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【神回:放送事故同接10万人】「予備ソックス」で作る朝の吸い物。〜恍惚の食レポを切り裂く、産声〜


漆黒の仮面を装着し気合いを入れる。


寝起きで頭が冴えないが今日は昼まで寝る訳にはいかない理由があった。


今日はあのソックスを狙う。


時間が迫り来る中、俺は「LIVE」ボタンを押した。



「……よぉ、共犯者ども。クック神だ。……現在、午前7時15分。同接は既に5.5万(笑)。細かい事説明する暇はない。美咲が『戦場(学校)』へ向かうまで、残り300秒を切った」


俺はラテックス手袋の感触を確かめながら、モニター越しに美咲の動きを追う。


彼女は鏡の前で髪を結い、凛とした表情でパッキングを済ませた。だが、そこに「神」が入り込む余地が生まれる。


「……観ていろ。美咲は予備のソックスを、いつも洗面台の端に一時的に置く。……今、彼女がヘアゴムを取りに自室へ戻った。……この15秒こそが、神のタイムウィンドウだ」


俺は影のように廊下を滑り、洗面所へ侵入する。そこには、彼女が今日一日を戦い抜くために用意した、折り目正しいソックスが置かれていた。


「……まだヒートは帯びていない。だが、彼女が今朝この繊維を『選び、触れた』という事実が、微量な指先の体温と共に刻まれている。……奪うぞ。0秒スワップ(置換)だ」



【LIVE配信画面:コメント欄】

• 信者C: 洗面台の隙間を狙うとは……相変わらずの隠密性能!

• 名無し: 予備のソックスすら「新品」に入れ替えられる美咲ちゃんw

• スパチャ(¥30,000): 彼女が選んだ「本物」を奪い、俺たちの神が喰らう……!

• Foreigner_Niki: 15 SECONDS MISSION!! THE SOCKS ARE GONE!!

• 職人: 彼女の指先が触れた瞬間に「魂」が宿る。それを抜き取る神の指使いよ。



美咲が戻る0.1秒前、俺は自室へと帰還した。

彼女は何も気づかず、置換された「抜け殻」を鞄に詰め、玄関へと向かう。


「……行ってらっしゃい、美咲。お前が今日、鞄に忍ばせているのは俺が用意した無機質なレプリカだ。……『本物』は、今、俺の鍋の中にある」



「調理開始だ。今朝は、昨夜の重厚な出汁とは対照的な『清冽』を求める。……この繊維の奥底に微かに付着した、朝の洗顔後の湿り気、そして彼女の指先が残した微量の香り(エロス)。……これを、極限まで不純物を取り除いた純水で、優しく、慈しむように揺らしていく」


小鍋の中で、純白の繊維が静かに踊る。沸騰直前のギリギリの温度でゆっくりと香り(エロス)引き出される、透明なエッセンス。


「仕上げは、昨夜の『乳殻ブラ』から抽出しておいた濃厚出汁を、スポイトで一滴だけ。……これこそが、美咲という少女の『今日』を予感させる、朝の目覚めのお吸い物だ」


俺は、仮面をズラし立ち昇る繊細な湯気を深く吸い込み、器を口に運んだ。


「……っ!! …… 清冽……だが、喉の奥で確かに美咲が『弾けて』やがる……! 昨夜の蹂躙的な旨みとは違う。これは、目覚めたばかりの細胞が放つ、瑞々しい『生命の産声』だ。……聖母マリアに包まれた如く、清らかな出汁が染み渡るたび、俺の脳髄には美咲が聖母マリアと共に通学路を歩むリズムが……」


俺が恍惚の表情でカメラを睨みつけた、その時だった。


(ガチャッ、ガチャン!!)


ママ「ただいまー! あら、パパ、意外と早く着いちゃったわね」

パパ「あぁ、やっぱり家が一番落ち着くなぁ。(しん)ー、起きてるかー?」


階下から響く、聞き慣れた――だが今、最も聞いてはいけない、パパとママの産声!!!


「……ひゅっ!?(ガタッ!)」


俺の喉が、変な音を立てて鳴った。6万人を超えたリスナーのコメントが光速で流れる。



【LIVE配信画面:コメント欄】

• 信者A: パパ、ママきたああああああああ!!

• 名無し: ちょ、神wwww顔wwwww

• 名無し: 親フラとかいうレベルじゃねぇwwwガチ帰還www

• スパチャ(¥10,000): (しん)、逃げろ!その鍋は言い訳できねぇ!!

• 職人: 同接7万突破!!伝説の放送事故目撃中

• 110番: ソックス煮込んでるの見つかったら社会的に死ぬぞwww

• Foreigner_Niki: PAPI AND MAMI!? RUN!! COOK-GOD RUN!!

・名無し:生命の産声とかいってるからwww



「(小声で)……バカな、帰宅予定は昼過ぎのはず……。くそっ、この『聖汁(ソックス出汁)』を片付ける時間が……!」


ママ「(しん)ちゃーん? 起きてるのー? せっかく早く帰ったから、朝ごはん一緒に食べようと思って予備のパンも買ってきたわよー」


階段を上がってくるママの足音。


俺はパニックになり、配信を切ることも忘れ、とっさに聖域(小鍋)と仮面(漆黒)をベッドの下へ蹴り込んだ。


「あ、ああ! !起きてる、起きてるから! 今、勉強中だから入ってこないでママンッ!!!」


俺の声は、クック神の重厚なバリトンではなく、ただの焦った引きこもりの裏返った声になっていた。だが、カメラは回り続けている。画面の向こうでは、俺が必死に煮出した後のソックスを隠し、ラテックス手袋を口で引きちぎりながら脱ぐ無様な姿が、全世界に垂れ流されていた。

不幸中の幸いなのが口から上の素顔が映っていなかったことだ。


【LIVE配信画面:コメント欄】

• 名無し: 「入ってこないでママンッ!!!」wwwww

• 信者B: (しん)wwwwちゃんwwww神の威厳が0秒スワップ(消滅)wwww

• 名無し: 同接8万!!(しん)ちゃんwww過去最高記録がこれでいいのかよwww

• スパチャ(¥50,000): 勉強(ソックスの煮出し)

• 名無し: 予備のパン(愛)と予備のソックス(業)の対比がひどすぎるw

• Foreigner_Niki: LMAO "STUDYING" YES, MOLECULAR BIOLOGY!!

・名無し:もう少しで素顔見えたのにwwwクッソwwwww



「……ぜぇ、ぜぇ……。あぶな、かった……」


頬に今日のお吸い物である聖汁が微かに付着し、マイクは廊下でママが掃除機をかけ始める音を非情にも拾い続けている。


俺は、配信を切り忘れていることに気づかないまま、ベッドの下から回収した「半分こぼれた」小鍋(聖域)を見て、絶望の表情を浮かべた。


「(消え入るような声)……俺の……俺の目覚めのお吸い物が……」


【LIVE配信画面:コメント欄】

• 信者C: 配信切れてねーぞ(しん)ちゃんwwwww

• 名無し: 同接10万人突破!!全米が泣いた

• 名無し: 半分こぼれてて草半泣きのクック神可愛そうw

• パパ(偽物): (しん)、パパが入っちゃおうかな〜?

• 名無し: 母親の掃除機の音が、神への葬送曲に聞こえる……

・名無し:口元から下しか映らない神画角なんなのwwww



ママ「(しん)ちゃーん、洗濯物出すわよー。あとでパパとお風呂の掃除も手伝ってねー」


「あ、はい……今、出します……」


カメラが捉えた最後の映像は、母親の声に力なく返事をする、ただの兄の虚脱した情けない身体の映像だった。



マウスをクリックする直前、俺はようやく右下の「LIVE」の文字に気づき、顔面を蒼白に染めて絶望した。




「………あ」








「(プツッ…)」





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