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ナクした温もり 上

仕事が忙しく遅くなりました。

申し訳ないです

m(_ _)m

「こんな時に不謹慎かもしれないけど、やっと約束を守ってくれる気になったらしいわ。

全く、周りが納得してくれる男になってからお前を迎えに来る、とか言って、どれだけ人を待たせれば気が済むのかしらね、って今までか!?

まぁ、何にしろ騎士隊長にはなったし、遅くはなっても約束を守った事は少しだけ認めて上げても構わないけどね。

でも、本、当、に、私は待ちくたびれて疲れたのよ!?」


確かに表情は不満一杯だけど、私だけは知っている。

天にも昇る気持ちだろうって。


まだ父様への報告と説得は残っているし、立場的にも降嫁になるけど、そんな事は二人で幾らでも越えていけるだろう。


だって、子供の頃に約束を交わしてから、ようやっと十年越しの恋が叶うんだもの。


本当に、あの事さえ解決していれば、と思う。


それでも、折角のお祝い事なのだもの。 私も本当に嬉しい。

何といっても初めて会ったあの時から、私もずっと一緒に居たんだから!


 


あれは私が5歳、姉様が10歳の頃の事か。 母様を流行り病で亡くしてから鬱ぎ込んでいた私を元気付けようと、姉様が内緒で城下に連れ出してくれたのは。


始めは怖がってビクビクしていた私だけど、城では見慣れない物を見たり、食べたりしている内に、少しだけ笑顔を見せる様になっていた。


そんな私を姉様は優しく見守ってくれた。


その内、頻繁に二人で城を抜け出す様になり、いつの間にか城下の子供達とも遊ぶ事が多くなった。


その中に居たのだ、姉様の想い人になるカイリ兄が。


始めは歳も近いせいか何事にでも張り合い競争していたのが、いつの間にか仲良くなり、暫くすると姉様と二人きりで会ったりもする様になった。


その頃には私達の立場も話したそうだ。

それでも態度を変えなかった所も惚れた一因らしい。


一方で私は姉様を取られた気がして悲しかった。

でも、カイリ兄はその内に寂しそうな私を見ると一緒に遊んでくれる様になり、私も姉様が心を許している彼を、本当の兄様みたいに慕う様になった。


その頃になると何となく二人の気持ちも解る様になり、なるべく二人きりにしてあげる事もあった。


色々三人で話もした。 将来の夢を語った時はカイリ兄は騎士に、姉様と私は魔術師になりたいと話したものだ。


そして其々の道は違っても想いは一緒だと。 この国を豊かに、平和にしたいとも話していた。


初陣を飾ったのも同じ時。

何かと折り合いの悪い、鬼人族との国境沿いでの領地争いだった。


父様は普段から、王の子でも特別扱いは不要、という方針を採っていた為、二人共に見習い身分としての初陣で、私達と同じく騎士見習いのカイリ兄も、一緒に後方での待機任務に従事していた。


だが、敵本隊から逸れた小部隊と遭遇し戦闘に巻き込まれてしまう。


その結果、私達も其々、幾人か殺め、その手を血に染める事になった。


それでも初めて禁忌を犯し、心に負った傷だって、三人一緒なら何とか乗り越えられた。


いつも一緒の三人、でもその中で何かに付けて引っ張ってくれるのは、いつも姉様だった。


強力なカリスマ、リーダーシップ、更に姉様には才もあった。

戦場での活躍、魔術院での実績、あっという間に力を示し、当時の宮廷魔術師からは、「是非とも直弟子に!」と請われた。


逆に私とカイリ兄は、地道にコツコツと実績を積み重ね、少しずつ立場を固めて行く事になる。


その頃だった。 最初の御神託が私の元に降ったのは……。


ある朝早く起きた時、唐突に聞こえてきたのだ。


声は告げた。


聞こえる声が神の代表である事。

寿命により普人族の神々の勢力が減退している事。

それに伴い普人族の優先権が低下している事。

神の試練を受けられる強力な人材の育成を。

無理ならば贄を捧げ上位世界コノミヤから人を召喚せよ、と。


私は、御神託があった事を父様に報告した。


父様は私の話しを聞くなり、対策会議を直ぐに開いた。

しかし、まだこの頃は生活を脅かす程の事態は起こってはいなかった。

その為、会議はそこまで深刻にはならず、具体的な対策と言えば試練を受けられる様に騎士団や魔術院には普段の育成・鍛練に加え各々に心身を強化するように努める旨を伝え、市井の人々には御神託を受けた為、才能のある人材の推薦・支援を行うという布告を出すくらいしか出来なかった。


その後、年が経つにつれ徐々に作物の収穫量や狩りの獲物が減っていく事になる。

勿論、結果を受けて色々と対策を講じた。


他種族にも頭を垂れて、教えを請うた。


それでも状況は少しずつ悪くなる。


私達は愚かにも、御神託にあった優先権の低下が何を意味するのか、ここまで至って漸く理解した。


今はまだ備蓄も財貨も大丈夫だが、この壗で十年も放って置けば、アハラミヤは何れは困窮を迎え、国が瓦解しかねない。

それを防ぐには人を育てるか、贄を捧げて人を召喚するしかない。


まずは一つ、方策として召喚を行ってみる事になった。


贄は、魔術師数人分の魔力を有した国宝ともいえる拳大の魔石。

正しい手順を踏み儀式を行ったが、砕け散った魔石を残し、何も呼び出せないまま失敗に終わった。


その失敗を受け、魔術院でも考察・見解を示した。


上位世界のコノミヤから人を召喚するには、依憑となる同じモノを捧げる必要があるのではないか、と。


まだ他にも手段が残されている内に、そんな事を試せる訳がない。

その為にも、人材の養成は国家の急務となった。

力ある人材は一層注目される事となる。 その行動一つ一つをも……。


そんな中、姉様は前任の後を継ぎ宮廷魔術師に、そしてカイリ兄も先日、騎士隊長に任命されたのだ。


姉様もカイリ兄も、血が滲む程の努力を重ね今の場所に立っている。

勿論の事だけど、私も努力を重ね魔術院の中では上の役職に就いている。


それなのに、私の知る限り一番可能性がある姉様でも試練の御神託は降りなかった。

何処まで力を付ければ良いのか、先が見えない不安だけが積もっていく……。


そして、二人の嬉しい報告を聞いた次の日に……再び御神託が私の元に降った。



長いので上下に分けました。

良ければ続きをどうぞ

( ^-^)_旦~

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