不倫旅行!
最初にその存在に気が付いたのはこまちちゃんだった
トイレの帰り、還暦たちと冴えない若者の集団が自分の戻る所であるという事実に
「うへぇ」と思ったりしたその少し後ろに、
いかにも
“夫に出張と嘘をつかれて、不倫旅行の浮気調査に来た妻”
みたいなオンナがいたのだ!
慣れないUV帽子を被り(日焼けが怖くて買ったはいいけど面倒くさくてかぶらなくなった)、某コ◯ナ以来人権を得た大きめのマスクを付け(マスクを大袈裟だと言われなくなって便利)、そろそろ目の霞が気になって新調したブルーライトカットメガネ(賛否両論?)で変装している
スマホを不自然に構え、風景を撮るフリをして多分“不倫旦那と愛人オンナ”を撮っている
こまちちゃんは(ははーん)と思った
「梨乃さんの三文小説もぉ、意外と的を得てるんじゃないかって思うんですよねぇ」
*前回参照
美術館のロビー、絵画がある部屋ではない途中の休憩所でこまちちゃんはこのネタを嬉々として語り始めた
「やっぱぁ、不倫カップルって熱海は多いんですねぇ」
心なしか顔を赤らめる売れない漫画家さん
不倫旅行…ということはですよ、
ホテルに泊まって…多分和室で…温泉入ってご飯食べたら…布団で…
と、想像しているからだ
ついでにこまちちゃんの浴衣姿まで想像してさらに顔を赤らめた
「2人っきりなら良かったのに…!」
と心から思ったが、そうなったらなったで
恥ずかしすぎてシヌ!!!
ような気がする売れない漫画家さんなのだった
梨乃さんは「やっぱりねー!
あの2人とホテル一緒だといいなぁ
今晩は面白くなるんじゃない⁈」
とこの話題に食いついてきたが、
じーさん連中は「ふーん」ぐらいの反応だった
聞いたところで自分にはなんの旨味もないっていうことが分かっているんだろう
ところで、みんなここまで来たこの場でやっと気が付いたのだが、
そんなに美術に興味がなかった
誰1人まともに鑑賞出来る人間がいない…
「国宝」とか「重要文化財」とか「歌川広重」とか書いていると、
一瞬
「うぉー」「コレ教科書で見たことある…ような気がする!」
と盛り上がるのだが、それ以上の感想は出てこなかった
「芸術ってさ、まあ見る人によるって感じだよね」
などと、上野あたりの美術館で葛飾北斎展をたまたま見たことがある半蔵さんが、
深いのだか浅いのだか分からないことを呟いたりして、
みんなも「まあねぇ」など相槌を打ちもするが、
誰もが「早く温泉に浸かってバイキングで死ぬほど食べたい、そして夜は夜鳴きそばを堪能し、からの温泉リピ、早朝も温泉リピリピ」
と思っているのだった
「そろそろお茶にしようか?
残りの展示品は道すがら見るくらいでいいじゃないか」
三郎さん、IQ低めのナイスな提案である
もちろん反対する者はいない
美術館を出たところにオシャレなカフェがあるのだが、ちょうど3時前後ということもあってどこも満員御礼
ドアの前に予約受付の紙が置いてあって、今からだと10番目…入れるまでに1時間はかかりそうである
三郎さんが「うーん、どうする?」
とみんなを見回した瞬間、
この山から見下ろした海の方で爆発音と共に煙が上がった!
「スキーマーか⁈」
しばらく存在感が薄かった謎のイケおじが叫ぶ!




