りんけーじ92 ローリィが…
りんけーじ92 ローリィが…
茫漠と広がる暗黒の闇の中、ぽつぽつと、幾つかの弱々しい光の玉が、ゆっくりと沈んで行く。
「な、なんかキリがない感じね」鈴乃は杖を下に向かってかざしてみたが、その輝きはまるで、得体のしれない黒い怪物に飲み込まれて行く様だった。
「底はまだまだっぽ、ゆっくり降りて行くっぽ」ローリィは、振り返り光る尾びれをゆらゆらと振った。
「な、何か怖い」あかねは本能的に闇に対する恐れを感じ、背中がゾクゾクとした。
「ううう…」俺にしがみ付くヴァールの体から震えが伝わってくる。
ヴァールを見ると、眼を閉じ、体を一層発光させようとしている様だった。
「ふ、ふ、ふ、み、みんな怖がりじゃのう、われが、いるから大丈夫じゃ!」凜は、ぽんと胸を叩いた。
その時、底の方から、ぼこぼこと泡が上がってきた。
「ひいい…」その泡が凜の顔を気味悪く撫でて行くと、一気にカラ元気が消え失せ、えるの体に顔を埋た。
「こんなに深い海の中は、わたしも、まったく未知の世界です」珍しく弱々しいえるの声が伝わってきた。
ローリィは、ぼうっと光ながら、ゆっくりと先を行った。
「俺たちはこの暗闇の中で何てちっぽけな存在なんだろう」辺りを見回すと、そんな考えがふっと頭の中に浮かんできた。
「!」しばらく、降下していくと、前を行くローリィが急に、止まった。
「どうしたの、ローリィ?」鈴乃がローリィに尋ねた。
「しっ」ローリィは光る両手を広げた。
耳を澄ませ、潮の匂いをクンクンと嗅いで何かに警戒している様だった。
「何かが、近づいて来ているのだろうか?」ローリィの様子を見て、みんなに緊張感が走った。
「左から!」ローリィに鼻を向けた。
「みんな、気を付けるっぽ!あいつが来たっぽ!」突然ローリィが叫んだ。
「あああ」急に激しい衝撃と共に巨大なえるの体が軽々と右に吹き飛ばされた。
「きゃあぁぁ」えるに乗っていた俺たちも、えるから、引きはがされた。
「み、みんな、大丈夫っぽ!」ローリィが、みんなに声を掛けた。
「くっ、何なのよ!」水中で態勢を立て直すと、鈴乃は杖で辺りを照らした。
光の先に、邪悪な牙が覗く大きな口と不気味に光る鋭い赤い目が照らされた。
「あいつだっぽ!リヴァイアサンだっぽ!!おらが引き付けるからみんな逃げるっぽ!」ローリィはリヴァイアサンに猛然と突進して行くと、体当たりした。
しかし、リヴァイアサンに比べるとローリィはあまりにもちっぽけだった。
「ぐふっ」ローリィはリヴァイアサンの巨大な尾で、弾き飛ばされた。
「ウルサイヤツダ」リヴァイアサンは避けた口を開けてローリィの方に向かって行った。
「ローリィ!!」凜の悲鳴が響き渡った。
次の瞬間リヴァイアサンはローリィを飲み込んだ。




