29-6.葛藤
お待たせ致しましたー
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漣を屍鬼からの猛攻から防いでいる最中に。
気絶していたはずの、裏の人間であるあの男が彼女の元まで飛来していったのだ。駆け寄ろうにも、屍鬼からの猛攻の方が酷くてそれどころではなかった。
ちらっと見ると、あの男が漣に向かって腰を折っていた。あの男に何が起きたのかわからないが、今は敵対するのも漣を連れて行く気もないのだろう。
すると、漣と頷き合ってから奴はこちらに勢いよくやって来て、出現させた刀で屍鬼の攻撃を薙ぎ払った。
「……今だけは、休戦を」
「…………わーった」
あの狗神からの事件では対峙したが、まさか共闘することになるとは思わないでいた。
だが、今はそうも言っていられない。
歪み、歪んで、取り込まれていく由那の身体。最初は片腕が鬼の腕となっていたが、今ではもう片方にまで進行していっている。
このままでは引き剥がせるか怪しいが、漣を信じるしかない。
とりあえず、猛攻を防いでいるのでこちらは精一杯だったが、あの男は刀一本と浮遊の術で由那に立ち向かって行った。
男が刀を振り下ろしても、屍鬼である由那は片腕でそれを受け止めた。
「由那!? 目を覚ませ!!?」
『…………ゆ……な……?』
「お前の名だろう!? 屍鬼に意識を取り込まれるな!?」
ガキンガキンと、刀と腕がぶつかり合う音が聞こえ。屍鬼の攻撃が男一人に集中していく。
戦い慣れているのを羨ましくは思わないが、今は有り難かった。漣には璐羽がついているが、結界は厳重に張った方がいい。
晁斗は空呀を漣のところへと向かわせようとした時。
漣の歌が、まるでエコーのように周囲に響いてきたのだ。
「なんだ……!?」
今までの彼女の歌が広範囲に響き渡るのは聞いてきたが。
こんな、機械を通したような響き方は初めてだった。
漣は一生懸命に歌っている。自分の双子の姉のために。
そして、自分のこれからのために。
漣は完成した歌を響かせていくと。屍鬼に取り込まれていた由那の身体にも変化が起きたらしい。
あの耳障りなダミ声が、苦しんでいるのが聞こえたからだ。
『ぐぅううううう……が、かは……っ!?…………が、れ゛ん゛ぅうううう!!?』
「由那!? 意識を保て!! 屍鬼から離れろ!!」
『そ゛……な゛っ…………ゔぉ……ぐ、な……んて』
「俺はお前の相棒だ!! 後にも先にもない!!」
こんな状況ではあるが。
あの男は男なりに、由那を想っていたのか。
だからこそ、立ち向かったのか。晁斗は苦笑いが浮かんだが、空呀を飛ばして自分もそちらに向かうことにした。
「漣の姉貴!! お前が元に戻んなきゃ漣も困るんだよ!! 元に戻れ!!」
気休めでも言葉を投げてやれば。
由那が、いきなり泣き出した。
まだ顔は半分以上屍鬼のままであったが。漣と同じ顔つきが初めて歪んだのだ。ぽろぽろと大粒の涙を流しながら。
『が……れ、ん……が、ゔぉ……く、を……?』
「そうだ! お前のしてきたことは許されねーけど。それでも、漣には必要なんだよ!!」
『…………くふ』
すると、由那は鬼の腕を自分の胸の前に持っていった。
まさか、と目の前にいた男も手を伸ばしたが。
もう遅かった。由那は、自分の心臓を鬼の腕で貫いたのだ。
「由那!?」
『……い……んだ……これ、で』
倒れて屍鬼から身体が離れていった時に、晁斗の後ろから漣の悲痛な叫び声が聞こえてきた。
次回は土曜日〜




