第十三話
『私の、恋人になって?』
その言葉が、耳にこびりついて離れないままでいる。
その場では保留という返事を返し、小夜のペースから逃げ出したが、いずれYESかNOのどちらかを言わなければならない。
小夜は、クラスメイトが惚れたくなる気持ちもわかるほどの美貌ではあるが、同時に性格は今も子供っぽい性格だ。更に、今以上に束縛が強くなるだとか、我儘に巻き込まれるといったデメリットも少なくない。
代わりにある、数少ない利点は、人に迷惑をかける可能性が減ること、そしてかけそうになったときに止めやすくなることくらいだ。
どうすべきか悩みながら終えることになった一日。
翌日、翌々日と合計で告白されてから、そして悩み始めて3日目となった今日、夜半と二人でゲームをプレイする約束をしていた。
日課ならぬ週課といった所だろう。
まだ空が茜色と言える色合いである内から始めるのは珍しい。今日は小夜からの告白のことを相談したかったから、夕食前・夕食後の二回に分けた。4〜5時台は小中学生も多く、プレイヤーもそこまで強くないから、相談しながらでも戦績を落とすことはないだろう、と踏んだため、今の時間から集合、そして相談をするということになったのだ。
「でな?さ…ユリと今気まずいんだよ。」
思わず小夜と言ってしまいそうになるが、すんでの所で留まる。
まぁ、言った所で夜半なら秘密にしていてくれるだろうが。
それでも、他人の個人情報だから、できる限り言わないようにはしている。
建前を抜きにした一番の理由は、小夜に気づかれた時の小夜の要求が怖いという子供じみた思いであることは、胸の奥に秘めたまま。
「…それは、大変だな」
経験者の言葉は重いと言うが、もし本当にそうだとしたら夜半は経験者なのだろうか。
それくらい、夜半の言葉は重たく聞こえた。
「リアルで会うのが余計に、な」
リアルだけ、ネットだけのどちらかならまだ避けようはある。けれど、おれとユリはどちらでも関わりがあるから、どうしても避けづらい。
「そういえば、ユリがいつかにセイとは幼馴染なんだ〜って言ってたよな。あれ設定じゃなくて実話なんだな。」
「言ってなかったか?実話だよ。アイツはおれの幼馴染の中で1番幼くて、それでいて唯一の女の子だったから昔から姫扱いだよ。」
おかげで他の奴らが構わなくなった今は姫のわがままが全部おれに降り注いでくる。いい迷惑だよ。
そう言おうとするが、わざわざ口に出して言わなくともいいだろう、と思い直す。
いくら心根から優しい夜半でも、暗い身の上話は聞きたくないだろうから。
「お疲れ様。無理はしすぎんなよ。」
こういう時に、『無理するな』ではなく『無理しすぎるな』という所が、つくづく優しいと思う。
優しい夜半に甘えすぎるのが良くないことも理解しているのだが、ついつい甘えてしまう。
そして、ゲームはそこまで強くなく、メンタルについては弱すぎるほど弱いおれと仲良くしてくれる夜半だからこそ、親友と呼べるくらい仲良くなれたのだろうな、とも思う。
「ごめんな、こんなくだんねぇこと話して。」
本心だった。自分でもこんなことで悩むなんて、と思っている。それでも、このことに対するアドバイスがほしかった。
そういうアドバイスは、夜半が適任だと思った。だからこそ、夜半にだけこのことを話した。
「くだらなくとも、それでセイが悩んでいたのは事実だろう?いいんだよ、俺達親友だろ?いつでも頼ってくれよ」
その言葉には、どこか影が差しているように感じた。
その違和感は無視して、夜半に返答を返す。
「ありがとな、親友!」
「どういたしまして、でもお礼より戦績を上げてくれた方が俺は嬉しいかな」
その後も、おれが夕食に呼ばれるまで、部屋は明るい雰囲気に包まれていた。
初の一話のみの文字数の1000文字越え。
そして総合での9000文字越え。
次あたりで目標(悲願を多分に含む)の10000文字も達成できそうです。
そして見てくれてありがとうございます!
12月までに終わらせたいこの物語に少々お付き合いくださいっ!




