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図書委員長から騎士団長になりました。  作者: Kureo
第2章 約束のクイズ序章
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18.夜中の訪問


第2章 約束のクイズ序章



暗黒。


一言で言えばそのような景色だ。


常人なら、右も左もわからない程の暗闇のなかを、彼女は走る。


「はぁ・・・はぁ・・・ったく、しつこいんだから・・・!」


もうどれくらい走り続けているだろう。


子供のときから走るのは好きで、近所の人からもあだ名をつけられるほどだった。


その彼女が、全力疾走を長時間続けているのに、後ろから距離を空けずに影がついてくる。


「チッ・・・くらえっ!」


後ろへ小型の刃物を投擲する。


しかし金属同士が弾き合う音がしただけで、影の追跡は続いていた。


なかなかに厄介な追跡だ。


「はぁ・・・まずいね。このままだと・・・」


悪い予感は的中した。


やはり、ある場所へ誘導されていたのだ。



ここは、街から離れた遺跡の入り口だ。


開けていて、とても姿は隠せない。


「クソッ・・・!隠れてないで出てきなさい!相手になってあげる。」


遺跡を背に、後方にいた影を彼女の光る瞳が睨み付ける。


夜風に尻尾が数回揺れると、暗闇から無数の影が現れた。


「趣味悪い服だね。大勢で女の子相手にしてどうするつもり?」


影の一人がゆらゆらとこちらへ近づいてくる。


「・・・クエスチョン。」

「はっ!そうくると思ったよ。あんたがクエイスズショーンの人間ならね。」


それは、その街の掟だった。


彼女は身構え、次の言葉を待つ。


やがて影が口を開き、なにかを呟いた。



彼女は、なにも答えられなかった。


「なん・・・で、・・・おい!どうしてそんなことをお前が・・・!」

「・・・フォースアンサー。」


影の放ったその言葉を最後に、


少女の視界は、完全な闇に包まれた。




《バルドース城 ミクリの部屋》


巨大な山に隣接する巨大な城、バルドース城。


その迷路のような構造の中にある一室で、一人の少年が寝息をたてていた。


「すぅ・・・すぅ・・・」


悩みの無さそうな、幸せな寝顔をしている彼、いや彼女というべきか。


彼女は、この世界とは別世界の人間だ。


本名、美紅。この世界ではミクリと名乗っている。


こちらに来る際の不具合で、元々は少女であった彼女の見た目は、年相応の少年のようになってしまった。


まあ、彼女自信がそれほど気にしていないので、私もこれといったことはしていない。


月明かりが彼女の艶のある黒髪を照らしていた。


「全く、いつ襲われても文句は言えないな。」

「・・・聞こえてるから。」


おっと、どうやら起こしてしまったようだ。


私は一歩彼女から退いた。


寝起きの顔でこちらを見ている。


「寝顔を覗き込むなんて、ついにそこまで堕ちたのねルーク、いや変態クズ野郎。」


相変わらず容赦のない罵倒だ。


いやいや、若いっていいな。


「おやおや、変態とはひどいじゃないか。そういう君こそ、姫の感触はどうだったかい?」

「なんで知ってんのよ・・・」

「さあ?」


怪訝そうな顔だ。


まあ、そういうお年頃だ、仕方ないことだろう。


「それより、魔竜イフリートの討伐見事だったよ。」


今日は彼女にとってとても忙しい一日となっただろう。


フレイアという男に化け、姫をさらおうとしていた魔竜の正体を暴き、そして討伐したのだから。


今や街中がその話で持ちきりだ。


『孤高の旅人が魔竜を討伐した』

『氷結剣技で一撃で倒した』


などと、様々な噂が流れている。


「討伐したその日の夜に誉めに来るところは評価してあげる。でも見てたんなら手伝ってよ。」

「前にも言っただろ。色々事情があるんだ。」


彼女は納得のいかない表情をしている。


まあ、これまで何度もはぐらかしてきたから、色々と不満だろうね。


「あの魔竜といい、モンスターの大群といい、南の方で何かよくないことがおきているようだね。」

「知らないよ。疲れてるんだから寝かせて。」

「そうだろうね。でも、どうやらそうも言ってられないみたいだよ?」


すぐに部屋のドアをノックする音が聞こえる。


「ミクリ様、起きていますか?」

「リカちゃん?どうしたの、こんな夜中に。」


ミクリがこの城で過ごす間の世話役として役を受けているメイドの声だ。


大剣を自在に扱う、なかなかアグレッシブなメイドだった。


「王様が、お呼びです。至急、玉座の間に来るようにとのことです。」

「なんだろ。わかった、すぐ行く。」


どうやら、王さまからお呼びがかかったようだ。


私はそろそろ帰るとしよう。


「もう帰るの?相変わらず何しに来てるのよ。」

「ははっ、今日は君の様子を見に来ただけだよ。美紅ちゃん、」

「何?いきなり名前で読んで気持ち悪い。」

「これからの君に、ヒントを与えておこう。」



「どんなことがあっても、信じることを忘れてはダメだよ。」


「なにそれ、道徳の授業?」


「どうとらえるかは、君の自由だ。」


私はそう言い残して、


彼女の部屋を後にした。


きっと、


きっと彼女なら、


何かを変えてくれると信じて。




第2章 約束のクイズ


Coming soon...



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