death in the afternoon(午後の死)
「しかし、ワインボトルが似ているだけで全てを関連付けるのはあまりにも・・・」
脳を過った疑問を投げかけたエミリアだったが、ドロスは大きい体を前のめりにさせ食い気味に会話をかぶせてくる。
「よく考えてもみろ、こんなに精巧なラベルを作れる奴なんざそうそう居るもんじゃない。それに、この焼き焦げた棚をよく見てみろ」
先程まで視線に収めていた炭化した棚。
注意深くそれに目を張るエミリアは1つ、不審に思う点を見つけた。
「これ、棚の木目と馴染んでない・・・ですね」
「ああ、一部の焼けた後なら時間の経過とともに馴染む。いや、棚自体が劣化して炭になった部分が目立たなくなるってのが正しいな」
「では、この焦げた跡は最近できたものだと?」
「そうだ。この棚だけは先代の頃から使ってて、愛着があるもんだから改装してもこれだけは残してる」
ドロスがため息交じりにそう吐くと、件の口の割れたワインボトルを手に取る。
すると、空に混じり硫黄のような匂いがエミリアの鼻を付いた。そのあとを追いかける様に、焦げた匂いが微かに漂い、さながら戦場の荒野に似た香りが立ち込めてくる。大方、ボトルの底に溜まっていた残り香が上ってきたのだろう。
「この匂いは・・・」
そして、その匂いの正体は間違いなく「黒色火薬」のそれであったが、エミリアには正体が分からず首を傾げている様子。
ゆっくりとボトルを置いたドロスは、表情をより嶮しくさせ吐息にも似た声を震わせる。
「午後の死ってカクテルを知ってるか」
「いいえ、初めて聞きましたが。それとこの匂いとなんの関係が」
「午後の死。つまりは時間の消失だ」
含みのある言葉がより一層エミリアに疑問を与える。




