吸血鬼の正体
「トラッシュさん夜になると森に行く人が住んでいる場所は分かりますか?」
「わかるにはわかるがもしかして吸血鬼に会いに行くのか?」
「昔は日が出ていても外にいたのでしょう。まさか、吸血鬼になる薬があるとでも言うのですか?」
「いや、カインは吸血鬼になる呪いをかけられたんじゃねぇのか。」
呆れたようにイツキは
「呪いですか?なぜ」
「あいつは、変わったやつでな神様を信じてねぇんだ。だからバチが当たったんだろ。」
この時代に珍しい。みんな自分たちで理解できない事を全て神ぐるみで解決しようとするのに
「たしかにそうかもしれませんね。ただ僕の予想が正しければその迷信じみた考えを改めるかもしれませんね。」
3人は村の離れにある一軒家に着いた。
イツキは、扉をノックする。
1回では出なかったので出るまでノックした。
イラついたような口調だが、少し力がない声で
「何回も叩か無くてもわかっている。」
と扉越しから聞こえた。
「事情があって扉は開けれない。要件はなんだ。」
「最近この村に来たイツキと言います。最近困っていることはありませんか。例えば、日に当たると皮膚がただれるとか。ずっと貧血気味だとか」
その人に起こっていることが1から10までわかっている様子だ。
「なぜ、それを知っている。そうだ私は呪いにかかってしまったんだ。これまで神や呪いなどという戯言は信じていなかった。どれも自分でどうにかしないと行けない。神にすがっても無駄だと知っていたからだ。でも、この病気は自分ではどうすることも出来ない。」
誰でも自分で対象のできない事を神や呪いのせいにする人間も多い。現代でもそうだ余命宣告を受け普段信じていなかった神を急に信じる人もいる。都合のいい生き物だ。
「僕は薬師です。中に入れて貰えませんか?」
……ガチャ
鍵が開く音がした。
「できるだけ日光が入らないように入れ」
青白い顔。
光を避けるように、部屋の奥へと下がる。
八重歯が突き出ている。
痩せ型で身長が高い。
ふらふらと歩く様は吸血鬼を彷彿とさせる。
「ここまで、吸血鬼の伝承に当てはまる人がこの病気になるとは」
「ところで私はなんの病気なんだ。」
「そうですね。でも、その前に少し質問してもいいですか。牛から血を吸い取ったのはあなたですか?」
「そうだ、私が取った。貧血が酷くてな。昔この村に来た医師が言っていたんだ。牛の血は鉄分が多く貧血に効くと」
昔来た医師は相当優秀な人間のようだ。韓国では昔からスープにして飲まれている。
「そんなことでは治りませんがね。あなたの今の病気はポルフィリン症です。」
「ぽ…ポルなんだって」
上手く呂律が回らない様子でトラッシュさんが言う。
「ポルフィリン症です。」
「病気……?」
「僕がいた世界でも珍しい病気です。日光に当たると皮膚が傷つくんですよ。」
言うか悩んでからイツキは
「指定難病とされる病気でした。つまり治すことが出来ないと言うことです。」
「つまり私の寿命はもう短くないと言うことか」
「そういう訳ではありません。ポルフィリン症自体は直接寿命を削ることはありません。それもあなたは皮膚性ポルフィリン症なので肝臓がんの心配も要りません。」
「つまり最後まで寿命を全うできるんだな。」
「はい、ですがもう日が出ている時間は、外を歩くことはほぼむりかと」
「そうか、もう朝日を見ることは叶わないのか」
と悲しそうに言う。
「そうそう、日光に当たらないことによってビタミンDが不足します。つまり必要な栄養を取れないんですよ。」
「それがないとどうなるんだ?」
「筋肉や骨が脆くなり、痛みを感じるようになります。赤ちゃんをつれて散歩しないと行けないのもこれが理由です。」
「それは、どう予防すればいいのですか」
「脂の乗った鯖や鮭、卵黄、レバー、牛乳などでビタミンDを取ることができます。なので積極的にこの食材をとってください」
「なら、村の方から毎日食料を届けるようにするよ。」
とトラッシュさんが言う
「いいのですか。私は神を信じていない異端思想の人間なのに」
「神さんは、みんなで協力して生きていけって言ってんだ。助け合うのが同義だろ」
喜びを隠しきれないようにカインは涙を流した。
「ありがとう、ありがとう。」
エマとイツキは家を出て屋敷へと向かった。
「この村の人達は優しいな。人を助けることを苦とは思わない。僕が前までいた世界は、誰かがやってくれると言う人が多かった。」
「この村は、私いやヴェルナー家の誇りなの」
自慢気に微笑みながら言う。
「これで吸血鬼事件は一件落着だな。」
そう言いながら、イツキは小さく息をついた。
怪異ね。そんなものみんな理屈を知らないから生まれるんだ。
全部人間の作り出した想像物だ。




