りんけーじ75 えっ!?
りんけーじ75 えっ!?
何だか、わからない状態になっていたが、鈴乃と瞳が合った。
その瞬間、はっと鈴乃の目は大きく見開かれた。
そして、今自分の置かれている状況を瞬時に理解した様だった。
鈴乃の顔は見る見る真っ赤になり、わなわなと体が震えてきているのが判った。
瞳には涙が溢れてきた。
「いやぁああああーっ」鈴乃は俺から離れると同時に思いっきり平手打ちを俺の左頬に食らわした。
「ぐはぁっ!」俺は、空中を3回転し廊下に転がった。
「はあっ、はあっ、はあっ」鈴乃は、俯いて肩で呼吸していた。
「な、なにすんだよー、俺は今幼気な乙女だぞ!」俺は、頬っぺたを擦りながら叫んだ。
「あ、あんたねぇ...」鈴乃は震えながら俺を指差した。
「ど、どうしたんですかっ!?」我に返った、あかねと凜が状況を察して、近づいてきた。
「す、鈴乃が、俺に迫って、こう言う状況になったんだ!」俺は、必死に弁解した。
「嘘つかないで!」鈴乃は叫んだ。
「嘘じゃない!」俺は握りこぶしに力を込めた。
凜たちは状況を見守った。
「わ、わたしが、そ、そんな事する訳ないじゃない!」鈴乃は天を仰いで叫んだ。
「じ、じゃあ、今までの記憶は?」俺は鈴乃に尋ねた。
「い、今までの記憶…」鈴乃は、何故こうなったのか考えている様子だった。
―――確か、みんなでお風呂に行って、みんなで喋りながら体を洗って、それからお湯に浸かって、気持ちがいいお湯だなあと…
気持ちがいいお湯だなあと…、
気持ちがいいお湯だなあと…、
鈴乃は、「はっ」とした。
その後が思い出せない…
気が付いたらこんな事に…
「ねえ、凜、あかねちゃん、私たちお風呂に一緒に入ったわよね!?」鈴乃が凜たちに確認した。
「そうじゃ」凜が答えた。
「じゃあ、その後は?」鈴乃は続けて尋ねた。
「何を、聞いているのじゃ」凜は、当然の様に答えた。
「その後は、…」凜は言葉に詰まった。
「わたしたち、お湯に浸かったじゃないですか!」あかねもしょうがないなー、と言った感じで話し始めた。
「それから、…」あかねも口が動かなくなった。
鈴乃は頭を抱えた。
鈴乃は辺りを見回した。
すると、ヴァールが目に留まった。
「ヴァール、ねぇ、わ、わたしが、円正寺に…その、迫っていたって言うのは、本当!?」
鈴乃はヴァールにすがる様に聞いた。
「あ、あの、話しにくいんですが…」ヴァールは、もじもじした。
「本当です…」ヴァールは顔を赤らめ、口に手を当てて答えた。
「ぐはぁっ!」鈴乃はヴァールの言葉を耳にすると、這いつくばって項垂れた「そ、そんな…」。
鈴乃は、現実が受け入れられない様だった。
暫し時が流れた。
「な、何で、こんな事に」鈴乃の唇が動いた。
「ここのお湯の効能は、惚れ薬的な効果があるらしい」鈴乃がちょっと気の毒になり、俺はヴァールから聞いたことを伝えた。
ヴァールが続けた「本当です、ここのお湯を調べたのですが、もともと子宝の湯だそうで、人族にだけその様の効果があり、龍族や、幽霊のわたしにはその様な効果は無いみたいです。どうやら、その効果で円正寺さんの男の子の部分に反応してしまったみたいですね」
「こ、子宝の湯って」鈴乃は、頭を抱えた。
状況を把握した鈴乃はすっくと、立ち上がった「と、言うわけで、そうよ、これは事故よ!」
「わ、わたしも忘れるから、あんたも忘れなさい」鈴乃はようやく俺の方を見た。
何か俺一人が被害者みたいだな…、ちょっと腑に落ちないが、ここは、従う事にした。
「さあ、それじゃあもう寝ましょう」鈴乃は部屋に向かった。
風呂に入るか…、あっでも、俺が変な事になったら、それこそ血の雨が降るな、そうだ、体だけ洗おうっと、と、考えていると、鈴乃がくるっと振り返った。
「!?」俺は鈴乃の見た。
「キ、キスしたい時は、円正寺の方から言ってよね」と言うと、鈴乃は階段をとっとっと、駆けあがって行った。
「は、はぁ!?」俺は鼓動が速くなるのを感じた。




