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硝煙のアルケミストと劣等感の漂白(4)



翌日の昼休み。


俺たちはいつものように、第4班の管轄エリアの最奥、『特殊化学漂白室』の分厚い防爆扉の前に立っていた。


「……なぁ九久。今日こそ中に入ったら爆破されるか、あるいは別の意味で取り返しのつかない事件が起きる気がするんだが……」

影山が、今にも逃げ出しそうな青ざめた顔で扉を指差す。


「隙間から漏れてくる匂い、昨日までのツンとした薬品臭じゃねえぞ。なんかこう……熱っぽくて、ひどく甘ったるい、すげえヤバい匂いがする」

「素晴らしい観察眼だね、影山くん。彼女の中で、不要なプライド(不純物)が完全に気化し、僕に対する純度100%の『依存の化合』が完了した匂いだよ」

俺は躊躇いなく、プシューッという音と共に分厚い鉄扉を開け放った。


実験室の中は、異様なほどの熱気と甘い匂いに満ちていた。


昨日まで散乱していたビーカーの破片や失敗作のヘドロは、すべて綺麗に片付けられている。その部屋の中央にある実験台の上に、黄河陽菜がちょこんと腰掛けていた。


「……遅いよ、九久くん。ずっと、待ってたんだから」


彼女は、焦げ跡だらけの白衣を羽織っていた。

だが、昨日俺にスポーツブラを捧げてしまったため、はだけた白衣の隙間からは、汗ばんだ素肌が直接覗いている。そして彼女の瞳からは、かつての「天才を気取る傲慢さ」も、「姉への憎悪」も完全に消え失せ、ただ俺の胃袋という『絶対的なフラスコ』にすがりつく、甘く濁った狂気だけがドロドロに渦巻いていた。


「こんにちは、陽菜。今日は実験の調合はお休みですか?」

「……うん。もう、どうでもよくなっちゃった」

陽菜はふらふらと立ち上がり、俺の胸元へすり寄ってきた。


「姉さんを超えるとか、天才の証明とか……そんなの、全部ゴミだった。私の本当の『完璧な化学式』は、九久くんの胃袋の中でしか完成しないんだって、気づいたの」


彼女は熱っぽい吐息を漏らしながら、俺のシャツ越しに胃袋の輪郭を指先でなぞる。


「でもね、九久くん。昨日気付いたの。スポーツブラの汗だけじゃ、私の本当の『底の底』にある劣等感と……九久くんの胃袋と一つになりたいっていう、この熱いドロドロした気持ち(体液)を、全部は抽出できていないって」

「……なるほど。では、まだ『真の完成形』ではないと?」

「うん。だから……今日こそ、私の最高傑作いちばんきたないところを、受け取って?」


陽菜は恍惚とした笑みを浮かべると、白衣の裾をバサリと翻し、彼女が下半身に履いていたズボンのベルトに手をかけた。

「……ッ!? お、おい黄河!? お前、まさかその下は……ッ!」

影山がパニックを起こして顔を覆う。


陽菜は影山の存在など完全に無視し、汗で肌にべったりと張り付いた分厚い作業ズボンと、その下にある黒い『ショーツ』ごと、ズルリ……と一気に両足から引き摺り下ろした。


モワァッ……!!


その瞬間、化学繊維のズボンという密閉空間で極限まで蒸れきった、むせ返るような強烈な熱気が立ち昇る。

徹夜の作業でかいた劣等感の冷や汗、薬品の残り香、そして何より――彼女の最も深い部分から溢れ出した、俺への狂おしいほどの依存と情念が混ざり合った、生々しい『牝の体液』の甘く饐えた匂い。


「私の……新しい実験室フラスコ。……これが今日の、一番純度の高い私。姉さんへの劣等感も、あなたへの発情も、全部ドロドロに混ざった『劇薬』よ……。さあ、全部飲んで……?」


陽菜は、汗と体液でズッシリと重みを増したズボンと下着の塊を、まるでノーベル賞のメダルを捧げるかのような誇らしげな、そして狂気に満ちた視線と共に、俺の胸へと押し付けた。


「……素晴らしい。もはや姉の影など微塵もない、あなただけの極上の『劇薬』だ。喜んで、最後の一滴まで僕の血肉に変えてあげますよ」


俺は恭しく一礼し、彼女の重すぎる情念が染み込んだ布の塊を、大切に籠の中へと収めた。


【夜 23:00 禁断のランドリールーム】


「……回線オンだ。同接35万突破。おい九久、お前マジで四葉の時に続いて、また下着とズボンの直穿きセットかよ。しかも特殊ズボンって、どうやって調理するんだよ……」


影山が、胃薬を水で流し込みながらタブレットの画面を眺めている。

俺は漆黒の黒仮面を装着し、カメラの前で高らかに宣言した。


「親愛なる共犯者たち! 今夜の素材は、天才の姉へのコンプレックスを捨て去り、僕の胃袋という絶対的なフラスコに『自らの体液』すらも捧げたアルケミストの……『劣等感と発情が極限まで蒸れきった耐酸性ズボン&下着』だ!」


俺はカメラの前に、理科室から持ち出した分厚い金属製の『高圧蒸気滅菌器オートクレーブ』をドンッと置いた。


「今夜の抽出法は『超高圧・溶解煮込み(スーパー・クリティカル・スチュウ)』だ! 耐酸性の強靭な化学繊維と、綿繊維の奥深くにまでべっとりと染み込んだ、彼女の生々しい体液と重すぎる依存……それを、超高圧と高温で繊維ごとドロドロの流動食になるまで溶解させる!」


俺はオートクレーブの中に少量の水と、陽菜のズボンと下着の塊を押し込み、厳重にロックをかけてスイッチを入れた。


ゴゴゴゴゴ……ッ!!


凄まじい圧力と熱が金属の釜の中で荒れ狂う。


ランドリールームの空気が、プールの消毒液のような塩素臭から、強烈な酸っぱい汗の匂いへ、そして最後には、粘膜を直接撫でるような『牝の体液の匂い』が混ざり合った、暴力的で甘ったるい蒸気となって部屋を支配していく。


「……うおぇッ……! 匂いの密度がヤバい!! 化学工場と、すげえ生臭い匂いが混ざってて……目がチカチカするぞ!!」


影山が涙目で換気扇のスイッチを連打する中、俺はオートクレーブの減圧バルブを開き、ドロドロに溶けかけたズボンと下着から染み出した、禍々しいほどに濃厚で黒光りする『究極の化学スープ』を、深皿にたっぷりと注ぎ込んだ。


「さぁ……まずは、この上澄み(スープ)から喰らおう」


俺は深皿を両手で持ち上げ、その極限まで煮詰まった薬品と体液のスープを、一気に胃袋へと流し込んだ。


「ゴクッ……ズズズッ、ジュルルルッ、ゴクン……!!」


【コメント欄】

抽出ジャンキー: 飲んだあああああ!! 化学体液スープ!!

靴下煮出し中: オートクレーブで服を溶かして飲むとか狂気すぎるww

ママンバレ生存者: 音がヤバい! 粘度高すぎてズルズル言ってるぞ!!

出汁の探求者: 色がガチのヘドロだ……!!

全裸待機: 激重愛情エキス……限界突破してる!!

化学式ドロドロ: クック神の胃袋が完全にビーカー化してるww


「……ッ!! あぁ……ッ、ハァッ、ふふっ、あはははははッ!!」


口の中を満たした瞬間、昨日の蒸留水とは比較にならない『圧倒的な質量』が脳髄をぶん殴った。

耐酸性繊維から溶け出した薬品の刺激。密閉空間で熟成された焦燥の汗の酸味。しかし、それらをすべて中和し、凌駕するように……ひどく甘ったるく、粘り気のある『濃密な体液の塩気』が、舌に、喉に、胃壁に、べっとりとへばりついて離れない。


「……素晴らしい!! なんという致死量の劇薬だ! 『姉に勝てない』というトラウマの防壁が完全に決壊し、その反動ですべての愛情と狂気を僕の胃袋へ向けてきた、圧倒的な依存の味!! クロッチから溶け出した彼女の最も深いエキスが、僕の脳細胞を直接書き換える甘い触媒となって暴れ回っている……ッ!」


俺は深皿を叩きつけるように置くと、まだ凄まじい熱気を放っているオートクレーブの釜の中に素手を突っ込み、熱と圧力で半固形状のドロドロの塊と化した『耐酸性ズボン』と『黒の下着』の残骸を鷲掴みにした。


「さぁ……すべてを喰らおう!!」


俺は、熱を持った化学繊維と綿の塊に、獣のように直接噛み付いた。


「ブチッ……ギチギチッ、ムチャッ、ジュバァッ……!!」


【コメント欄】

抽出ジャンキー: 布ごと喰ったあああ!! 下着噛みちぎってる!!

靴下煮出し中: 溶けかけたズボン食うとか胃酸どうなってんだよww

ママンバレ生存者: 化学繊維引きちぎる音ヤバすぎ!!

出汁の探求者: 神の顎の力がバケモノすぎる……ゴクリ。

全裸待機: 彼女の純度100%の情念ごと咀嚼してる!!

聖母の泥信者: クック神、完全にイってる顔だ……(拝み)


「……ッ!! ぅあぁ……ッ、熱い、ゴムの味がする、だが美味い……ッ!!」


口の中で弾けるのは、極限まで煮詰まった薬品と体液の爆発的な旨味。バキバキと引きちぎれる分厚い耐酸性ゴムの強烈な弾力は、彼女が長年築き上げてきた『見栄と虚勢の壁』そのものだ。


しかし、そのゴム繊維を奥歯で強引にすり潰し、その奥に絡みついた黒い下着を噛みちぎった瞬間――綿繊維にべっとりと染み込んでいた、生々しくて狂おしいほどの『牝の情念(体液)』が、極上のソースとなって口内へジュワッと溢れ出した。


「……なんという重さだ! 姉という呪縛を完全に捨て去り、僕という絶対的フラスコに自らの最も汚れた部分を捧げる……この卑屈なまでの献身! たまらない、たまらないよ陽菜……ッ!!」


俺は顎の筋肉を酷使しながら、薬品と汗と体液がドロドロに染み込んだ分厚い布の塊を、くちゃくちゃといやらしい音を立てて咀嚼し、強引に喉の奥へと飲み込んでいった。


「ゴキュッ……ズズゥッ……!!」

最後の一切れの布を胃袋に流し込んだ後、俺は両手で自らの腹のあたりを愛おしそうに撫でた。


胃壁の裏側で、黄河陽菜という少女のドロドロに溶けたコンプレックスと体液が、化学反応を起こしながら熱く脈打っているのを感じる。


「陽菜……君の劣等感は、僕の胃壁で完璧な結合を果たした。君の狂気も、体液も、孤独も……すべては僕の血肉と完全に同化し、この永遠のビーカーの中で、誰とも比較されることなく満たされ続ける……ッ!」


俺は目を閉じ、至高の満足感に身を委ねて深く、深く息を吐き出した。


俺の舌も、胃袋も、完全に彼女の『(かす)』で満たされていた。


「……ふぅ。極上のディナーだった」


俺はゆっくりと目を開き、カメラの向こうの共犯者たち、そして部屋の隅でドン引きしている影山に向けて、優雅に微笑みかけた。


「親愛なる共犯者たち、今夜の晩餐はここまでだ。最高の余韻を、僕の胃袋の中だけで静かに発酵させたいからね。……影山くん。配信を切ってくれたまえ」

「……お、おう……。お前、マジでそのうち腹の中から爆発しそうだな……」

影山が青ざめた顔のまま、タブレットの終了ボタンをタップする。


画面が唐突に暗転し、配信は終了した。


真っ暗になったランドリールームの中。


俺は胃袋の中で重く熱く渦巻く、黄河陽菜という少女の『激重の愛と体液』の余韻をくちゃくちゃと噛み締めながら、至福の吐息を漏らした。


一条蓮。

四葉結衣。

黄河陽菜。

アインズ更生学園・第4班(洗濯班)の四天王、残り一名。


『検品・無菌ルーム』の紫之宮凛。


完全なる無菌を求め、すべてを真空パックしようとする極度の潔癖症。


彼女のその『一切の汚れを許さない冷や汗』は、どれほどの極上のスパイスとして僕の舌を楽しませてくれるのだろうか。俺はまだ見ぬ極上の『生命の滓』に想いを馳せ、暗闇の中で静かに、狂気の笑みを深めていた。



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