20-2.ケサランパサランが①
お待たせ致しましたー
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どう言うわけなのか、さっぱりだ。
朝一番には何もなかったのに、今晁斗の目の前には。大量ですまない量のケサランパサランが、事務所を覆い尽くしているのだ。
何があったか、今の晁斗には見当がつかない。
とりあえず、すぐに妖博士を自称する燈を呼びに行った。
「…………本当に、すっごい量のケサランパサランだね?」
呼びに行っている間に、また増えたのか。雪が降ったかのように室内を漂っているものも、寄り集まっているものもまばら。
だが、掃除が面倒臭くなるくらいの量には変わりない。これをどう処置してしまえばいいのやら。
「……うん。これはあれだ」
燈が指を鳴らすと、晁斗にちょっと借りるからと意味のわからない台詞を告げてから一旦事務所から出て行き。
次に来た時には、漣を連れてきたのだった。
「う、わ!? これ本当に!!」
漣もこの惨状を知らなかったからか、キョロキョロしていた。彼女も知らないとなれば、この状態は万屋の面子で朝礼をした後誰も知らなかったということ。
だが、何故この状態の解決に漣を連れてきたのだろうか。
「なんで連れてきたんだ、兄貴?」
「うん。漣ちゃんの癒し手の能力が活かせるかと思って」
「癒し手を?」
「歌う……だけでいいんですか?」
「そうだね? 僕の推測が正しければ、それだけで落ち着くかもしれない」
「?」
「わ、わかりました!」
漣はケサランパサランに触れるくらい、部屋の真ん中に立って大きく息を吸い始めた。
優しいそよ風
内に秘めた優しいそよ風
届け届け、その風の調べ
優しい、笑顔
可愛い笑顔
届け届け、風と共に
そよ風が吹き、ケサランパサランの動きが少し活発的になった。
漣の周りにも溜まり、降り注ぐ形にもなったので慌てて払おうとした晁斗の手を燈に掴まれた。それと小声で、静かにとも。
沙羅さ、沙羅さ
芽吹きの風よ、吹いてゆけ
包み込め、優しく風のように
綿毛が降りる、その先に
そして、ケサランパサランは瞬時に漣の風に煽られ。
彼女の周りに、まるで羽根が降り注ぐように分散されて行った。
すると、漣の髪に触れるかと思ったのが。彼女の髪や肌に触れた途端に、漣が願いを叶えさせた時のようにパチンと音を立てて消えて行った。
それが、数珠つなぎのように連鎖して行き。しまいには、一匹を残すだけになってしまったのだった。
「……兄貴、これは?」
終わってから聞けば、燈はうんうんと頷いていた。
「癒し手の能力は傷を癒す効果、などが絶大だと言われているからね? もしかしたら、ケサランパサランの中に貯まった邪気なんかを祓えるかなと」
「邪気?」
「さっきまでの……邪気が原因だったんですか?」
「憶測だけどね?」
すると、一匹だけ残っていたケサランパサランが三人の頭上に飛んできた。
『……此度は助かった』
ケサランパサランが言葉を使った。と言うか、話せるなら話して欲しかったが、キョロッと目を開けば晁斗の方を見てきた。
『……言の葉を交わせられるのは、一番妖力が溜まった個体のみ。つまりは、我よ』
「……心が読めるのか?」
『いや、そちは顔に出やすい』
「たしかに!」
「兄貴……」
否定して欲しかったが、漣とのこともバイト達にからかわれたので頷けない。
そして、ケサランパサランは漣の方に体を寄せた。
『癒し手か? 助かったぞ。ここは、我だけだが。この地に降りた同胞らが……何者かの手により邪気を纏う羽目になった』
「え?」
「まさか……」
裏、か。
あの黒ずくめの二人か。
どちらにしても、あまりいい話ではない。警視庁の方も心配になって、燈が篤嗣に連絡をしたら。
あちらでも同じようになっていたそうだ。
「ぼ、僕、行った方がいいですか!?」
「そうだね。ここは大丈夫だけど……陸螺市内で他に発生しているケサランパサランまではどうすれば」
【……我が繋ぎをしよう】
と、漣の中から顕現してきた次代が、狗神の姿でソファの上に立った。
「どうするんですか?」
燈が聞けば、次代はこくりと頷いた。
【我は今、漣の守護だ。霊力で繋がっている状態。その我を媒介に、漣の能力を発揮すれば。ある程度の土地を癒すことは可能だ】
ただし、直接的な守護の任を外れるために、市内を高速でぐるっと走ることになるだろう。その間は、万屋の面々に彼女の守護を頼むと告げてきた。
それくらいなら、お安い御用だと晁斗らも引き受けて。
一度、事情を説明するのに晁斗は喫茶側に向かい、克己達に次代や燈の話を告げた。
「それで事態が終息するのであれば、ここは任せなさい。漣ちゃん達の補助をよろしく頼むよ?」
なので、篤嗣の方にも通話で伝えれば。警視庁からの依頼にすればいいと言い出してくれたので、久しぶりに大物案件となったわけである。
次回は木曜日〜




