駅と壁画
ブックマーク登録や評価が
力になっております。
感謝申し上げます。
ここのところ
体調を崩してしまい
なかなかお話が進まず
申し訳ありません。
皆さんも
病気には気をつけてください。
書きあがりましたので
よろしくお願いします。
俺は
船員達に荷物の積み下ろしを指示してから
セティとともに船を降り
石造りの埠頭を抜け
倉庫街にある駅で
次の便が来るのを待っていた。
駅は港湾へ出勤する者達が、降車するため少し混雑していたが
この時間、街へ行く者は少なく
ホームへ出ると人影は疎らだった。
ボラーの話を聞いてから
街に異変はないか周囲を観察していたのだが
駅周辺はいつもより警備兵が多いと感じる。
おそらく西方の事件を受け
密かに『長い黒髪の少女』
を探しているのだろう。
船を出る際、セティには
少し大きめの帽子を被らせ
髪の毛を隠しておく様に言っておいたのだが
正解だった。
警備兵に悟られないため、顔を背けたまま
その動きを追っていたのだが
袖をクイッと引っ張られる感じがしたので視線を向けると
セティが興奮した様子で声をかけて来た。
「あのっ、船長さん、ここって駅ですよね? 」
「ああ、これから魔動列車に乗るんだ。
って、そうか、覚えていないのか」
そういえば記憶喪失だった。
セティは何を
どこまで覚えているんだろう。
「はい、カテリーナ号にも驚きましたが、この世界って列車まで走っているのですね」
「そうだな、この国は魔石を動力とした軽、重工業製品で栄えているからなあ、
国内の主要都市を結ぶ路線が張り巡らされている上、
都市内部も路面列車が走っているぞ。
それに王都では、馬なし馬車……魔道車も走っている。
まあ、飛空船による旅客は流石に極秘技術だから無くて
軍でしか使っていないけどな。
それに主な貿易品である魔導技術を使った日用品は、普通に輸出しているぞ」
「はああ……すごいんですね
そういえば……僕、お金持っていないのですが
列車の代金とか大丈夫ですか? 」
「ああ、心配するな。
当分セティが必要なものは俺が全部持つから」
「ありがとうございます
いつになるかわかりませんが、必ずお返ししますから」
孫に送るプレゼントだと思い
返済は要らんと思っていた俺はセティの言葉に少し面食らうが
好意ばかり受け取るのは心苦しいという事なのだろうと考え
「ああ、わかった。しっかり働いてくれ」
と言ってからさりげなく話を変える。
「……そういえば、確認していなかったが
セティの持ち物って着ていたパジャマだけだよな?
まさか『収納』とか使えたりしないよな? 」
「え?」
何を? って顔になっているな
説明が足りなかったか。
「いや……魔力を持っていて、魔法が使える奴の中には「『収納』を使える奴がいるんだ。
セティは『収納』は使えるか? 」
「僕、魔法は全然ダメなので、多分使えなと思います。
あと、『収納』ってどんな魔法ですか? 」
「ああ、『収納』ってのは使用者の魔力によって
亜空間に物を出し入れできる便利な魔法だ。
魔力を持っている人間や亜人、一部の魔物の中でも特に資質があるものだけが使える
特別な術だよ。
使用者の魔力量に応じて亜空間に収納できる容量は決まっているらしいが、
国お抱えの魔導師だとコンテナ一個分くらいは余裕で入れられるそうだ」
「はああ……凄いですね〜、僕、何にも知らなくて……」
「ああ、こちらこそ、知らないのに聞いてすまなかったな」
しゅんとなったセティの頭に手を置き、優しく撫でて慰める。
「まあ、記憶が無いから仕方ないさ、
これから徐々に思い出したり覚えたりしていけば良いよ。
おっと、来たな」
鉄の車輪に窓がついた大きな木箱を載せ、繋げた様な列車が
レールと車輪が擦れ軋む音を立てて止まる様子を
セティは物珍しそうに見ていて
俺もつい頬が緩んでしまう。
ひとまず二人で席に座ってから、今日の予定を話す事とするか。
「今日はセティの船員と冒険者登録をした後、生活に必要な物を買うぞ。
諸々の登録は組合で、着替えなんかはボラーの商会だな。
何も持っていないから一式必要だろうし、
足りない物や欲しい物があったら遠慮無く言ってくれ。
終わったら、船の仲間たちと豪華な昼食後、市内観光ってところだが
何か見たいものや食べたいものはあるか? 」
「僕、何も知らないのでオススメがあればそれでお願いできますか」
「おう、わかった。絶対満足させてやる」
「はい、期待しています」
嬉しそうなセティの顔に
再び頬が緩む。
列車に揺られながら
船での生活を話していると、あっという間に
『組合サン・レノール支部前』駅に到着した。
……
列車から降りた俺たちの目の前には
赤レンガと石造り、銅版葺の
巨大で豪華な建物が、高い塔を従えて鎮座していた。
他にある、多くの組合事務所は、とても地味なものが多いのだが
サン・レノールのものは、もともと領主の館として建てられた建物であるため
うねる様な屋根、柱や破風に施された繊細な彫刻や飾りなどにより
当時の職人達が、技術の粋を尽くして建設したことを窺い知ることができる。
大きく透明なガラス製の自動開閉する扉を抜け
広い風除室を通った後、受付のあるロビーに入ると
木枠と石の柱、赤煉瓦と漆喰の壁のコントラストが見事に融合する豪華な内装と
高いドーム状の天井に描かれた嵐の海と船、
神話の登場人物である神や天使の壁画が出迎えてくれた。
朝のまだ早い時間であるため、依頼を受ける冒険者や商人達で
各窓口はそれなりに混雑していてロビーは喧騒に包まれている。
そんな騒ぎを横目に
警備兵の位置を探っていると
隣に立っていたセティが突然ふらふらと回り出した。
何事かと身構えると
彼女は天井の絵を見ようとしてバランスを崩したらしく
慌てて支えたのだが、フードが落ち、帽子は脱げ
素顔と黒髪が露わになってしまった。
一瞬にしてその場にいた人間たちの視線はセティに釘付けとなり
ロビーに静寂が訪れる。
俺は
動揺を悟られない様、わざとゆっくり顔見知りの守衛に声を掛け
組合長室まで案内させる事にして
セティの手を引き、その場から立ち去る事に成功した
少しだけ
説明回
街の様子が不穏な感じ。




