第81話 ジェイシス様宅へ訪問
スタンフォート公爵邸は調度のとれた品々が置かれている。落ち着いた雰囲気のある室内。エスコートされ談話室に通された。
「ありがとうございます、ジェイシス様」
ソファに腰を下ろすとすぐ飲み物とお菓子類がたくさん出てきた。これを私が全部食べていいの?ジェイシス様のご両親が私の前に座り、隣がジェイシス様という配置。ニコリとするとご両親。
「アイリちゃん、どうぞ、うちの料理長がアイリちゃんに食べてもらうために頑張ったのよ。ダメならダメと言ってね.それが料理長の成長に繋がるからね」
料理長が作ったもののダメ出しなんて出来ませんよ。
「ありがとうございます。とても美味しそうです。何から食べようか迷ってしまいます」
そこにジェイシス様が一つクッキーをとって、私の口の方へ差し出した。
「これは料理長が私のために作ってくれたクッキーなのだ。甘いものはあまり食べないがこのクッキーは食べられるのだ。甘さ控えめだから、アイリ嬢には甘さが物足りないかもしれないが、どうぞ」
どうぞ?こ、これは口を開けないといけない状況だよね?前に座っているご両親たちはびっくりした顔をしていたが、その後ニヤニヤしていた。マーガレット様は扇子を広げて肩を震わせているわね。
ジェイシス様の顔を見たが、食べて欲しそうな目をしていた。しょうがない、口を開けるかって口をどのくらい開ければいいの?大口?おちょぼ口?一口?どうする?どうするの?
えいっ、口を開けてクッキーを食べた。少しジェイシス様の指に口が当たってしまった。
ジェイシス様が真っ赤な顔をしていた。甘い空気なのか?
「クッキー美味しいです。サクサクホロホロっと、この味は?アーモンド?アーモンドプードルを使っているの?美味しい。料理長を紹介してください。このアーモンドどこで買うのですか?」
「アイリ嬢、美味しい?そうか、このアーモンドはうちの領地で採れているものだ。それを使用してこのクッキーを作っているのだよ。はい、どうぞ」
またもやクッキーを口の方へ、食べるしかない。もう一口でいいわよね。
あっ、また指食べちゃったけど、まぁいいわよね。
「あなた達、イチャイチャするのは後にしなさい。まずは、アイリちゃんが作ってきたドレスを見せていただけるのかしら?」
別にイチャイチャしてないぞ。
「母上、別にイチャイチャしてません」
「そ、そうですわ。マーガレット様のドレス、この前、レンタルサービスにといただきましたが、あまりにも素晴らしい生地でしたので、リメイクしてみました。もしお気に召さなければ、レンタルサービスの方で使用しますが、見ていただきたいです」
マジックバックからドレスを出した。
「まぁ、あのデザイン的に古い?ドレスがこんなに洗練されたドレスに変わるなんて」
「たぶん,若い時?にお作りになったのですか?フリルとかゴテゴテしたものを取り除いたり、それらを別の形にして装飾品した。試着するためにマーガレット様と別部屋に行った。
「アイリちゃん、凄いわね。お直しと言っても別物よこれは」
「テッシー、いえ、テオドール様が作るドレスはすごいのです。私はこうした方がいいのでは?とかこれがいいとかアイデアを出すだけであとはテオドール様が魔法の手で作るので、わたしだけ凄いわけではないです。みんなの協力の賜物です。こっちがメレディス様のドレスです」
マーガレット様の侍女さんがテキパキと着付けをしていく。私はそれを見て足りないところや不要なところをマーガレット様の意見を聞きながら変えていく。髪型は盛り盛りにアップしてみました。ゴージャス。侍女さん、メイドさん達が感嘆する。
「凄いわ。私あまり夜会は好きではないけど、アイリちゃん、今度ジェイシスと私達と一緒に夜会に出席してくれないかしら」
えー、夜会、私デビュタントに出たばかりなのですが。そんな魑魅魍魎の夜会なんて無理です無理。
「マーガレット様、まだデビュタントを終わったばかりで夜会は難しいかと思います」
「ここだけの話、私、いきなり夫の番となり、今まで公爵夫人として頑張ってきたの。でもね、元々子爵という低い爵位から公爵夫人になってしまったので、お茶会や夜会など苦痛だったのよ。娘と一緒の時は大丈夫だけど、主人と2人で出席の時は、主人が仕事の話で私から離れた時、1人で立ち回るのは大変だったわ。本当に苦痛なのよ。いまだに嫌味を言ってくる人はいるのよ、本当に困ってしまうわ」
マーガレット様は公爵夫人で高位なのに嫌味を言ってくるとは誰だ!ガツンと言わないとそう奴らはわからない。女は集団でいじめてくるからね。ムカついてきたぞ。ガツンと言ってやるって、あれ?私、夜会参加?ジェイシス様の番公認になってしまうのか?新聞に出たから番公認?あれ?これは誰に聞けばいいのかしら?でも、お二人で夜会に出ても、仕事関係でイーサン様がそちらに行ってしまうと、マーガレット様がお一人になってしまう。うーん、うーん、マーガレット様を守らなくては。よし!
「マーガレット様、一緒に夜会に出ましょう!私、マーガレット様をお守りします。若輩者ですが、それでもマーガレット様を守ります!」
笑われたが、頼もしいと言われてしまった。
「イーサン様とジェイシス様にお披露目しましょう」
「恥ずかしいわ」
手を引き、談話室に連れて行った。
イーサン様はそれはそれはマーガレット様を愛でていた。2人きりにさせた方がいいのか?ジェイシス様を見ると喜んでいたが、両親の熱々ぶりに目を逸らしていた。
「アイリちゃん、ありがとう。マーガレットが美しすぎる」
2人の密着度は赤面ものである。
「あなた、アイリちゃんがね、今度の夜会、一緒に行くことになったの。ジェイシス、あなたはアイリちゃんをエスコートしなさい」
「えっ、アイリ嬢、一緒に夜会に参加していただけるのですか?嬉しいです。ドレス送ってもいいですか?もちろんテオドール殿に頼むが」
ジェイシス様?一瞬機嫌が悪い雰囲気だったような?どうしたのだろう?でも、テッシーに作ってもらうなんて嬉しい。
「ジェイシス様、ドレスありがとうございます。テッシー、あ、いえ、テオドール様なら私の好みやサイズわかっているから大丈夫です。」
親子3人で、えっ?!という顔をした。なんか変なことを言ったかしら?テッシーは頼りになる人ですよ。
「テオドール様は頼りになる人です」
その後は、スーツと騎士服を見せていただいた。これまた上質な生地だわ。でも装飾を減らしたりすれば使えるわね。ありがたい、ありがたいけど買い取りしよう。
「ジェイシス様、ありがとうございます。とてもいい生地なので、いいのですか?買取させてください」
「いや、アイリ嬢、これは寄付だよ。買取はしなくていいんだよ。協力させてほしい」
「ありがとうございます。嬉しいです。でも、このスーツをきた時のジェイシス様はどんな学園生活をしていたのですか?」
「私は、王太子と同じ学年だったので側近として始終一緒にいましたね。生徒会に入り、普通に勉強をしていましたね。そして父上は公爵を私に譲り母上と一緒に領地で過ごしたいという希望もあり早いうちから公爵の仕事を引き継いでました。自分で言うのはどうかと思いますが、面白みのない学生時代でしたね。その時は王太子には番が見つかり、私は番との出会いが絶望的で、周りの女性達はこぞって私に近寄ってきていたので、面倒でした。気持ちは暗かったですね」
ジェイシス様は王太子殿下の側近かぁ。勉強も優秀だったのだろうなぁ。王太子殿下は番見つかって、自分が見つからないということで、性格が暗かった?厳しいジェイシス様を作り出したのかな。
「よくがんばりました、ジェイシス様。早くから公爵という仕事を継いで大変でしたね。本当によく頑張りました。これから楽しめばいいのですよ」
私は、ジェイシス様の頭を抱きしめて、いい子いい子してあげました。よしよし、よく頑張ったねという意味を込めて。




