42.顔だけのハニー
あれから半年がった。もう春である。平民だと、もう10歳である。あれからライムの転生者の情報は入ってこない。探し始めて早5年そろそろ焦りも出てくる頃である。「このまま見つからないのでは」と思われた頃、アロイジア男爵令嬢から連絡があった。
ブレンブルグ王国の北の町のタールブッケン町に張り付けた冒険者から
「ものすごい美形の男性冒険者がいる。女性冒険者が、腐った肉に集る蠅のように付きまとっている」
という連絡を受けたとのことである。
「こんなに女が寄ってくるのは、もうライムの生まれ変わりに間違いない」
というのが2人の一致した意見である。すぐに、2人でタールブッケン町に転移した。
冒険者ギルドに行くと、一目でその異常さが伝わってきた。1人の男性冒険者を複数の女性冒険者が取り囲んで、かいがいしく世話をしている。一応クエストは受注しているようであるが、実際にクエストをこなしているのは周りを取り囲んだ女性冒険者のようである。毎日女といちゃつきながら女性冒険者に食べさせてもらっているようである。ギルドで付いた二つ名が「顔だけのハニー」であった。
ちょっと聞き込みをするだけで不満たらたらの男性冒険者が堰を切ったようにしゃべりかけてくる。名前はフェアフュアングと言うらしい。出身はここから南に半日ほど行った村の出身だそうだ。そこでも、このように女が周りを付きまとっていたそうだが、さすが、村では生活も厳しく、フェアフュアングもすべてを女にしてもらうことは出来なかったようである。もう少し仕事をしろと言われて村を追い出されたそうである。村では「ものぐさハニー」と呼ばれていたそうである。その後、流れに流れてこの町に来たそうである。
ここまで聞き込みをして対策を練ることにした。とにかく慎重にしないと、転移で逃げられたらまた1から探さないといけない。
急遽伯爵邸で対策会議をすることにした。伯爵邸に前世の妻たちを全員集めた。
「それでは対策会議を始めます。まず、今の状況を説明します。ブレンブルグ王国の北の町のタールブッケン町と言う町にフェアフュアングと言う名の男性冒険者がいます。
彼は容姿がすごくよく、多くの女性冒険者が付きまとっている。そして、女性冒険者に食べさせてもらっている。村にいた時の二つ名は「ものぐさハニー」、そして今の二つ名は「顔だけのハニー」である。
それでは、今後の方針ですが、まず、フェアフュアングがライムの生まれ変わりかどうかの確認を行う必要があります。
次に、フェアフュアングのスキルを確認する必要があります。特に、空間魔法がある場合は慎重にしないと逃げられてしまいます。
ヘレーネ子爵令嬢は鑑定が使えるので、これでフェアフュアングが転生者かどうか。そして空間魔法が使えるかどうかを調べてもらえませんか」
「わかりました」
「次に、どうやってフェアフュアングを捕まえるかどうかですが、何かいい案がありませんか」
「はい、皇女殿下」
「ルナ、何かいい案がりますか」
「はい、皇女殿下が、フェアフュアングの生まれた村の領主になって、フェアフュアングの家族を人質にして結婚を迫ったらいいと思います。家族を人質と言うのが聞こえが悪ければ、例えば税金を半分にすると言えば、フェアフュアングに皇女殿下との結婚を迫ると思います。それに領主には領民を裁く権利があります。それにフェアフュアングは私たちと同じ10歳なら、親の承諾書で結婚が決められます。婚姻証明書を作ってフェアフュアングの両親に署名させれば皇女殿下とフェアフュアングは夫婦です」
「中々過激な意見でしたが、実行に移すにはかなりの困難が予想されますので、とりあえず保留としたいと思います。ほかにありませんか」
「ないようでしたら、まず明日私とヘレーネとアロイジアでフェアフュアングが転生者かどうか、そしてどのようなスキルを持っている確認してきます。フェアフュアングの生まれた村についても調べてきます。その結果をもとに今後の方針を再度検討したと思います。以上をもって今日の会議を終了します」
次の日、再度皇女殿下とヘレーネとアロイジアは冒険者ギルドへ転移した。そしてヘレーネがフェアフュアングに鑑定をかけると
「フェアフュアング、冒険者(転生者)」
と出てきた。ヘレーネは
「間違いないライムの転生者だ」
と思った。
続けて、鑑定をかけると
「スキル、生活魔法、言語理解、鑑定、空間魔法、甘美の香り」
と出てきた。
「甘美の香り」わからない言葉が出てきた。それで再度鑑定をかけると、「甘美の香りとは、異性を異常に強く引き付けるスキル。このスキル所有者に魅せられた異性はその人の望むことを何でもしたくなる」と出てきた。こんなスキル持っていたら、女が寄ってくるの当たり前じゃない。
「ヘレーネどうだった」
「あたり、フェアフュアングは転生者。そして、生活魔法、言語理解、鑑定、空間魔法、甘美の香りのスキル保持者。甘美の香りとは、異性を異常に強く引き付けるスキルだって」
「これは当たりね。ライムの転生者に間違いないわね」
「たぶん」
「それじゃ、次、フェアフュアングの生まれた村に行くわよ」
「はい」
フェアフュアングの生まれた村に行って聞き込みをした。
「あのう、フェアフュアングという男について知りたいのだけど」
「あいつはやめとけ、あいつのことを聞きに来る娘さんはいっぱいいるが、お前さんたちもそうか。とにかくあいつは怠け者だ。何もせず、グータラしている。それなのに顔がいいから若い娘がすぐに世話をする。ますます悪くなる。だから村を追い出された」
「あのう、家族とかは」
「家族は父と母と兄と姉と妹がいる。向こうの右から3軒目の家だ」
その後、フェアフュアングの家に行った。確かに家族はみんな美形だ。それでも家族はかいがいしく働いている。家族にも話を聞こうか迷ったが、フェアフュアングに知られてもまずいので今日は帰ることにした。
それにしても神様も酷である。前世であれほど、女あさりして好き勝手していたライムにも転生得点を与えるなんて、これでは転生者だと気づいても絶対名乗りを上げて、私たちを探そうとするはずないもの。ますます慎重にしないと逃げられてしまう。この時ばかりは神様を恨めしく思う皇女殿下であった。




