第八話 パーティーに加わった
「ちょっとアンナ。そんな急にお話されたって、ジョージさんにもご都合がーー」
「でもさあ、アタシが前衛でエマが支援、そこにジョージが後衛で加わったらちょうどいいじゃん。後ろから魔力込めながらガンガン石ブン投げてもらってさあ」
エマさんの言葉を遮ったアンナさんは、さらに戦闘以外の僕の役割についても続けた。
「収納魔法の容量もデカいから荷物も運んでもらえて、倒した魔物もそのままギルドで売れる。採取や輸送系の依頼も受けやすくなるだろうし、いいことずくめだ」
「私たちにとっては、そうですけど……」
エマさんが、ちらりと遠慮がちに僕を窺う。
「別にずっと縛りつけるわけじゃねえよ。休みが欲しいとか、別の依頼を優先したいってんなら、多少の兼ね合いはあるけどそれもいいし、逆にこっちが協力してもやれる。アタシらは足りなかった部分が埋まって、ジョージは知らないことを教えてもらえて冒険者としての経験を積める。お互い損はねぇだろ」
これ以上ない条件に思えた。とくに知識と経験というのがありがたい。僕はこの世界のことをなにも知らないのだ。多少今日のように戦えたとしても、常識やルールを知らなければ、悲惨な事態を招いてしまう。
「そういうことなら……一応、お互いの利益にはなりますけれど……ジョージさん、受けていただけますでしょうか?」
「そうしていただけるなら、是非そうさせていただきたいです。でもーー」
この二人の誘いを受けるほうが、蹴って見ず知らずの土地で一から職場を探し、新たに出会った人の下でやったことのない仕事を覚えていくよりよほどいい。ただ、一つ気になることがあった。
「俺で、いいんですか?」
元の世界での僕は、お世辞にも物覚えのいいほうではない。手先も不器用で土嚢袋をきちんと素早く土を入れて、紐を結べるようになるまでもだいぶかかった。仕事で足を引っ張らないようになってからも、あまり仲のよくない器用な同僚から「あいつは仕事ができないから解体ばかり回される」と言われたこともある。こっちの世界でも、覚えるまでに時間がかかり、それで二人の迷惑になったらーー。
「……なあ、ジョージ。お前はアタシらがレッドベアと戦ってたとき、道の脇の藪から四つん這いで這い出てきただろ?」
僕が俯き加減になっていたところ、おもむろにアンナさんが話しはじめた。
「選択としちゃあ、隠れてやり過ごすのが普通だ。なにせ相手はあのレッドベアなんだからな。仮に出てくるとしても、アタシらがあのクマ公を仕留められたとき、改めて助けを求め出てくりゃいい」
「それにも関わらずジョージさんは、手負いの状態でレッドベアに立ち向かって下さいました。なかなかできることではありませんよ」
「アンナさん、エマさん……」
優しい瞳で僕を讃えながら続けたエマさんの隣で、アンナさんが白い歯を見せた。
「ま、アタシらが背中を任せたいと思えるってことだ。やったことないんなら、これから覚えりゃいい。けど、突っ走って無理だけはすんなよ?」
二人に向け、心を込めて頭を下げる。
「これから、お世話になります」
「ん、任された」
「よろしくお願いいたしますね」
顔を上げると、アンナさんが僕へ手を伸ばしていたので、僕はそれを握り返した。続いて、アンナさんの手も。気づけば不安はすっかり小さくなっていた。
ごめんなさい。今回短いです。よいお年を。