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12-1.見つからない狗神

お待たせ致しましたー

 (れん)とはぐれない程度に、歩調を早くして狗神を探すのだが。


 さすがは、土地神のいる山だ。広過ぎてなかなかそれらしき気配も感知出来ない。


 克己(かつき)から様々な修行を課せられて、それを突破してきた晁斗(あさと)だが。広範囲に気を巡らせて、気配を辿る方法を駆使しても相手の狗神はなかなか見つからない。


 そこはやはり、妖から成った土地神だからか。



「晁斗さん……見つかりそうですか?」



 気配がないのに、少し苛立ち始めた頃。


 漣は少し息切れながら質問してきたのに、晁斗は慌てて振り返った。



「悪りぃ。疲れたか?」

「だ、大丈夫です! 晁斗さんはすごいですね……」



 歩調は意識していたが、時間までは意識していなかったのが仇になってしまった。


 少し休憩することにして、晁斗は背負ってたバックの中からペットボトルのお茶を出して漣に渡してやった。



「ほら、飲んどけ」

「いただきます。…………ぷは、美味しいです!」

「うち特製の、体力回復用だかんな?」



 晁斗はまだまだ余裕があれど、油断してはいけないので自分も飲むことにした。


 空呀(くうが)はまだこちらに合流することはないが、晁斗が鍛えれば守護精も同様に鍛えられている。だから、そろそろ戻ってくるだろうと思っていると、サイズを通常に戻した状態で空から合流してきた。



「いねーぞ、狗神!」

「こっちもだ。やっぱ、人気のさらにない方に籠もってんのか?」

「結構奥まで行ったけど、神気の欠片も感じねーぞ?」

「マジか?」



 堕神してないといいが、かと言って邪気を感じもしない。


 聖域とは言え、空気の浄化は神社と同じく少し薄くなってきているのには変わらない。


 だから、山登りに慣れていない漣でも息切れるのが早いのだ。清浄な空気の場合は、道が険しくなければある程度人間の体力回復を促してくれるのだが。



「……神様、見つからないんですか?」



 茶をたっぷり飲んだ漣は、少しずつ体力が回復してきたのか落ち着いた声音で尋ねてきた。



「ああ。俺にも神気……その神の存在を示す気配とかが感じられない。万が一に、邪気をまとうことになればそれの目印になるものも感じんのに」

「俺のとこも、全然だった」

「まったく、どこにいんだか……」



 だが、念のために用意してきた道具が役に立つ時がきた。


 晁斗は、背負ってたリュックを下ろしてシート状の布や札をいくつか取り出した。



「……何するんですか?」

「物探し……とは聞こえが悪いが、これで狗神を探す」

「??」

「漣はまだ癒し手以外で、術が扱えねーからな。すぐに覚えろとは言わないけど、よく見とけ」

「はい!」



 まず、五芒星の陣を描いた布を広い地面の上に敷き。


 次に、星の端に、形代(かたしろ)がわりの札を置き、晁斗は中央に立って札を一枚手に持ち、準備が整ってから構えた。



「……失せ物、失せ物」



 晁斗が詠唱を始めると、五芒星の線が置いた札と一緒に赤く光り始めた。その現象に、陣から離れて空呀を抱えている漣の声を上げる音がわずかに聞こえてきた。



「我は求む、この聖域の神を。我は願う、その神の居所を」



 悪しき者による被害がもしあったとしたら、一大事だ。


 下手に土地神の消滅があれば、ここいら一帯の土地に大災害が起こる可能性が出てくる。


 なので、出来るだけ急ぎたかった。



「導け、導け。我が力の欠片を繋ぎに、()のもとへ!」



 力の込め方が安定して、線から星の形に光が集まり、上昇していく。やがて、晁斗の持つ札に光が集中すると、札から赤い光が細く伸びて前方に向かい、どこまでも続くように光ったのだった。



「よっしゃ、成功だ!」

「空呀さん、あれば?」

「失せ物探しの術が成功したってわけだ。晁斗は克己とかに修行させられたから出来るんだぜ?」

「……僕にも出来るんでしょうか?」

「それはおいおい教えるさ。二人とも行くぞ?」

「はい!」

「おう!」



 術は成功したので、とにかく急ぐしかない。


 なので、漣には少し大きめサイズになった空呀に背負ってもらい、晁斗は自分の足で進むことにした。



「僕だけ楽していませんか?」

「体力とかの差はしょーがねーよ。それに、お前の役目は癒し手だ。それまで体力は出来るだけ温存しときたい」



 あと、今後さらに巨大化した空呀にも乗り慣れておく練習もしておきたかったからだ。今のところ、二メートルサイズの空呀に乗っても問題はないようだが。



「晁斗、まだ遠そうだぜ? 乗るか?」

「……そうだな」



 かく言う晁斗も、出来れば体力を温存しておきたかったので。空呀の提案にのり、もう少し大きくさせてから漣の後ろにのったのだった。

次回は12時〜

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