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登場

 そのとき「わかりました」と、後ろからおりんさんが声を出された。


 「えっ? おり・・・お鈴?」 そう言うと、おりんさんはサッと立ち上がって言われた。


 「お仲様・・・申し訳ございませんが、これからお里様とご一緒にお里様のお部屋へ来て頂いてもよろしいですか?」 おりんさんがお仲様に向かって話された。


 「私が?」


 「はい。来て頂ければ、お仲様もご納得頂けると思いますので・・・」 そう言われて、お仲様は考えられた。


 「いいわ。でももし、私が納得出来なかった場合は他のご側室方にもこの話はさせてもらいますからね」 そう言って、立ち上がられた。私もとりあえず立ち上がったけれど、どうしていいかわからずオロオロしていた。するとおりんさんが、そっと私の耳元で言われた。


 「お里様は、このままお仲様と一緒に部屋へ戻って来てください。私は、一足先に部屋で準備をしてまいります。心配いりませんよ」 そう言ったかと思うと、私が質問する間もなくおりんさんはあっという間にいなくなってしまった。


 (さすが忍者さんだわ。でも、このまま部屋に戻って大丈夫かしら? またこのことで、上様にご迷惑をおかけしないかしら? とりあえず、ここはおりんさんの言う通りにしましょう)


 「お仲様、それでは参りましょうか?」 私は、この先の展開を全く予想することが出来ないまま部屋へ向かうこととなった。お仲様の前に立ち、私は部屋までの廊下を歩いた。おりんさんもいなくなってしまい不安で胸がドキドキしているのを悟られないようにするのが精一杯だった。


 「何故、私がわざわざあなたの部屋なんかに・・・」 と後ろで不満を口にされていたが、余計なことを言ってはややこしくなるといけないので、聞こえないふりをしておくことにした。とても長く感じる廊下を歩いて部屋の前まで来ると、おりんさんが待っていてくれた。


 「お仲様お待ちしておりました。こちらでございます」 と言って、笑顔で部屋の方を案内された。お仲様は私を通り越して、部屋へ入られようとしたところで立ち止まられたので、私は何事かと思い、その後ろから部屋の中を覗いた。


 「!!! う・・・お夕の方様!」 私は驚いて声を上げてしまった。すると、お仲様が驚かれたように、私の方を振り返られた。お仲様はすぐにその場にお座りになり、頭を下げて自己紹介された。


 「初めてお目にかかります。お仲にございます」 私も隣に座り、頭を下げた。


 「お里のことが心配で様子を見に来られていたところ、お仲様がお夕の方様にお会いしたいとおっしゃていると、お鈴に聞きまして・・・お夕の方様が、特別にお仲様とならお会いしてもいいとのことでしたので、こちらの部屋まで来て頂きました」 隣に座られていた侍女さんがおっしゃった。


 (これはおぎんさんだわ! いつもと違って、低めの威厳のある話し方をされている)


 「それは、ありがたいことでございます」 私と初めてお会いした時とは全く違う態度でお仲様がおっしゃった。


 (きっと、上様の威厳が凄すぎるのだわ。私のときは、上からすごい圧力でしたもんね)


 「お夕の方様、ご心配なく。先ほども、お仲の方様のお部屋へお招き頂いて、お里様にお優しく助言を頂いていたところでございます」 嫌みたっぷりにおりんさんが言われた。それを受けてお夕の方様が、お仲様にニコッと笑われた。お仲様はその笑顔をみて、もう一度頭を下げられた。


 (さすが、上様だわ。でも、お二人はお会いされているのにバレてしまわないかしら)


 私は、上様に見とれていた。それに気付かれた上様が私の方を見てもう一度笑われた。私は慌てて頭を下げた。すると、おぎんさんが静かに話された。


 「お仲の方様、そこではあまりお話も出来ないでしょうから、中へ入られますか?」


 (これは、もう下がれということね)


 「いえ、私はこちらで失礼いたします。お夕の方様本日はお会いでき嬉しかったです。では」と言ってお仲様はサッと立ち上がられ、ご自分の部屋の方へと廊下を歩いていかれた。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

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