13:訓練2
『おい起きろ。おーい』
メリアリオの声が響く。
「わかったわかった、起きるって」
まだ眠たいが、これ以上は寝させてくれそうにもないので、仕方なく起きる。
「おはようメリアリオ」
『ああ、おはようカケル』
こいつが俺の元に来てから数日、俺は毎日訓練に励んでいた。明るい間は先頭訓練。暗くなったら新たな魔法などとにかくたくさんの事をした。習った魔法は翌日の訓練で使ったりして身に着けている。
『ほら、さっさと訓練しに行くぞ』
のんびりと着替えている俺にしびれをきらしたのかメリアリオが急かしてくる。
「待て待て、朝飯食ってからな」
あっちの世界でも睡眠時間を削って遊んでいたのでそんなにきつくはない。というか慣れた。人間慣れるまでがシンドイというがたしかにそうだ。一度慣れてしまえば結構楽になる。
自室を出て食堂に行く。
「すいませ〜ん、朝飯下さい」
厨房に声をかけるとすぐに返事が返ってくる。
「はいよ、ちょっと待ってろ」
待つこと数分、うまそうな料理が出てくる。
「はい召し上がれ、勇者さま」
この城にいる人にはほとんどが俺が勇者だということを知っている。だが、そんなに勇者だからといって特別な待遇があるわけではない。魔族というのは階級にあまりうるさくないのだろう。
「ご馳走さま」
「おう、相変わらずはえ~な。頑張れよ」
「ハイハイ」
片手を上げて答えながら食堂を出る。次に向かうのは訓練場だ。この時間ならエルダラムさんは剣を振っているはずだ。
「居たいた」
さっそく剣を振っている姿をみて声をかける。
「おはようございます」
「う~い、おはよう」
剣を振るのをやめてこちらを向く。けっこう本気で振ってそうだったに大して息を見出してないな。この人もだいぶ化物だ。
「じゃあ、いつもどおり素振りしてからその辺の奴に打ちあってもらえ」
「へ~い」
これがここ最近の俺の日課だ。本物の武器は当たり前だが金属でできている。つまり、竹刀とか木刀とかとは比べ物にならないぐらい重い。俺にとっては素振りだけでだいぶキツイのだ。
「よし、メリアリオ変形しろ」
『はいよ』
※※※※※※
「こんなもんかな、勇者さま」
「……強過ぎ」
「ハッハッハ!修行不足ですな。まあ頑張れよ」
じゃあな、と去っていくおっさん。あの人はべつに魔王軍の将軍というわけではない。普通の兵士だ。現状の俺はそれにすら勝てない。要するに勇者は特に強いわけではないのだ。特に俺は。
「…はぁ」
『どうした?』
ため息を漏らす俺に不思議そうに声をかけるメリアリオ。
…悩みの原因に相談ってのもな。
「何でもない」
そう言って図書館に向かう。まだ俺の一日は終わらない。
後数話訓練編です。




