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日和の国の中瀬さん  作者: 小箱甘味
【第一章】日和国の一幕

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第一節第2話 面倒事

 お使い自体は至極簡単に終わる事が出来る。まだ終わっちゃいないけど。


 此処は黄昏(たそがれ)区。

 異名として第四住居区と呼ばれる位に住民が集まっている。

 エンブレイス交番にも駐在交番員がちゃんと居て、事件に追われているなんてことはない。


 つまり、駐在交番員ですらこき使われる程に事件が起きていないという事。

 それはそのまま住みやすいという事に繋がる。

 事実、ごろつきや不良は少なく、スリなどといった犯罪などはあんまり起きないのだ。

 起きる時は起きるけど。


 その為、黄昏区の中でお使いをする事は、比較的他の区画でお使いに行くよりも遥かに簡単だ。

 お金を無くす事も、まぁ無い。現金で持ち歩く人はそうそう居ないが。


 ただまぁ、そのまま犯罪率が低くなるという事にはならない。

 低俗な絡みが無くなった所で、犯罪が起きないということは成立しない。

 スリとかは確かにあまりないけど、襲撃とか占拠とか発生してそのまま強盗とかは全然存在している。


 最低限の備えをしなくてはならないのは……結局何処の区画も変わらない。

 変わんないけど、黄昏区がマシなのは事実なんだよなぁ。






 ぐだぐだ考えながら二、三十分程歩いた先のお店で注文証明書を渡し、お菓子の入った箱を受け取る。

 少し上質な箱だ。綺麗なガラで、私ならば買わないような代物。祝い事とかじゃないと買わない。


 ……にしてもキレイな桜花弁の箱だなぁ。なんのお菓子が入ってるんだろ?

 饅頭がいいな。いや、私が食べるわけじゃ無いんだけどさ。


(万仲介社は良く破壊しているから素寒貧なとこだと思っていたけれど、違うのかな?)


 結構高いと思うんですがね。

 あそこの仲介業って結構物騒だし、その物騒さに比例してお金もかかる筈。

 装備費とか、後恨み買ってるから色々と減る筈だけど。


 どうせ関わりようがないしとそこで思考を止める。


 深入りしない事が吉だと、店長や水無瀬も良く言っていた。実際、そうなのだろう。


 私自身も何回か事件に巻き込まれている。

 ちょっと気になって、そんな気分で……色々な理由により深入りしてしまい、巻き込まれた後は、余程周囲の国民に恵まれてない限りはまぁめんどい。

 巻き込まれても神苑天稟を使ってさっさと逃げたりする事もまぁまぁありはするものの、基本的には警察や交番員のお陰ですぐさま助かっている。


 いやむしろ、警察が介入した結果、被害拡大している気がするような?

 事件に巻き込まれているが、その事件に巻き込まれている理由の2割は深入りが原因だ。残りの8割はそこに居たからが理由である。あれ? もしかして深入りってそんなに悪くない?


 ま、不可抗力と理不尽性を除けば、深入りさえしなければ事件に巻き込まれる回数はグッと減る。その僅かな減りがきっと重要なんだと思う。


 ならば、そうした方が良い。


 私は別に警察でもなければ交番員でもない。依頼を受けて活動する者でもない。

 巻き込まれる必要性は一切無い。

 暮らしていくのに、態々巻き込まれる必要性なんてない。



 道を歩く。

 何となく、急いで帰らないといけない気がする。

 というか、今のご時世、速く帰らないと何が起こるか分からない。

 議会がほぼ鎖国状態を解いた今、外来の冒涜者たちが一体何をするか……。


 事件に巻き込まれないで済むならば済むに越したことはない。

 これは私だけの意見ではなく、きっと、日和国という場所に住んで居る住民達の大半は思っている事だろう。


 出来る事ならば、平穏無事に過ごしたいと。

 外野で生涯ワイワイしてたいと。


 敵は犯罪で生計を立てている裏民だけではない。

 日本がかつて欲しがり、結局放棄した大量の『特異性』。

 そして、何時からかは忘れたし知らないが、『天下神格』や『天上神格』が降臨して大惨事が起きたりもする。


 正直な話、平穏に暮らせる日と何かに巻き込まれる日。

 どちらが一年の内に多いかと問われれば後者の日和国。


 そんな日和国では、真に残念ながら嫌な予感、当たる時はめっちゃ当たる。



 ドカンと一発、大爆発。

 私と同じように歩いていた者達の足は止まり、音のする方へ視線は向かう。静まり返った空気の中の視線は、確かにその音がした方へ向かう。

 建物が燃えている。それも1つではない。複数だ。

 こんなにすぐ燃えていて、しかも複数となると、かなりの火薬か何かを使ったらしい。

 逃げなくていいのかって思いはするけれど、どうせ逃げたってという気持ちもある。


 うん、だってほら、銃口が突き付けられた。

 背中に当てるなよ、冷たいだろ?



「座れ!」



 うるっせぇな此奴……。


 背中に銃口をあててきた此奴は手慣れた様子で手を縄か何かで縛る。


 あ、痛い!

 手、手、縛るのなら優しくして!


 内心そう思いながらも縛られる。

 私が縛られている間もどうやら周辺の奴らは縛られていたご様子で。

 私を縛り終えた後、あの銃口あて野郎は別の奴を縛りに行っている。


 逃げてぇ。


 そう思っても、まぁ、逃げるのは不可能じゃあないが、面倒な事にはなるだろうなぁ。

 思考を回している中、遂に犯罪者集団は嫌な声を上げた。



「ここら一帯は我々が占拠しました。此方の指示に従ってください」



 は? 巻き込まれたくないんだが?

 やっぱり、こうなったか。


 主観的な自分と客観的な自分の、2つの思いが交差するも、現実は変わらない。

 犯罪集団の人質になったという事実、受け入れなくてはならない。

 ああ、マジで、本当に、ふざけるなよ。

 僅かなイラつきの中に、人質だと、ちょっとだけ気分が高騰していた。

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