25-1.望み
新年一回目でーす!
新章スタート!
*・*・*
あれから、約ひと月。
されど、ひと月だ。
次代狗神である璐羽は、守護をすると約束した女の身体に宿りながら思う。
この身体は、魂が半分以上も抜けていると。
だから、記憶がない。
だから、常識がほとんどないのだ。
なのに、生きていけるのはそれだけ力が強いという事。
いったい、この女は何者なのか。
己と母を痛めつけてくれた、あの黒ずくめの男女と関わり合いが深いのは周知の事実。
いったい、何が関わっているのか。
人間だというのに、神を容易に堕とせる不届き者。
そんな奴らと、彼女が関わり合いなど持ってほしくはない。
それに今、彼女は幸せでいるのだから。
熊谷晁斗。
彼女に漣と言う名を与え、衣食住を何不自由なく与えてやり。
ついには、恋人同士となったばかりだ。
たとえ、漣が何者であろうとも。二人の幸せを壊したくなかった。他にも、万屋関係者は次々と幸せを掴んでいる。
璐羽にも、いずれ番となる国津神などが現れるだろうが。いつかはわからない。
何せ、璐羽はまだまだ生まれたての神。
子供に等しいのだから。
「璐羽、おはよ」
そして、漣が夜からの眠りから目覚めると。
璐羽は小型の狗のままで寝ていたので、くぁっとあくびをした。寝ているのは、漣の枕の横だ。
「今日もお箸頑張ろうね?」
【……まだ慣れぬ】
「僕もだったから、璐羽もちゃんと出来るよ!」
【むぅ】
こんな穏やかな会話を出来るのも今だけと言うのは。
どうかならないで欲しい。
とりあえず、腹は減ったので。漣が着替えてから二人で下の階に降りたのだった。
次回は水曜日〜