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異世界に転生しちゃったので週刊少年ジャンプを作ってみた  作者: 羽越世雌
第2章:海を越える『ジャンプ』と世代交代
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第16話:検閲官の誤算、街を染める笑いのウイルス

地下出版網「アンダーグラウンド・ジャンプ」によって、帝国の首都は水面下でかつてない熱狂に包まれていた。真面目な顔をした将校たちが配る偽装の教訓書を通じて、毎週のように「笑い」と「感動」という名のウイルスが、人々の乾ききった心へ静かに、しかし確実に感染していったのだ。


異変を察知したのは、帝国の最高権力者である皇帝の懐刀、最高検閲官バルドだった。

彼は冷徹な眼差しで、机の上に山積みにされた押収品――あの二重底の教訓書を見下ろしていた。


「……愚か者どもが。たかが落書きの束ごときに、民の心が揺らぐなどと」


バルドはすぐさま、首都全域に厳戒態勢を敷いた。彼は、地下の反逆者どもを一網打尽にするため、そして民衆の恐怖心を再び植え付けるために、一つの残忍な作戦を実行に移した。

それは、過去にジャンプを隠し持っていたとして逮捕された数名の若者たちを、中央広場に引きずり出し、「思想矯正の公開尋問」を行うという見せしめだった。


「これより、国家の秩序を乱す反逆者たちの処罰を行う! 隠し持っていたあの忌まわしき『冊子』を焼き払い、その愚行を全市民の前で懺悔させよ!」


処刑台の壇上で、バルドが冷酷に命じる。

広場を囲むように集まった市民たちは、恐怖に顔を引きつらせ、うつむいたまま一言も発することができなかった。監視の魔導ドローンが上空を旋回し、少しでもざわめけば即座に逮捕される緊迫した空気が漂う。


その様子を、地下水路の通気口から、アルスとルナ、そしてレイたちが息を潜めて見つめていた。

「くそっ……あんな公開処刑で、またみんなの心を縛る気だ!」アルスが歯を噛み締め、剣に手をかける。

「ダメよ、アルス。あそこで私たちが飛び出したら、集まった市民まで巻き添えになるわ」ルナが必死に制止する。


絶望的な沈黙が広場を支配し、バルドがジャンプの束に魔法の炎を近づけようとした、その瞬間だった。


――ひらり。


どこからともなく、一冊の薄い紙切れが、風に乗って広場の中心へと舞い降りた。

それは、バルドの足元にヒラリと落ちた。見れば、それはまさに今、彼が焼き払おうとしていた『アンダーグラウンド・ジャンプ』の最新号のワンシーンだった。そこには、秘密警察の長官がバナナの皮で派手にひっくり返り、周囲の部下たちがマヌケな顔で慌てふためく、最高にシュールなギャグシーンが描かれていた。


バルドは眉をひそめ、その紙切れを踏みにじろうとした。

だが、その時――。


広場の隅に立っていた一人の若い男が、こらえきれずに、小さく「ぷっ」と吹き出したのだ。


静まり返った広場の中で、その笑い声は驚くほどに響き渡った。バルドがギロリと睨みつける。しかし、それをきっかけにするかのように、別の場所で、また別の市民が、肩を震わせてクスクスと笑い始めた。


「なっ……何を笑っている! 貴様ら、処刑を見ているのがわからないのか!」バルドが激昂して叫ぶ。


だが、もう止まらなかった。

一人、二人と笑い声が伝播し、やがてそれは広場全体を包み込む「大きなうねり」へと変わっていった。それは恐怖への怯えでも、反逆の雄叫びでもない。長年、冷徹な統制と検閲によって抑えつけられていた人間たちが、心の底から理不尽を笑い飛ばす、純粋な「笑いのウイルス」だった。


「ば、馬鹿な……! なぜ笑うのだ! これは国家への反逆だぞ!」

バルドは青ざめ、慌てて魔導ドローンに命じようとしたが、ドローンの映像受信モニターは、市民たちが一斉に掲げた無数のジャンプのページから放たれる光の反射で、完全にショートしていた。


いかなる強大な権力も、何万もの人間が同時に「おかしいものは、おかしい」と心から笑い、心を一つにしたエネルギーの前には、ただの無力なハリボテに過ぎなかった。


その光景を遠くの屋根の上から見つめながら、アルスとルナは思わず笑みをこぼした。

「……すげえ。銃も剣も使わねえで、あいつらはただ『笑い』で帝国軍を圧倒しやがった」

「ええ……これが、ツヨシさんが教えてくれた、物語の本当の強さよ」


壇上で、バルドは手にしていた火の魔法を消し忘れたまま、呆然と立ち尽くしていた。燃やそうとしたはずの紙の束から放たれる熱量が、彼の冷え切った心を、容赦なく溶かしていく。


帝国全土を揺るがす「笑いのウイルス」の感染は、もはや誰にも止めることはできなかった。鉄の掟は内側からひび割れ、新しい時代の夜明けが、静かに、しかし確実に近づいていた。

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