11-3.神社②
本日三話目〜
挨拶を済ませてから、晁斗達は高坂の話を聞くために。社務所の一室に案内されることになった。
先程の巫女服の女性がこちらに案内しなかったのは、まだ新米なのとちょうど高坂が社務所から離れていたからだそうだ。
社務所に入り、応接用の部屋へと通されると、初老の女性からお茶を出されたのだった。
漣は、初めて見る和室にもキョロキョロと見ないように座布団の上で正座を頑張っていた。
この作法は、昨夜暁美が教えたのである。
「熊谷さん……暁美さんは、母の知人でして。お孫さんであるあなたのお話は時々聞きます。腕の良い所長だと」
「まだまだ所長としては新米ですが」
「はは、私も神主としては新米なので。よくわかります。早速、本題ですが」
「土地の荒れ具合はまだほんの少しですね。ただ、空気の浄化が衰えかけていますが」
「……はい。ここの土地神様は、狗なのですが」
「狗神?」
「ええ。私は見鬼なので、彼の御方の姿は視えます。ですが、ここしばらく、その御姿を目にしてはいません」
見鬼と言うのは、俗に言う霊能者。
守護精は人一人に基本的に宿る精霊の一種であるとされているので、幽霊や妖の類ではない。誰もが目にする事の出来る存在だ。
だが、今の人間でも、妖や神などは見鬼と呼ばれる特殊能力がないと視覚に捉えることは出来ない。
晁斗は克己や暁美からの強い遺伝のお陰で、見鬼持ちだ。漣についてはまだ確認は取れていないが。
けれど、見鬼持ちは世の中では然程珍しくはない。はるか昔に迫害された時期もあったそうだが、守護精との仲が基本的に良好な現在では、神を視ることが出来る存在としてむしろ憧れやすい。
とりあえず、今は高坂稔の話を聞くことにした。
「狗神とは、関係が良好だったんですか?」
「はい。母と神主を引退した父に、幼少の頃はじめて紹介されてからずっと……。御姿を消される前までは、定期的に本社にも降りてくださいました。ですが、熊谷さんにもご確認していただいたように、空気の浄化が希薄になってからは……母も父もお会いしておりません」
「心当たり、は?」
「一つ。狗神様は、ある日私どもに『しばらく籠もるゆえに、誰とも相見えん』とおっしゃいました」
「……誰とも、会わない?」
奇妙だが、まだ晁斗も土地神になった妖については、克己ほど詳しくはないのですぐに推測するのは難しい。
とりあえず、正座に限界を感じていた漣の痺れを落ち着かせてから、本社に出向くことになった。
「……い、意識を失うかと、思いました!」
「ばあちゃんに、崩しても良いって言われただろ?」
「けど、依頼人さんの、前ですし」
「ま、よく頑張った」
高坂にも苦笑いされたが、緊張をほぐすのにいいきっかけになったかもしれない。
漣の足の痺れが落ち着いてから本社に出向き、いつも狗神が降りるらしい、御神体のところへと案内してもらえた。
「……鏡、ですか?」
記憶を失くす以前はわからないが、漣はこう言った特別許可を得ないと見れない場所は初めてだ。
晁斗も経験は少ないが、初めてではない。
神社や寺によるが、像以外にも水晶球や剣の場合もあるからだ。
「ええ。我が社の御神体はあの神鏡になります」
「しんきょう?」
「色々言われているが、神からの贈り物とも言われてる特殊な鏡ってことだ」
「さすがは熊谷さん。詳しいですね?」
「先代所長の受け売りですがね?」
それと、御神体は神の分身とも言われているから、何かしら影響を受けていてもおかしくはない。
一度手を合わせて、一礼してから本社に入らせてもらうと。たしかに、神鏡は少し曇っていた。しかし、晁斗の眼で視ても、薄っすら赤く染まっているように視えたのだった。
「……いかがでしょうか?」
「……正直、あまりよくないですね」
高坂と漣のいる場所まで戻ってから、晁斗はある推測を告げることにした。
「狗神自体が、何かしらの被害を受けたかもしれません。御神体が、わずかですが赤く染まっていたので」
「!……狗神様が?」
とにかく、一刻を争う事態だとわかれば。
晁斗は、漣を連れて本社の後ろ手にある山へ向かうことにした。高坂から聞いたが、神社の御神体とは別に、住処としていると。
「晁斗さん、神様が怪我でもされたんですか?」
「多分な。御神体見ただけじゃ、具合がどんなもんかはわかんねーが」
「僕の浄化、で出来るんでしょうか?」
「それと、俺に空呀もな?」
なので、空呀を降ろし、晁斗は漣と。空呀には単独で狗神らしい妖神を探すことにしたのだった。
次回はまた明日ー




