魔獣との遭遇
思い出し思い出し
なんとか書きあげています。
森中の生き物が息を潜めるような気配に驚き
周囲を見回すが生き物の姿は見えない。
でも、妙に心がザワザワする。
何かがおかしい
そう感じた僕は
音を立てないよう
近くにある手頃な木の上に登り周辺を警戒する。
5分・・・・・・10分と
時間が流れて行くが
時々
さらさらと
梢を揺らす風の音だけ聞こえてくるだけで。
何か現れる様子は無い。
気のせいかと思い
木から降りて少し歩いたところで
四足の動物や人間が腐った時に出る
ひどい異臭がした。
そういえば
倒した狼を放置した窪地が近くにあったはす。
本当であれば、臭いの確認は放置し
反対方向に逃げるべきだったのだが
この時はなぜか、そちらに足が向いてしまった。
静かに接近すると、悪臭はそこから流れて来る。
狼は、放置したとはいえ、一応落ち葉や草木で埋め
目立たないようにしていて
落ち葉の下にあるため、臭いはあまり出ないはず。
臭うということは熊か何かが掘り返したのだろう。
そのモノが立ち去ったら埋め直そうと思い
慎重に覗くとそこには
小山のような大きさのあいつがいた。
「!!」
驚いて叫びそうになるところをぐっと堪える。
『ボリボリ、ガリガリ』と狼の死体を骨まで貪っているそいつは
山では熊よりも会いたくない生き物
イノシシだった。
しかも、元いた世界では見たことがない大きさであり
体長3メートルくらいある。
肩までの高さも僕の今の背丈よりかなり高い。
一番特徴的なのは、背中から気持ち悪い色の触手みたいなものが
何本も出ていて
うねうね動いているのだ。
「なんだ、あれ?・・・・・・」
絶対に関わってはいけない相手
本能の警報装置がそう告げていて
すぐ逃げろと言っている。
僕はそいつから目を離さないようにして
そろそろと後退を始めた。
イノシシはブタの原種で主に草食だと思っている人も多いようだが
昆虫や小動物も食べる雑食で、かなりの悪食だ。
自分を狩りに来た猟犬を倒して内蔵を食べていたという話もある。
日本の動物との接触による負傷、死亡事故は、
実は熊よりも多いというデータもあるそうだ。
熊の後はイノシシと遭遇するなんて
しかも、普通の猪ではなくとても気味が悪い姿をしている。
そんな相手に、こちらは裸に腰蓑、石器の槍って
圧倒的に戦闘力不足だ。
呼吸が荒くなるのを意識して押さえながら
イノシシがいる場所から100メートルほど後退した。
イノシシが気づいていない事を確認してから
回れ右をして
一気にダッシュで拠点にしている楠の木まで
逃げる。
するとどうした事だろう
ガサガサと草木をかき分け
時には邪魔な木はバキバキとなぎ倒しながら
何かがこちらへ追ってくる気配がする。
明らかに僕の存在に気がついて、追いかけてきている。
気づかれた?
「ヤバイ、ヤバイヤバイヤバイ!!」
思わず叫びながら森の中を疾走する。
小さい草や細い枝ははねとばし
体中に傷を負い、血が流れるがそんな事は構っていられない。
細い木につかまることで急な方向転換を続けながら
ねぐらを目指す。
靴のおかげで足を痛めることなくかなり早く走れているが
相手はそんな僕よりもさらに俊足だ。
猪突猛進といわれているが、反則なくらいに意外によく曲がるし止まる。
とうとう
川原まで出たところで追いつかれ
攻撃される。
背中からものすごい圧力を感じて振り向くと
でかい鼻穴と牙がみえた。
追いつかれざま、いきなり背中側から牙ではね上げようとしたので
咄嗟に右に躱し、通り抜けざま右目に槍を突き差して抜いた。
僕はそのまま勢いに逆らわないで川原を転がり止まる。
あちこち石にぶつけて痛いが気にしてはいられない。
イノシシは勢いを殺しきれず、僕の横をすり抜けて行き、
川原の石を派手にまき散らしながら両足でブレーキをかけ、停止する。
奴は頭を振り、鼻からブフーともブヒーともつかない息を吐き出しながら
ゆっくり振り向いた。
見上げるような黒い巨躯
口からは僕の腕ほどの太さと長さがある鋭い牙が左右に2本、
背中側にはたてがみとその間から影のように滲み出す触手のようなもの
体からは湯気のように黒いシミのようなモノも立ち上っている。
こんな生き物
見たことないよ。
僕の後ろは川で、その向こうは段丘になっている。
背中を見せて川に逃げても
あっという間に追いつかれ、攻撃され
引き裂かれて、確実に喰われるだろう。
「はあ〜・・・・・・」深く息を吐き出す。
石槍をギュッと持ち
僕は覚悟を決めた。
イノシシに襲われそうになった時は
できるだけ速やかに
高い所に逃げてください。
足に牙で攻撃して来ます。




