詰問
「さて、お仲様の件ですがどうしましょうか?」 急に真剣な顔でおりんさんが言われた。
(そうなんですよね・・・)
「宴席の際、しっかりと顔を合わされたのはお仲様だけですからね。もう一人のお方様とは、お話をする機会もありませんでしたし、あのときお里様は俯いておられることが多かったので大丈夫だと思うのですが・・・」 おりんさんが、考えながら言われた。
「そうですね。でも、適当に取り繕うだけでは後からまたややこしくなってしまうのではないかと思うので、ある程度は考えておかないといけませんね」 そう言いながら、二人でどうしたものかと思案した。
時間がきたのでお仲様のお部屋の前まで行き、座って挨拶をした。両膝は相変わらず痛かったけれど、おりんさんが膝にサポーターのように布を巻いてくださったので、だいぶマシだった。
「お里にございます」 そう言うと中から、侍女さんが襖を開けてくださった。
「どうぞ」 とお仲様が、あの目の奥は笑っていない笑顔で迎えてくださった。
「失礼いたします」 と一礼して部屋の中へ入った。そして、準備しておいてくださったのか、お仲様の前の座布団の所まで行き座った。待ち構えたように、お仲様が話始められた。
「ところで、あなたはお夕様なの? お里様なの?」 単刀直入に聞いてこられた。
「私は、お里でございます」
「そう、じゃあ宴席でお会いしたのはお夕様ということよね? でも、私がお会いしたのはあなただったわ。これはどういうことかしら?」
「はい・・・少々長くなりますが、ご説明させて頂いてもよろしいですか?」
「もちろんです」 お仲様は、ニヤッと笑って言われた。
「実は、上様がご訪問の際お夕の方様を同行されていたことがございまして、そのお付きで私も同行させて頂きました」
「その件なら知っているわ。上様が側室を同行なんて、初めてのことだったもの」
「はい。そこで、宴席を催される日にお夕の方様が体調を崩されまして・・・お夕の方様の命を受けて、私が参加させて頂くことになったのでございます」
「それで?」 お仲様は先を促された。
「そのときに、ご隠居様が宴席に参加されることとなり、私、お里がお夕の方様としてご隠居様にお会いすることとなりました。江戸に戻ってから、次の宴席にもお夕の方様をとご隠居様がお清様に望まれましたので、致し方なく私がもう一度お夕の方様の姿にならせて頂きあの宴席に参加させて頂いた次第でございます」 私は、おりんさんと打ち合わせした通りに話をした。
「へえーー よく出来た話ねえ」 お仲様は、明らかに何か疑っておられるようだった。
「???」(おりんさんにアドバイスを頂いて、私も良くできたと思っていますが・・・)
「私なりに考えたんだけど、言ってもいいかしら?」
「はい・・・」 私はとりあえず聞いてみようと思った。でも、内心ドキドキしていた。
「お夕の方様って実は、あなたなんじゃないかしら? だって、よく考えてみると御膳所勤めのあなたが京都へ侍女として同行するとか、宴席に参加するとかおかしいじゃない? それに、私がお会いしたお夕の方様はあなただったということは、結局私はお夕の方様にお会いしたことはないでしょ? 本当は、お夕の方様を隠れ蓑にして、実はあなたがお夕の方様なんじゃないかと思っているの」 お仲様は確信したような口調で言われた。私は咄嗟に言葉が出なかった。
(!!! 所々違うけれど、所々合っている・・・)
「ね! 合っているから黙っているんでしょう?」 ちょっと、どや顔でお仲様が言われた。
「いえ、お夕の方様は本当にいらっしゃいます。私は、雑用係としてお夕の方様には大変よくして頂き、今回もこのように見習いのお勉強に参加させて頂くこととなりました」
「じゃあ、お夕の方様は本当にいらっしゃるということよね?」
「はい。もちろんでございます」
「私も一度ご挨拶させて頂きたいわ。こちらへお呼びして頂けないかしら?」
「それは・・・」
「ほら、出来ないでしょう? 嘘をついていると、早く認めなさいよ!」 お仲様が、ヒステリックな声を上げられた。
「出来ないのなら、このことを他の側室方にお話ししてもいいのよ! 他の側室方が私とあなたのどちらを信用されるかしら?」
(それはマズイ。 また上様たちにご迷惑をおかけすることになる)
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