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ウィンタージュに憩いの羽音を  作者: 櫛田こころ
ちょっとした日常
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16-6.こちらも自覚

お待たせ致しましたー






 *・*・*








 (れん)からケサランパサランが増えた、と言う知らせを持ち込まれ急いで共有休憩スペースに、晁斗(あさと)悠耶(ゆうや)克己(かつき)も移動した。


 ウンチク大先生の(あかり)は絶賛調理中なので、今回はパスにさせた。


 とりあえず、大きめのテーブルの上に桐箱を乗せ、克己が代表してゆっくりと蓋を開けたのだが。



「……おや。二体に増えたと聞いていたけれど?」

「あ、あれ?」

「うん。増えてるけど」



 二体どころか、五体にまで増えていた。そして、晁斗達が覗いている最中にもまた、一つ二つと言う具合に。


 たった二日、白粉を適量与えただけでこの成長速度。燈ほど詳しくはないが、晁斗も悠耶も異常だと察知は出来た。


 祖父である克己は、少しのんびりとした様子で増え続けているケサランパサランの一体を指で軽く撫でていた。



「克爺、そんなのんきにしてていいの?」

「まあ、安心なさい。増え過ぎるのは異常ではあるけど。この個体に関しては、まだ緩やかな方だよ? 漣ちゃん、ちょっとお願いごとを考えながら、この子を持ってごらん?」

「あ、はい?」



 克己がつまんだ一体を漣が両手で受け止めて、何を叶えようか真剣に悩み出した。


 ささやかな願いが、と言うわけではないだろうから。きっと悩んでしまうのだろう。


 ただ、晁斗と目があった瞬間。彼女の手にいたケサランパサランが破裂するかのように消えてしまった。



「「??」」

「ほう。本当に、ささやかな願いでも消えるんだね?」

「おい、漣。今何考えたんだ?」

「い、いいいい、言えません!」



 ごめんなさい! と言い放ったら、次代の手を引いて休憩ルームから出て行ってしまったのだった。


 何か悪いことでもしたのかと思っていると、悠耶から笑いを押し殺すような音が聞こえてきた。



「悠耶?」

「ぷ! くくく……いや、ちょっとその……おかしくて!」

「何がだよ!」

「ふふ。漣ちゃんもひとりの女性なんだ。気にかけてやりなさい?」

「はあ?」



 まったく意味がわからないでいると、誰かが入ってきた。くたびれたスーツに適当にネクタイを結んでる男、咲乃(さくの)の兄である篤嗣(あつし)の来訪だった。



「篤兄!」

「よ? 漣が顔真っ赤にして知らないイケメン引っ張ってだけど、ありゃ誰だ?」

「篤嗣、あの方が次代狗神様だよ。まだ仮名は決まっていないんだ」

「へー! あれが眷属化した! なるほど……。晁斗から乗り換えたわけじゃねーんだな?」

「……は?」



 来た早々いったい何を、と首を傾げたが。篤嗣は晁斗の反応に、ニマニマと顔を緩めて晁斗の肩をぽんぽんと叩いてきた。



「咲乃とか、悠耶に聞いてんぞ? お前必要以上に漣が気になってんだろ? やーっとお前にも春が来たって、俺は従兄の兄ちゃんとして安心してたんだぜ?」

「……は?」

「篤兄、晁斗は自覚ないよ?」

「え、マジ?」

「俺が……漣、を?」



 あり得ない。と、言い切れない自分。


 先日の狗神事件で、密着することはあったし、何より空呀(くうが)を除けば、実質二人っきりだった。


 少しもやもやした感情も芽生えてはいたのに、すべて気の迷い事だと振り払った。けれど、今はそうじゃない。


 ひとつ屋根の下で生活しているし、仕事もほとんど一緒。まったくではないが、離れていないに等しい。


 だって、見ていて可愛いし、気になって仕様がないから。


 その芽生えていた感情を、ひとはなんと呼ぶか。20代後半に差し掛かる晁斗でもいい加減わかってはいた。


 なので、自覚すると大きく息を吐いて、しゃがみ込んだ。



「晁斗?」

「やっと自覚したのか、お前?」

「やっとの初恋なんだから、仕様がないんじゃないかな?」

「「克爺……」」

「……マジかよ」



 出会って一か月程度。


 はじめは庇護欲をかき立てるだけだった、男に間違えた少女でしかなかったのに。出自もまだまだ謎に包まれているのだが。


 距離が徐々に短くなってきた、ここ数日で。


 晁斗は、ようやく漣に惚れてしまっているのだと、自覚出来たのだった。



「がーんばれよー? もう少しでバレンタインだろ? 逆チョコしちまえ!」

「簡単に言うけどよ! あいつバレンタインのこと知らねーだろ!?」

「えー? 咲乃とか菜幸(なゆき)ちゃんとなんか約束してるって聞いたよ? 明日あたりに」

「……三人がオフするって決めた日程だね? もしや、バレンタインチョコを作るのかもしれないよ?」

「克爺の予想当たるからなあ?」

「漣……が、チョコ」



 お世話チョコとか義理チョコかもしれないが。


 ウィンタージュのスタッフのために、作るかもしれないが。


 晁斗にもくれるかもしれないと、期待が込み上げてきた途端。顔に熱が集まるのを感じた。


 それを他の三人にも見られて、晁斗は盛大にいじられたのだった。



「ふーん。大量に発生しているケサランパサランねー? これだけ増えるの早いなら、ニュースにもなりかねんな? 克爺、警視庁でも鑑識に確認してもらいたいから、一体いいか?」

「構わないよ?」



 と言うわけで、晁斗が労働以外で久しぶりに疲れた時間だった。ちなみに篤嗣がやってきたのは、燈に借りたいものがあるのを直接頼みにきたのと、次代狗神の件についてもう少し晁斗から詳しく聞きたかったらしい。


 今回のケサランパサランはわからないが、甲本(こうもと)の時と、同一犯だったあの黒ずくめの女が関係しているからだ。

次回は土曜日〜

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