちに数字が好きな人がいるからその人にちょっと、財務の点検してもらいたいので、資料がいる。お願いね」
「大体、、この国は監査って、ないからなぁ~~~必要だよなぁ~~~」
学校長はその場ですでに立っていられないかった。ディ・エンド!! バン!!
国王は校内を勝手に歩いて、勝手に覗いて、勝手に立ち止まる。
ある程度、見終わると、エミリオとグレースを探しにいった。
音楽の時間なのか、好きな楽器を持って遊んでいる。エミリオが選んだのは木琴で、グレースが選んだのはシンバルだろうか、バーンと何度も鳴らして周りの子供たちはとっても迷惑そうだ。
「ふふふふ・・・グレースはどこでもグレースだけど、あれで領主の娘ではなかったらイジメにあっていたのではないだろか?ましてや、今度は王女になったわけで・・・どう思う?」
「グレース様は活発で、最初は周りから浮いていましたが、レノミン様が毎回、根気よく色々な事をお教えになって、周りの友達とも溶け込むことができました。領主の娘と偉ぶった事は一度もなく、お友達には親切に接していられます」
「そうなんだ、レノミンさんは凄いね。大人しいけど、芯があって、毎回、頭が下がるよ」
「はい、私たちもそう思っています」
「エミリオはどうですか?まだ、わからないかな・・・?」
「はい、しかし、ティアが言うには、優しい心をお持ちで頭脳は抜群にいいのではないかと言っていました」
「皇子の教育は国王がなさっていたと聞きましたが・・・」
「うん、宮殿で、誰かの人形として使われたくないと思って、色々教えて来たけど・・こんな無垢な子供たちの中で、戸惑っているのではないかと思って、今日は偵察です。子供は現実的だから、皇子としてどう接しているのか気になるよ」
「皇子=次期国王だからね」
「あっ!国王、グレース様は今度は太鼓に興味を持ちました。グレース様がお好きそうですね」
「合奏が始まる・・・」
先生が子供たちに指導して、合奏が始まったが、どうにもならない、誰かが邪魔な誘導をしているとしか思えない程の不協和音、国王は目を瞑り、頭の中で一生懸命に正解の音を探していた、その時にエミリオが演奏を止めた。
グレースにシンバルを渡し、もう一人の太った男の子に太鼓を渡す、そして、先生に最初から始めるように指示を出して、はい、もう一度!!
そして、さっきよりも大きな音で木琴を叩き、誘導していく、今度は正解の音が少しわかった。子供なのでリズムが狂う事もあるが上手くいっている。最後にグレースがシンバルをバーンと叩き、終わった。
「あーーー辛かったよ。曲が終わって、なによりだ。疲れた。帰ろう!」
「国王、もう、よろしいのでしょうか?」
「うん、僕も早く子離れしなくてはね・・・これ以上、あの演奏を聞くのは辛いし・・」
「町に楽器を売っている所がある?そこに寄って行こう。グレースに何か楽器を習わせないと・・他の子に迷惑がかかる」
「------」
国王とサンドロは楽器店に向かった。色々見て、1時間くらいかかって国王が選んだのは、王道のオルガンだった。本当はピアノが欲しかったが、売っていなかった。オルガンでまずは音を教えて行こうと考えた。
学校の経理からもらった資料をバルトに渡し、1週間後のテストに備える。
「ドント宰相を呼んで!」
ドント宰相は罪人で囚われの身だが、国王は自分専用の部下の様に酷使している。
今回のテストも、ある程度の提案をしてドント宰相に作らせる。宰相が提出して、国王が駄目出しして、また、提出、また、駄目出しが、繰り返されて、テストが出来上がった。
国王は考えると宰相以上に自分が気兼ねなく使える部下はいないな~~と、思うようになってきた。優秀な彼らはレノミンさんの人で、・・・カタクリ国の人たちもレノミンさんの人だ。
「は~~、人望って、大切だとエミリオには強く教えておこう・・・」
グレースは最初はオルガンに興味を持ったが、すぐに飽きてしまい、国王も無理強いはしないので、そのままお蔵入りになった。エミリオは思った通りだと頷き、その場を、立ち去った。




