Girl's Side 5 ~評価~
人望の厚い八十島さんのところにはいつも人が集まって来る。他愛もない雑談ばかりではなく、勉強を教わりに来たり、相談を持ち掛けて来る人も多い。
すぐ背後のざわめきが気になってしまい、人が集まってくると何となく席を外すようになってしまっていた。
でも、今日のお昼は八十島さんに捕まってしまった。お弁当片手に席を立とうとした矢先のことだった。
「ミィーナはいつもお昼は何処で食べてるの?」
「ふぇっ?」
思わず間抜けな声が出てしまったのは、その質問が唐突だったからっていうのもあるけれど、どっちかと言えば、また“ミィーナ”呼ばわりされたことへの驚きの方が大きい。そんな可愛らしい名前で呼ばれても困るだけ。こないだの帰り道でもそう言ったのに。
「ミィーナったら、休み時間もすぐにいなくなっちゃうから。ひょっとしたら私、避けられているんじゃないかって、ちょっと気が気じゃないのよ」
「そそそ、そんなことないよ?」
「じゃぁ、今日は一緒にお昼を食べましょう。第1回かるた部懇親会よ。ほら、机、くっつけて」
そんな調子で、ボクには拒否権なんてまるっきり無かった。
今日のお弁当はアスパラベーコンと玉子焼き、サラダは昨日の残りの春雨サラダ。毎朝自分で作っていると言ったら八十島さんは大層驚いていた。
「林檎がちゃんとウサギさんになっているという、ただそれだけで貴方の女子力の高さが窺えるわ。この際だからはっきりと言っておくけれど、それ、私なんかには到底真似できないわよ?」
「そんな大袈裟な……片耳ずつ丁寧にやればどうってことないよ?」
「事も無げに言って退けたわ!?朝飯前とでも言いたいの?」
確かにそうだったけれど。
お弁当一つで必要以上に持ち上げられて、何だか落ち着かないボクの目の先、つまりは八十島さんの背後に驚きの表情を浮かべた男子生徒がいた。
「あれ?二人でお弁当?」
「そうよ。同じかるた部同士、親睦を深めようと昼食会を催していたのよ」
「え、何それ?俺、呼ばれてないんだけど?」
「えぇ、あなたはお呼びじゃないわ。竜田川君」
八十島さんの言葉は容赦なかった。漫画なんかだとちゃんとこの後にデレがあってフォローが効くんだけれど、現実にはそんなものはなかった。あったのは当人を更にたじろがせる追い討ちだけ。
「竜田川君、貴方の話は結構耳にするわよ。それもよろしくない噂ばかり。ミィー……なの川さんも気を付けなさい」
そんなにミィーナを普及させたいんだろうか?何とか呑み込んでくれたけれど、イントネーションはかなり不自然だ。
しかし、何事もなかったかのように八十島さんは澄ました顔で言うのだった。
「お付き合いする人はちゃんと選ばないとね」




