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第十七話

ふと、目を覚ます。

その場所は、いつもおれが目覚めるベッド。

「夢、だったのか?」

その疑問に答えてくれる人はいない。

けれど、身体はどこも問題なく動く。

ということはつまり、夢だったのだろう。

そして全身には、大量の汗。その量は、滝汗といって差し支えないくらいの量だ。

おれにはそれがまるで、さっきまで浸かっていた名前も知らない湖の水のように思えた。

吐き気はしたものの、吐き出すものは胃に残ってないようで、何かを吐くことはなかった。

吐きたいのに吐けない。

それも案外辛いものなのだな、と思う。

余裕が出来て周りを見ると、朝方の5時。

起きる時間はいつもと30分程度しか変わらないのにこんな目覚めかよ、しかもよりによって早い方向。

遅いんなら、学校も休めたかもしれなかったのに。

どうしても、休んでしまいたい、と思う。

それか遅刻とか早退でもいい。遅刻なら行き、早退なら帰りは小夜と顔を合わせずに済むから。

今小夜の顔を見たら、吐き気が襲いかかってきそうだな。

こんなことを考えている時でも、詩的な表現が頭をよぎるおれは本の読みすぎか、あるいは今それを考えるほどの余裕ができただけか。

最近は滅多に本を読まなくなったから、恐らく後者だろう。

まぁ、どちらでもいいのだけれど。

どちらにせよ、少しは余裕が出来たのは事実だ。

少し外に出ようかな、という気になる。

けれど、今外に出ない方が体調悪い人みたいに見えるかな、とも。

そして、おれは外に出ることに決めた。

別に体調が悪いなら悪いと言えばいいし、最悪外に出て悪くなったとでも言えばいいだろう。

そうして、軽く準備をした所で、姉さんと遭遇した。

「あんた、悪夢でも見た?」

姉さん。今日のおれに最初に言うことがそれかよ。

そう心の中で悪態をつきつつも、事実だった。

しばらくの間、おれら姉弟に流れる沈黙。

やがて、姉さんはおれの沈黙を貫く態度から図星だと考えたのか、話を進める。

「どんな夢だったん?夢占いするから教えて」

出た!姉さんの十八番、占い。

そう言ってしまいたかったが、そんなことを言えるほどの余裕はないので、

「おれと小夜が心中する夢」

と、簡素な解答を返した。

言い終わった瞬間から、スマホを開き、何かを調べる姉さん。

どうせ夢占い?とやらのサイトだろう。

「どこでどうやって心中した?飛び降りとか?」

3度目の質問。その占いの結果はおれも気になるので、おれは素直に答える。

「正解、岬から湖に飛び降りてた。」

しばらく、時計の秒針が動く音と、姉さんがスマホのキーボードをタップする音だけが、広いリビングに響く。

3分くらい経っただろうか。姉が話し出す。

「結果。恋人と心中する夢は相手への関係性を見直すべき、だってさ。試してみれば?」

「いやおれら恋人じゃねーし。告られはしたけど、」

自分でもびっくりの返事の速さ。

姉さんも少しびっくりしていた。

「え?返事はっや。てか付き合ってないの?まじで言ってる?告られたんでしょ?告られたんなら付き合っちゃいなよ。めっちゃお似合い。」

今度はおれが驚くほどの返事の早口。うちはせっかち一家なのだろうか。

お似合いとか、そういうのはよくわかんねーけど、おれは小夜と付き合うのは面倒だし嫌だ。

関係が深くなるのも怖いしな。

「おれは小夜と離れてーんだよ。小夜の夢の出現頻度も体調悪くなる頻度も増えたしさぁ。」

今日も吐き気したし、とおれは続ける。

「えー?もったいない。でも離れたいなら振っちゃえばいいのに。なんで振らないの?」

姉さんはまだ、小夜の闇を知らないらしい。

まあそりゃそうか。小夜が巧妙に隠してるもんな。

「怖いだろ。あいつ結構ヤンデレだぞ。もし振ったら、小夜に何されるかわかんねーし。た、例えば…」

例えば、という所で言葉が詰まってしまう。

姉は

「例えば?」

とオウム返しをした後、続きを急かしてくる。

想像もしたくないし言いたくないが、この可能性もあるのだ。

どうせ考えてしまうならいっそ吐き出してしまおう。

そう決意して、再びおれは話し出す。

「き、キスとか、されたら嫌じゃん…」

これが少女漫画のヒロインだったら可愛いと言われていたのだろう。

けれどおれは男だ。恋愛漫画の主人公やヒロインでもない。

可愛いだなんて言われるわけがない。そう高を括っていた。

「きゃー!この子初心(うぶ)すぎる!可愛い!」

どうやらフラグだったらしい。

「姉さん。おれ男。男に可愛いとか、この子ってのはちょっと、」

一応言ってはみるものの、暴走機関車は止まらない。

「待ってこの子まじ可愛すぎるこんな可愛い子が私の弟でいいんですか神様まじありがとうございますてかまじでこれだけでご飯3杯くらいいけるわ」

普段少食の姉さんがご飯3杯とか食べられるわけないだろ、と思いつつも、やっと止まった予定の暴走機関車に目を向ける。

「あぁでも星にも小夜ちゃんにも幸せになってほしいしでもふたりの意見は対立だし…どうしたらいいんだろ?あ、そーだ星、外行くなら行ってきな」

しれっと言うその優しさはいいが、止まらないのはちょっと、いやだいぶ困る。

「いや、いーわ。なんかもう疲れた、」

姉さんのせいでな、という言葉(ほんね)は言わずに。

「あ、そう。とにかく、人間関係…特に小夜ちゃんには気をつけなさいよ。」

それでも、姉さんがおれを心配してくれているのは事実なので、一応お礼をしておく。

「わかった。ありがとな、姉さん」

「どういたしまして」

そうして姉さんとの会話を終えたおれは、自室に戻った。

渾身の力作といえる話が出来ました。

個人的にお姉さんみたいなキャラめちゃくちゃ好き。

本当は今回だけの予定だったけどまた出番作ろうかな…?

ちなみに今回文字数2000超えです。

見てくれた方毎度ありがとうございますっ

これからも頑張るのでこの物語が終わるまでしばしお付き合いくださいっ

ではまた〜!

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