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ウィンタージュに憩いの羽音を  作者: 櫛田こころ
バレンタインデートまで
87/164

20-1.報告と予感

お待たせ致しましたー







 *・*・*








 (れん)と付き合うことになった。


 これは、晁斗(あさと)にとっても。ウィンタージュ全体にとっても喜ばしいことだったが。


 漣もだが、晁斗もお互いの気持ちについては隠していたつもりだったのに、幹部の皆にもだがバイトやパートにまでバレバレだったと言う事実。


 二人揃って、お互いを気にし過ぎていたからバレバレであったと。実に、実に恥ずかしいことだった。


 万屋の方もだが、喫茶側に伝えると口々に言われたのだ。



「マネージャーが漣ちゃんを気にしてたのだって」

「初日からずっとでしたよねー?」

「漣ちゃんはマネージャーに懐いていましたし、私達にも聞いてくれますけど。わからないことがあったらマネージャー探しているくらいでしたし?」

「ねー?」

「なー?」



 とまで言われる始末。


 隣に立っていた漣は顔どころか首まで真っ赤にする状態に。これはしばらく、スタッフ達に気を遣うかもしれないなと頭を軽く撫でてやった。



「とにかく報告したまでだ。悪ノリであんま広めんじゃねーぞ?」

「あ、でも」

「なんだ?」



 菜幸(なゆき)が手を上げたので、晁斗は発言を許可した。



「先輩のファンとかに、漣ちゃんが睨まれるかどうかが怪しいとこっす」

「……俺のファン?」

「んもぉ! ダントツで人気なのは悠耶(ゆうや)先輩っすけど、晁斗先輩にもファン多いんすよ!? まあ、若い子よりマダムが多いっすけど」

「お、おう?」

「……晁斗さんの、ふぁん?」



 少し低い、漣の声が。静かにバックヤードに響き渡った。


 晁斗もだが、菜幸も他のスタッフも驚くだけでなく怯えた雰囲気を見せた。


 漣の、彼女の。(いきどお)るような怒りを垣間見えたので、本当に驚いた。


 次代の事件の時とは違う、嫉妬に塗れた怒りだ。



「あ、あの……漣ちゃん?」

「嫌です。晁斗さんは僕の彼氏です!」

「うぉ!?」



 小柄で背も平均女子程度しかないが、腰のあたりに抱きつかれた。制服越しではあるが、柔らかい年相応の胸の感触に、晁斗はさらに驚いた。



「あ〜〜……漣ちゃん? 晁斗のことは誰も取らないよ?」



 しばらく傍観していた悠耶が、咲乃を伴ってこちらへとやってきた。



「……けど、ふぁんって。晁斗さんのことが好きってことですよね?」

「間違っているようで正解だけど。どこでそんな情報を?」

「? 次代と一緒に見たドラマで」

「あーさーとー?」

「俺じゃねぇ!? ばあちゃんだろ!?」



 晁斗は悪くない、無関係だ。と、強く否定してもテレビで得られる情報もすべて間違いではないからと。熊谷(くまがい)家ではテレビを食後につけるようにしているのだ。


 晁斗の部屋にもなくはないが、まだ付き合う前から祖母の暁美(あけみ)と一緒に観ているのでジャンルは多種多様。ドラマなどもよく観たりしているのだ。


 刑事物、ミステリー、時代劇に恋愛系などなど。


 演技とは言え、模倣も多いからと漣は社会勉強も兼ねてよく観ているのだ。あと、次代も。



「けど、昨日は熱烈だったわよね〜?」

「え、マネージャーがですか!?」

「咲乃サブリーダー! 教えてください!」

「やめろ!?」



 漣と抱き合う以上に、二人揃ってファーストキスをしたのだ。


 その事実はスタッフに伝えれば、しばらくからかわれる対象でしかない。


 漣を引きずりながらも、軽く咲乃を小突くだけで終わったが。



「んもぉ。バレンタインにちょっとだけパーティーしようと考えてたのにぃ」

「パーティー?」



 一度解散して持ち場に戻る前に、咲乃がそんなことを告げてきた。



「そうよ!! ウィンタージュの幹部の皆や一部知り合いを集めて……ちょっとしたバレンタインパーティーを開こうと思ってたの! 晁君ダメ?」

「……初デート考えてたんだが」

「あら。じゃ、ダメね? 漣ちゃんを素敵にエスコートしなくちゃ」

「ああ」



 とは言え、漣もだが晁斗もデート経験が一切ない。


 どう言うものになるかはわからないが、明後日なので念入りにした準備するだけだ。



「あ、晁斗先輩! ちょっといいっすか?」



 晁斗も持ち場に戻ろうとした時に、菜幸から声をかけられた。



「どした?」

「えっと……柘植(つげ)奈央美(なおみ)ちゃんって覚えてますか?」

「ああ。甲本(こうもと)の件で依頼人だった女性か?」

「うっす。友達になったんすけど、最近変に調子崩して会社にも行けてないらしいんすよ。自分、ちょっと早上がりしてお見舞いに行きたいんす」

「……そうか。なんかおかしいと思ったのか?」

「うっす。自分の勘が騒ぐんす」

「わかった。行ってこい」



 菜幸は術などは得意ではないが、西洋魔術の心得と霊力の関係か異常に勘が冴えているのだ。だから、晁斗達はその勘を馬鹿にすることはなく、むしろ信頼している。


 そこで、ひとつ晁斗は思い出したことが出来たので、事務所の方に一度足を運んだ。


 のだが。



「……なんだこれ」



 昨日はなんともなかった事務所の中が。


 白い綿ぼこり、ケサランパサランで埋め尽くされていたのだった。

次回は月曜日〜

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