後日談:豪華絢爛なエラの結婚式7
これにて、めでたし、めでたし。
前に急に呼ばれ、内心ガクブルで前に出ております。
会場の皆様の視線が一気に来て、緊張から、頭が真っ白になりそうです。
チラリと見れば、緊張しているのは、私と弟達だけで、家族は平然としているように見えます。流石、両親と姉・・・。いや、姉は気が強いから当たり前ですね(笑)
さて、何で前に呼ばれたんでしょうね・・・?
まさか、エラの事で何か言われる? 二度と近付くな・・・は、無いですね。殿下とは仲が良いですし。
本当に、何で呼ばれたんでしょう??
いつの間にか、私の前には、ウルウルと泣きそうなエラの姿です。うん? どういう事でしょう??
私は意味が分からず、ハテナを盛大に飛ばしていますが、ここに来てようやく事態が飲み込めました。そりゃあ、両親はウルウルでしょう。姉弟は私より早く、状況を理解したらしく、恥ずかしそうです。
順番に一言二言を話し、最後に私の前へ来ました。何だか一周回って、恥ずかしいより、嬉しくなってきました。
「エマお姉さま・・・お姉さまのお陰で、私は無事に今日、結婚式を上げられます・・・ありがとう、お姉さま」
あ、これはダメなやつだと気が付いた時には、私の瞳から暖かい物が溢れ落ちていました。止めようにも止まらない、次から次へと溢れる涙は、私の視界を歪ませたまま・・・。
きっとこれが、感極まるというものなんでしょう。幼い頃、父を亡くし、号泣したのとはまた違う、心が満たされるような涙は、いつの間にか渡されたハンカチーフに染み込んでいきます。
「お姉さまが、私のお姉さまで良かった・・・」
あぁ、エラ・・・。
心からのエラの言葉で、私の中では走馬灯のように一気に今日までの思い出が、溢れてきます。
初めて会った時、可愛い妹が出来て嬉しくて、お揃いのドレスや小物も嬉しくて、本の趣味も近くて、カレンとは出来ない事が出来て、沢山たくさん、思い出があって・・・。心配もさせちゃったけど、やっぱり、大切な私の妹なんです。
「・・・幸せになってね、エラ」
涙でぐちゃぐちゃのまま、それでも、笑顔を見せたのは、私の姉としての意地です。
「~~~はい、お姉さま!」
エラにも、光る物がありましたが、私の涙が止まりません。こんなに泣いたのは、いつ以来かしら?
気付けば、会場内でも、すすり泣く音があちこちから聞こえ、会場は素晴らしい感動の渦に包まれます。日頃、腹黒い方々も、流石に王家の結婚披露宴では、穏やかに過ごしているようですね。
・・・あら嫌だ、私が心配する事じゃありませんね。
さて、披露宴は粛々と進み、感動を残したまま、無事に閉幕致しました。歴代でも記憶に残る、素晴らしい披露宴だったと、後々まで言い伝えられる事になりました。
流石、我が家自慢のエラ! 内心、私達は鼻高々ですとも。
実はこの披露宴は、貴族の方々も次々に真似をし、爆発的なヒットを催し、我が国の結婚式の定番になるのですが、まぁ、それはまたの機会に。
そして、大変恥ずかしい事が、私達家族に待ち構えていたのです・・・。
◇◇◇◇◇
エラの結婚式が終わり、城へ入ったエラは、毎日が充実しているようで、時々ある手紙にはノロケが入るようになり、ちょっと寂しい日常が当たり前になった頃。
「・・・・・絵本、ですか?」
夕食終わりで、旦那様たるクリストファー様に言われたのです。
「あぁ、君たちの事を絵本にしたいらしい」
「まぁ・・・」
確かに私達の生涯は、絵本になるストーリーなんでしょうが、果たして、売れるんでしょうか?
半信半疑の私に対し、夫であるクリストファー様は、全くぶれない笑顔で、言い切った。
「売れるね、これは」
何でも、私達姉妹は、貴族だけでなく、一般市民の皆様にも、有名なんですって。いつの間に有名になったんでしょうか!?
「それはそうだよ、君達姉妹は誰もが美人で、格上の家に嫁いでいるし、下の弟たちも例に漏れず優秀、更には実家は、堅実にして着実な領地経営をしているし、人柄もいい・・・・・何処にも、問題が無いんだよね」
まぁ、確かに? 言われてみたら、そうですね。義理の家族とも、仲は良好。実家は男爵家ですが、叔父はしっかりしてますし、人柄も良好。母の実家も、問題なし。ひいて上げるなら、お姉さまを溺愛してるくらいかしら?
でも、絵本にして、売れますかしら・・・?
「義理の家族というのは、問題は起きる事が多い、特に子供を連れての再婚はね」
それは、貴族だけでなく、一般でも、問題となっていますね。運良く、我が家は上手くいきましたが、泥沼の展開により、悲惨な世界になる場合もあります。
因みに、我が国の法律では、直系筋の男女に爵位の継承が認められます。なので、お家の乗っ取りは、基本的に無理なのです。やろうにも、継承する際に、国から監査が入りますから、無理ですし。バレたら、爵位は直系筋の一番近い問題ない方に流れるか、御取り潰しになるだけです。
なお、無能と判断された場合も、国から監査が入ります。貴族の世界も、中々に厳しいのです。
「だから、少しでも悲惨な話が無くなるように、君達の話を絵本にして欲しいという、話が上がっているわけです」
あら、思ったよりも深刻でした。おバカさん(意訳)がたまに沸くからでしょうか? お家の乗っ取りに関する事は、法律の授業でやりますからね、必ず。・・・・・あの時の先生方の、怖い例え話により、忘れられない授業となりました。無駄に迫力があったのと、例え話がリアルな昔の方々の失敗話ですからね。嫌でも、覚えていました・・・。
そういえば、あの時の試験、追試を受ける方は出なかったのですよね・・・。皆さんの中に、強烈な形で残ったのかもしれません。
「お話は分かりましたわ、でも、どうせなら子供が学ぶ形にすべきですわ」
「確かにそうだな、うん、とりあえず、君の意見を伝えてみるよ」
クリストファー様の言葉の端に感じるのは、既に決定事項なのだということ。出来ましたら、名前やら設定やらは、変えて下さる事を願います。
とはいえ、これで不幸な家族が少しでも減る事を願わずにはいられません。
その後、子供の話やら家の相談やらをして、眠りについたのでした。
が、それからしばらくして、夫の満面の笑みで告げられた言葉に、私は年甲斐もなく、いえ、淑女である事すら忘れて、家中に響き渡る絶叫を上げてしまう事になりました。
「この話、国のバックが付いて、ベストセラーになったよ♪︎ いやぁ、頑張ったかいがあった!」
題名は、「ハッピーエンドへ向けて」とされ、一見するに私達とは分からないように出来ていましたが、でも、何でベストセラー・・・。あまりの事に、気絶した私は悪くないでしょう。夫の慌てた声を聴きながら、ふと考えます。
我が家は確かにハッピーエンドになったんですから、誰かが、あやかりたいと思うのは、仕方ないのかもしれませんね、と。
これからもこうした、てんやわんやは起きるのでしょう。でも、私達はその都度、乗り越えていくのです。家族の笑顔を大切にしながら・・・。
こうして私達のお話は、めでたしめでたしで終わりを告げたのです。
~完~
長らくお付き合いくださいまして、ありがとうございました。
他の作品でも、お会い出来ますように。




