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ウィンタージュに憩いの羽音を  作者: 櫛田こころ
バレンタイン練習
72/164

17-2.再確認と無自覚

お待たせ致しましたー







 *・*・*








 笑われてもいい。


 人生で初めての恋だ。晁斗(あさと)(れん)咲乃(さくの)らがいないウィンタージュでいつものように接客しながら、漣を拾った時を振り返っていた。


 邪気ではないが、何か霊的な能力が開示されてたように感じたので、見つけた少年に見紛うくらいの中性的な少女。


 服装と言葉遣いで、最初は完全に男だと勘違いしてしまっだが、実際は細身のあどけない少女だった。


 それがまさか、ひとつ屋根の下で生活するとは思わなかったが。努力家で勤勉、態度も素直でいたし、咲乃や悠耶(ゆうや)とは違って兄弟のいない晁斗には初めての兄弟が出来た気分ではいた。


 けれど、重度の記憶喪失者であり、社会勉強不足だった彼女の行動のひとつひとつが気になり、出会って間もないが兄弟とは違うようだったとは思う。


 それを、昨日篤嗣(あつし)に指摘されたことで、ようやく自覚出来た自分の恋心。悠耶と咲乃で見慣れてはいたのに、自分にはなかったから正直言って驚いている。


 非常に、驚いている。



「晁斗が漣に惚れてる? 守護精の俺がいち早く気づいたくらいだぞ?」

「……マジかよ」


 とりあえず、宿主だから守護精に伝わっていないわけじゃないが、直接報告すべく休憩中に事務所で空呀(くうが)を顕現させたわけだが。


 人型ではなく、いつもの虎の姿でテーブルにちょこんと座りながらも、しっかりと宿主に言い放った。



「狗神の件でも、めっちゃ揺れてたぞ?」

「……具体的に、いつからだ?」

「んー? まあ、惚れかけたのは漣にアクセあげた時の笑顔だったな?」

「……ほとんど初期かよ」



 鈍すぎるぞ、熊谷(くまがい)晁斗。


 へなへなと花がしおれるように床に座り込んだら、空呀の近くに頭が下りたので奴にぽんぽんと撫でられた。



「学生時代は全部告白蹴ってたお前がだぜ? 漣のことはまだまだわかんねーこと多いけど。いいんじゃん? あいつ可愛いし、素直だし」

「そうは言うけど……俺と並んだら、兄弟とかに間違われね?」

「今更だろ? (あかり)ほどじゃなくても、大抵の人間の女と並んだらお前の方が兄貴に間違われるじゃん?」

「あー……」



 学生時代、しかも中学の成長期の時。たまに咲乃とかと下校した時とかに、寄り道をしたら大人にはよく篤嗣じゃないのに兄と間違われたりしていた。


 その苦い記憶があるためか、単に恋愛感情を育む必要がなかったせいか。晁斗は女子生徒とかの告白をことごとく蹴って独りでいた。


 それが今はどうだ。


 その苦い記憶があるにも関わらず、漣とは一緒に過ごして気が休まると思うくらいだ。これを惚れてないと言うならなんと言う。



「漣、今頃何してんだろーなぁ?」

「……悠耶は、咲乃や菜幸(なゆき)とかとバレンタインチョコの練習してるだろうって」

「んじゃ、漣は晁斗とかにくれんじゃねーの?」

「絶対、世話になっているからだろ!?」



 あと、単純に頼りになるお兄さんとしか思われていない。


 菜幸らに、自分が好印象をもられる男性の部類だとは自覚させられても。これまでの経験値がすぐに、自分に好意を持たれているとは思えないのだ。


 単純に、拾った恩人と言うことで、世話チョコを渡されるだろうとしか晁斗は思っていない。


 だが、空呀には大きくため息を吐かれた。



「晁斗、漣が下手したら咲乃の人気を抜くくらい……可愛いウェイトレスだと思われてるの知ってっか?」

「……マネージャーだから、知ってる」

「んじゃ、どこぞの客にデートとか誘われて、あいつが行くってなったらどうする?」

「止める! あ」

「だろ? にわかな気持ちじゃねーんなら。お前も逆チョコ贈れよ。篤嗣にも昨日言われてたじゃねーか」

「逆チョコ……か」



 本場の海外では薔薇の花束を贈るとか色々あるらしいが。花束だなんて、絶対周囲にからかわれるから、やはりチョコのような消えものがいいだろう。


 とは言え、自宅で作ってたら絶対彼女にバレる。一緒に住んでいるから。なら、と晁斗は空呀を宿してから、下の休憩室にいた従兄弟に頼み込むことにした。



「え、僕の家で?」

「頼む、悠耶! お前も毎年咲乃になんか作ってんだろ?」

「まあ、違わないけど。……ふむふむ、恋心を自覚した従兄弟のためだ。協力するよ?」

「サンキュー!」



 とりあえず、これで漣にバレずに逆チョコを作ることができる。


 告白するかまではわからないが、実は少し気まずくなったことへのお詫びとして渡すのでもいい。


 実は、昨日のケサランパサランに願いを叶えてもらった辺りから、少し避けられているのだった。


 そのケサランパサランの世話は、今日は彼女が休日なため代わりに晁斗が担当しているわけである。



「んじゃ、詳しいことはLIMEで話そうぜ?」

「いいよー」



 とりあえず今は休憩中なので、晁斗はケサランパサランに白粉をあげるべくもう一度事務所に向かうのだった。

次回は金曜日〜

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