とある痴話喧嘩の一幕
ちらっと出ていたベルとピートのお話。
R15はこの話がギリギリ引っ掛かるかもなと思ったので付けてありました。
ヤンデレっぽいかもしれません。
「悪かったって!」
「またそのセリフ。芸がありませんわよ?」
目の前で俺に微笑みかけているのは、俺の婚約者であるベルティーナだ。
怖い。はっきり言ってめちゃくちゃ怖い。
ベルティーナ基ルティは可愛い。それに真面目で優等生だ。
だけど、他の子に興味が湧く時だってある。
確かに、食事に誘ったり、一緒に踊ったり、……キス、したりはしたけれど。でも、最後の一線は超えていない。別にそれくらいはいいじゃないか。
「……今、『浮気くらいいいじゃないか』とか思いませんでした?」
「思ってません本気で思ってませんすみませんでした!」
「いや、そういうつもりだったんじゃないんだって!」
「なら、どういうつもりだったと?」
「それは……」
ほら、また。
私の婚約者は浮気者だ。
確かにピートは顔立ちも整っているし、女の子を褒めるのも上手い。
だから、すごくモテる。
それに、彼が浮気相手に選ぶのは、大人しくて、あまり成績が良くなくて、家柄のいい人ばかり。
私とは、正反対の。
――女が優秀過ぎるのは良くない、と咎められた事もあった。
「ルティは真面目過ぎるんだよ」
「……ええ、そうかもしれませんわね」
気恥ずかしくて絶対に言える気がしないけれど。
「ああ、この間の課題、どうなりましたの?」
「ふふ、次の試験も私が勝ってみせます」
ルティだって、俺とは正反対の男と、楽しそうに話している癖に。
でも――
「またですの、ピート!」
「私という婚約者がありながら……」
ルティに怒られてる間は、ルティは俺の事だけを見てくれる。……だから、やめられないんだよなぁ……
「もう、聞いていますの、ピート!」
「聞いてる聞いてる!」
「もう、次こそは許しませんから!」
いつも彼女はそう言うけれど、なんだかんだいって許してくれる。
だから、願わくば、その「次」とやらが来ませんように。
「ルティは真面目過ぎる」
「ルティは固すぎる」
いつもいつも、そう言われる。
彼の好みが私とは真逆の女の子である事は分かっている。
分かっているけど、諦められない。
色々言うけれど、やっぱり私はピートが好きだから。
彼の為を思えば、婚約を破棄するのが正解かもしれないけれど、私は言うのだ。
「もう、次こそは許しませんから!私の婚約者である以上は、きちんと責任を取ってくださいませ!」