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不都合な体 (改)

読んで頂ける方に感謝します!

俺がシノハラに召喚されてから一週間が経った。


昨日の事になるが、義体が完成したので移植処置を行って貰い、生首生活からやっとオサラバできた。

特に痛みもなく術で寝てる間に処置は終わっていたので有難い事だと思う。


生首の時は不思議と喉が渇いたり腹が減らなかったのに、体が付いた途端に餓死しそうになるとは思わなかった。

そのせいで濃い味は胃が受け付けなくなり、ぬるま湯や薄味の食事から慣らす事になったのは正直つらい。


それでもやっぱり体が付いた事で少しづつでも体を動かせる様になったのは嬉しい。

食事を取った後は部屋が広いのでウォーキングしたり、ストレッチで体を解したりしている。


それと、新しい体なので前はあった黒子や怪我の痕も綺麗に無くなってしまった。


背丈は、ほぼ変わっていない。

身長180cm弱、もう後5cm位は欲しかったと前から思っていたので、クレハに伸ばせるのか聞いてみた。

すると、余りお薦めは出来ないとの答えが返って来た。


クレハは、先ず受肉する際は義体の体が元になる為、あちらの体との骨格・体格の差で余計な負荷が懸かり激痛を伴う可能性が高い事を理由として述べ、更に感覚が違ってくるので体の慣らしに時間が掛かる事も教えてくれた。


俺は、それらの理由を聞いて痛いのは嫌だし、慣らしに時間を取られるのも嫌だから、と身長を諦めた。 しかし、そんな俺に哀しい結末が待っていた。


俺はシノハラに呼ばれてからはクレハにしか会っていない。 その為、無意識に普人族は日本人という認識になっていた。

なので、「他は平均値で構いませんか?」と聞かれて特に気にせず頷いてしまった。


そして互いの認識不足により、他の所は手遅れになってしまう。


クレハ達は俺の身長を元に、アハラミヤの成人男性の平均値に併せて義体の調整を済ませてしまったのだ!


……まず体格が、よく言う細マッチョになっていた。

これについては今の体で、前の体との差を埋める量の鍛練を積めば、受肉しても多分、大丈夫らしい。

要するに、前の体を鍛えて今の体になる位の鍛練をすれば良いって事だ。

相当に辛いかもしれないが体格は、まだ何とかなる。


……問題は、次にある。

考えたくないし、言いたくもないが……言おう。


……股下が高い位置にあり、更にナニもデカい。


俺にどうしろと!? 鍛えようがナイじゃん!!


これを知ったのは昨日、移植後に初めてトイレに行った時だった……。


そして、これも理解した。

人は必死になれば、思考は速くなり動作も正確になるという事を。


後から聞いたのだが、行きは歩くのにも難儀していたのに、トイレから出ると普通に一人でベッドに戻ったそうだ。


あの時の俺は、にこやかに聞けた筈だ。 間違いない。


「……あの「移植後に義体の調整って出来るかな?」……ッ何か体に不都合が、おありなのですか!?」

「イヤ、何も不都合なんかナイよ? 単なる知的好奇心での質問サ」

「……移植後の調整は、無理だと思います」

「クレハも移植処置に立ち会ってたんだっケ?」

「勿論です。 微力ですが私も全力を尽くしました」

「ソウ……態々アリガトウ……少し疲れたヨ……チョッと一人で休ませて欲しいンダ……イイカナ?」

「……解りました。 起きられましたら、お声を掛けて下さい」


何て事だ!! チートもニコポもナデポもないし、そうだハーレムをつくろう!!何て考えてもないのに、何で俺がチ〇コモゲろ!!状態になんなきゃならないんだ!!


新しい義体を作成し直してもらえばいいだって!?……分かってない、何も分かってないヨ、キミは!!


自分だけで、こっそりと処置出来ないと言うことは、魔術院から複数の人手を借りなければならないってことだ。

すると多分こうなる。


「プ-ックスクスッ……ここだけの秘密何だけど、知ってる?」

「何が?」

「ヒッハハッ……召喚者って、ピーがピーだから態々義体ごと造り直させたんだってサ!! ボフーッ!!」

「マジデ!? ププ-ッ!! 単勝乙www」


ここまで酷くならなくても何人かには事情を知られるし、何より俺の心のダメージが大き過ぎる。


俺は思った。 永遠の痛みより一時の痛みの方がマシだと。


朝っぱらから鬱になる事を考えても仕方ないので、気持ちを切り替えよう。


今日はこの後になるが、やっと人間になれたのでクレハの親父さん、つまり国王様との謁見を予定しているそうだ。

最も国の偉いさんやらへの顔見せの様なもので、詳細や事後の交渉に関しては一部の者のみで別室で行う事になっている。

クレハ曰く、「名乗った後は普通にして頂ければ、私が話しを進めます」との事なので謁見については気楽なものだ。


そのクレハとは昨日から一緒に食事をしていたのだが、今日は謁見前に準備とかあるらしいので朝食が別々になった為に今はいない。

朝食を持ってきて、そう話した後は申し訳なさそうな顔をしていた。


珠に酷く沈んだ顔をしていたりするのが心配だったが、昨日辺りから少しずつ笑顔も見せてくれる様になりホッとしている。


……そろそろ切り替えて、考えよう。 先ずは、今後どうするかだ。


向こうの出方で、どう対処するかは決めておかないといけない。

どう動くにせよクレハの言う様に、色々と力を身に付けなければ何も出来ない事は解っている。

腹を括り、嫌な事にも慣れないと仕様がない。

もうシノハラで生きて行くしかないのだから。


言葉に関しては自動翻訳の様なものが脳内に標準装備されている様なので問題ない。


読み書きは習うしかない。

訳が分からないまま変な文書にサインさせられたりして悲惨な目に合いたくはないので、マスターするまでは基本的に拒否する。


武器・防具・魔術に関しては一通り習い、自分に合ったものを使いこなせる位に習熟する。

魔術は使えるか判らんけど、知識としては知っておいた方が良い。


ある程度の力を付けるまでは余り角を立てない様に無難に付き合って行こう。

その後は条件・譲歩次第で協力しても良いとは思う。


糞神は知らん!! 放っとかれる分には構わんが、もし試練とやらを受けさせられて死にそうな目に合わせられたら、最後まで残って必ず報復してやる。

上位世界人らしいから、鍛えればそこそこ強くはなれるだろう。

そうなったら、少なくとも普人族の神は絶対に赦さん。


 


考え事をしている内に時間が経っていたようだ。 扉がノックされた。


「失礼します。 お時間ですが宜しいでしょうか?」

「ああ、うん。 今でるよ」


さて、どうなる事か?



次話は土曜日に投稿いたします。ありがとうございます。


本文を少々、改行・空欄を変更しました。

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