17-1.バレンタインチョコ作り前に
お待たせ致しましたー
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本日は漣・咲乃・菜幸のウィンタージュ休業日。
少し、予定はずれ込んでしまったが。本日はバレンタインチョコ作り第一弾となったわけである。
場所は、熊谷家ではなく、咲乃の実家である宮境家。晁斗らと住むあの家も十分大きいが、咲乃の実家もかなり大きい。
兄の篤嗣も住んでいるらしいが、今日も仕事で家にはいない。彼女らの両親達も、咲乃に頼まれて出かけているそうだ。
なので、実際今宮境家にいるのは、漣を含める女性三人である。
「さあ、作るっすよぉおおお!」
「おー!」
「は、はい……」
まだバレンタインについてそこそこの知識しかない漣には、どれだけすごいイベントなのか理解は出来ていなかった。
けれど、好意と自覚した自分の気持ちを、晁斗には伝えたい。昨日のケサランパサランに願った後で、少し気まずくはなってしまったが。
「材料はひととおり揃えてみたけど……。漣ちゃんはどんなチョコを晁君に作ってあげたい?」
「え、えっと……」
気まずくはなってしまったが、晁斗を好きなことに変わりない。なら、残りわずか一週間らしいが、バレンタイン当日に仲直りをしようと思う。
とは言え、想いを伝えれる勇気は、まだ漣にはないが。
「私は燈先輩にこれっす!」
「! 菜幸さん、燈さんに?」
「あれ、言ってなかった?」
「菜幸ちゃんは、ウィンタージュに入るきっかけが燈さんだったもんねー?」
「っす! 燈先輩は恩人であり、尊敬する人っすよ!」
「それも、好き……ですか?」
「う」
「漣ちゃん、直球ね? そうね……漣ちゃんよりずっとずっと片思いらしいわ」
「……っす」
けど、他に好かれ過ぎている人もいるけどね、とよくわからないことを言われたが、とりあえず好きにも色々あることがわかった。
それと、時間も限られているので、チョコも選ばなくてはと、レシピ本やら雑誌やらを見せてもらうことにした。
ちなみに、菜幸が選んだのはブラウニーと言う焼き菓子らしい。
「毎年、悠君の好きな生チョコもいいけど。今年は焼き菓子にしようかしら? パウンドケーキかガトーショコラか悩むわね?」
「えっと……ガトーショコラは覚えたんですが、パウンドケーキって?」
「作り方はガトーショコラと似てるけど。丸いケーキじゃなくて、長細いの。菜幸ちゃんはたまに担当してるけど」
「うぃっす!」
「……晁斗さんの、好きなの。って、聞いてもいいですか?」
「いいわよいいわよ? 従姉妹だし、ちっちゃい頃から一緒だもの。だいたいわかるわ」
「お願いします」
まだ芽生えた気持ちは、くすぐったくて、けれど温かい。
だから、大切にしたいと思い始めている。咲乃が晁斗について詳しいのは仕方がないが、妬んでも意味がない。むしろ、応援されているのだからしっかり学びたいと思っているのだ。
「基本的になんでも好きね? 燈さんやおじいちゃんおばあちゃんの料理が美味しすぎるすから、あんまり好き嫌いしないわ」
「けど、晁斗先輩。唯一嫌いな食べ物あるっすよね? 今回は関係ありませんが」
「な、何があるんですか!」
「……グリンピース」
「はい?」
「グリンピースって、わかる?」
菜幸に聞かれると、漣は首を軽く縦に振った。
「は、はい。昨日いただいたハヤシライスにも」
「晁君、あれ使った料理だけが基本的に苦手なのよ。食べられないわけじゃないらしいけど」
「あの豆が?」
柔らかくて食べ応えがある食材のイメージが、晁斗が苦手としているとは思わず。そう言えば、やっかいになってる熊谷家では一度も出たことがない。
だいたいが、晁斗自ら調理場に立つので入れないからかもしれないが。
「だから、漣ちゃんみたいになんでも食べる人とほとんど同じかしら?」
「けど、グリンピースには……気をつけます」
「お菓子にはあんまり使わないよ? だから、気にせず早いとこ選んで選んで!」
「あ、はい!」
菜幸に催促されたので、漣はレシピ本の方を手に取る。バレンタインチョコ作り用のためか、チョコ以外にも種類が多い。だが、あり過ぎて逆に何を選べばいいのか分からなくなってきた。
「んー、漣ちゃん。調理補助はまだだけど、晁君の家でお手伝いとかする?」
「その……まだ、野菜の皮をピーラーで剥くくらいです。包丁は……全然」
「過保護ねぇ? まあ、いっか。ちょっと大変でも、美味しいものを食べてもらいたい気持ちはあるもの。絶対うまくいくわ!」
「咲乃さん?」
「そうっすよ! 自分も燈先輩に今年こそは告白するっす!」
「その粋よ!」
「え、えーっと」
なにか、二人のやる気スイッチを押してしまったのではないかと思ったが。とりあえず、手元のレシピ本を見て気になるものが出来た。
まだ燃え上がっている二人の間に、ゆっくり割り込んでそのページを向けるのだった。
「あら、その選択肢はいいわね? 晁君こういうのはしょっちゅう食べるし。コンビニでもわざわざ買うくらいだもの」
「そうっすね?」
「えと……僕もいただいたことがあって。美味しかったんで、作って……みたいです」
「よしよし! 咲乃先輩、この型ってあるんすか?」
「たしか、お母さんが使ってたのが。なきゃ、パウンド型にしましょ? とりあえず今日は練習だもの」
「はい!」
「うっす!」
何はともあれ、バレンタインチョコ作りの開始だ。
次回は火曜日〜




