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12-2.落神

本日二話目







 *・*・*








 ああ、どこだ。


 どこにいるのだ。


 我が()、我が仔よ。


 視えぬ。


 今は視えぬ。


 この眼がお前を目にすることが出来ぬ。


 どこにいるのだ、我が仔よ。



「……ふふふ。思いの外眼が視えていないようだね?」



 誰だ。


 仔ではない、女子(おなご)のような声が聞こえてきた。


 しかし、ヒトの仔なぞに構っている余裕はない、我は、我は。


 あの仔を探しに行かねばならないのに。



「聞く耳持たないって感じだね〜? 妖出身の土地神のくせして? けど、見つからないのも無理ないよ〜? 君の仔は……僕らが預かっているんだから」

【……なんだと?】



 勝手に話す、ヒトの仔は、何故か我の知りたいことを知っていた。


 そして、ほぼ同じくして、とんでもないことを言い出した。



「ふふ。聞こえてたでしょ? 君の仔……土地神・狗神の次世代は僕らが預かっているって。ついでに、君の消滅に手を下したのも、僕の同僚の仕業」

【……(ぬし)ら、だと?】



 我の仔と、我の眼を封じた仕業が此奴らだと。


 二度耳にしたのだから、信じざるを得ない。


 眼は視えずとも、此奴の気配は判る。


 そうそうに倒すことに決めた。


 神気をまとい、周囲の樹々の呼びかけを伝える。


 だが、呼びかけが届かぬのか、風の音も樹々の音も聞こえなかった。



「むーだむだ! 君の神気を与えても、落神(おちがみ)になりかけのモノに聖域が応えると思ってる?」

【……我を、堕とした……だと?】

「うん。君の持ってる核を狙ってるからー」



 ならば、仔が連れ去られたのは我を誘き寄せるため。


 であれば、何故眼を奪ったのか理解しかねるが。



【……致し方ない。聖域を汚したくはなかったが】



 風を取り込み、樹々の花を取り込み、我は動く。



【妖だった時と同じく、戻らせてもらおう……】



 仔を奪い返すためにも、このヒトの仔を喰らうまで。








 *・*・*








 何か。


 (れん)は背筋が凍るような寒気を感じた。


 入院中に、荘重(むらしげ)から教わった風邪かと一瞬思いかけたが。咳とか喉が痛い訳ではない。


 ひたすら、背筋に嫌な寒気を感じるくらいだった。



「どうした、漣?」



 ここはひとつ、後ろにいる晁斗(あさと)に言うしかない。これはきっと体調が悪いわけではなく。



「……なんだか。寒気がして、背中がゾクゾクするんです」

「おい、風邪か?」

「違うんです。……ショッピングモールでも、邪気を感じ取った時みたいな」

「……俺は何も感じないが」

「俺もー」

「え、じゃあこれ風邪ですか?」

「ちょっと触るぞ?」



 晁斗に首筋を触られて、あったかいと感じたが。少し心臓がドキドキした程度。


 荘重に教わった、基礎体温が高い時に他人に触ってもらうと冷たくて気持ちいいにはならなかった。



「あったかいですね?」

「風邪じゃないとすると……」

「お? 俺にも感じられるようになったぞ、邪気!」

「マジか?」



 狗神までかなり距離はあるのに、守護精の空呀(くうが)よりも先に感じ取れた理由は漣もわからなかった。


 目印の赤い光が強くなるにつれ、寒気はどんどん強くなってくるのは感じ取れだが。



「近いかもしれません!」

「おっし、空呀急げ!」

「よっしゃあ!」



 出来れば、大変になって欲しくないのだが。まだ未熟者の漣では、祈るしか出来なかった。

次回は15時〜

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