97.結婚式とその後(エルネスティーネ公爵の憂鬱は続く)
卒業式の後、1か月して、フェアフュアングと皇女殿下は結婚した。教会で誓いの言葉を述べて、婚姻の契約書にサインして、そのまま帝国の法務局に提出した。宮殿で盛大な結婚パーティーが開かれた。
フェアフュアングは相変わらずマスクを付けている。これには招待された外国の要人が
「フェアフュアング様は絶世の美男子と聞いてきたのですが、マスクで顔が見れませんな」
これに対して聞かれた帝国貴族が
「学院では相当鳴らしたようです。素顔を見て気絶する女生徒が続出したらしいです。それで、マスクをつけて素顔をさらさないようしたらしいです。今回もマスクをつけるのは皇帝陛下の承認済みとのことです」
「そうですか、残念です」
「『帝国の結婚式に行く』と言ったら、娘が『是非フェアフュアング様がどんな顔をしているか見てきてほしい』と言われたのですが」
「それは難しいですね。マスクをつけるのは皇帝陛下の命令ですから」
マスクをつけるのは、事情を知っている帝国貴族は了解しているようであるが、事情を知らない外国からの招待客は不満のようであった。
結婚式は波乱もなく無事終了した。皇女殿下は感無量である。
結婚式終了後、皇女殿下とフェアフュアングは帝都に新たに構えた公爵邸に入った。皇女殿下はフェアフュアングと結婚後、皇籍を離れ、公爵位を賜った。皇帝は領地も付けたかったようであるが、そんなことをすれば面倒ごとがすべて皇女殿下のところにくるとして断った。
今は皇女殿下は結婚後エルネスティーネ・ブルヘンハイム公爵となった。ブルヘンハイム公爵家当主の誕生である。フェアフュアングは結婚を機に伯爵家当主から陞爵して侯爵家当主となった。これも領地は要らないと固辞した。面倒ごとは要らない。これは前世と変わらない気質である。いやむしろ今世はそれに輪をかけている。
今のところエルネスティーネ公爵は金持ちである。エルネスティーネ公爵の作るマジックバッグは現在この大陸中に供給されている。
その数、月に200個そして1つ作ると金貨60枚だったのが先のブレンブルグ王国での協議で税の優遇装置をとることになったので、1個作ると金貨70枚がエルネスティーネ公爵に入ってくる。月に金貨14000枚である。
それ以外にも、フェアフュアングを探すためにいろいろ作った商品の配当もあり、正直言って、今自分がどれくらいのお金を持っているのか分からないような状況である。
この上、領地経営などという面倒ごとは御免こうむりたいというのが心情である。
「旦那様、今日は新婚初夜ですね」
「そうだな、今日は新婚初夜だな。前世と合わせると2回目か、2回目でも新婚初夜というのかな」
「いいます。前世はカウントしません」
「そうか、それなら新婚初夜だな」
「優しくしてくださいね」
「わかっている、2回目だからな」
「2回目、2回目と言わないでください、今日は初めて、それでいいのです」
「わかった、今日は初めて」
それから、3か月ほどして、エルネスティーネ公爵は妊娠に気が付いた
「旦那様、私、お腹に赤ちゃんが出来たようです」
「そうか、それはよかった」
「私、生まれてくる子は、旦那様に似てかわいい子がいいです」
しかし、この言葉が後で、とんでもないことになろうとは、この時のエルネスティーネ公爵は知る由もなかった。
その後、前世の妻たちは次々とフェアフュアング侯爵の側室となった。結局タマも側室の仲間入りをした。
そして、問題のアンネリース達からも側室申請がなされた。これについてはフェアフュアングもエルネスティーネも検討会にすべてをゆだねた。その結果この5人の側室申請は認められた。
フェアフュアングは1人の正妻と15人の側室を持つことになった。そして、すべて妊娠した。猫のタマも妊娠した。異種族で子供が出来るのは絶対におかしいと思うが、これが異世界、ここは神の悪戯の世界である。
結婚から10か月ほどしてエルネスティーネは可愛い女児を出産した。目に入れても痛くないと言ったかわいい赤ちゃんである。名前はエリーザと名付けた。
エリーザが生まれると皇帝が毎日のようにやって来る。孫なのだから当たり前と言えばそれまでであるが、少し異常である。
そこで、エルネスティーネ公爵はフェアフュアングに
「旦那様、エリーザがどんなスキルを持っているか、鑑定してもらえませんか」
「わかった、鑑定してみる」
「………」
「どうしたのですか」
「………」
「ねえー、どうなんですか」
「ごめん、あまりのことに驚いてしまった」
「というと」
「エリーザのスキルは、生活魔法、言語理解、鑑定、空間魔法、甘美の香りだ。俺と同じだ」
「えー、旦那様と同じ」
「そうだ、俺と同じ、甘美の香りもある」
「そんあー、旦那様だけでも国が亡ぶかと思っているのに、娘まで、そして、今妊娠している側室たちの産む子供も同じかもしれないということ」
「そうだな、国が亡ばないようにしないと。任せたぞ、エルネスティーネ。この国はお前の肩に懸かっている」
「旦那様は関わってくれないのですか」
「俺は面倒ごとは嫌いだ」
「自分の娘ですよ」
「そうは言っても、無理だ。国が亡んだら、誰もいない国へ行って、オーロラでも見て過ごすか」
もうフェアフュアングは考えることをやめたようである。
「それと、タマの産む子供って、どんな子供が生まれるのでしょうね」
「知らん」
「そんな無責任な」
「知らんと言ったら知らん。俺に分かるわけがない」
お互いにもうどうしていいかわからなくなって、この話は皇帝陛下に告げられた。皇帝もどうしていいかわからずにただ頭をかかえるだけであった。
生まれた子供には「甘美の香り」があった。それも女児である。この子が成人するとどれだけの男を虜にするのだろう。帝国が亡ばなければいいがと思案するエルネスティーネ公爵であった。エルネスティーネ公爵の憂鬱は続くのであった。
ここまでお読みいただいてありがとうございます。一応、この話はこれで終わりとします。
書いているうちに話の内容が当初の想定とかなり違ったものになったので、題名にサブタイトルを付けました。
今後とも、私の小説
「転生者とバグでない異世界人の物語」
「牛乳とチーズは違う味がする(顔だけ男の気ままな旅)」
「北の関を死守せよ、野望は泡沫の夢と消えて」
「雨の日は嫌い、雨の日はやっぱり嫌、でも雨の日もちょっぴり好きかも」
をよろしくお願いします。
「帝国皇女の憂鬱(前世の夫の生まれ変わりを捕まえろ)」が完了したので、次の作品を執筆中です。
神戸の花時計にちなんだ作品を書こうと思ったのですが、間違っていると言われても困るので設定は異世界にしました。
「泡沫の恋の行方と花時計の思い」7/1より毎日1話7:00投稿開始予定
よろしくお願いします。




