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妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
god slayer
134/485

13

 向かった先にもう一体の牛呑みがいる。さすがにやばい。一人で相手をしろというのか。

 恐らくだが、先ほどの牛呑みとこの牛呑みは番なのだろう。まあ、繁殖の心配をする必要はない。牛呑みは生態的に卵を作るくせにそれが不可して子供が生まれることはない。理由は知らないが、今までの調査でそう判明しているらしい。


「今はどうでもいいか」


 牛呑みのことを考えている余裕はあまりない。移動速度を上げ、相手の攻撃を回避できるほどの速度を出せるようになっているが、一人で相手をするとなると厄介だ。

 牛呑みがこちらを見つけ、向かってくる。


「"風よ我が身体を宙に浮かばせよ"」


 魔術を使い、体を軽くする。あくまで軽くするだけで浮遊はできない。呪文は宙に浮かばせよ、なんて言っているが宙に浮かべない。魔術で宙を浮かぶのは魔力消費が大きい上に制御が難しい。術式も複雑化する。

 向かってくる牛呑みを、地を蹴って飛びあがり、その頭上を越える。牛呑みの体はひっくり返ると起き上がれないほどに固いのだから上を向くことなどできやしない。

 背中に降り、もう一度蹴って尻尾を超えて相手のかなり後ろに到達する。尻尾を振っても当たらない位置まで行かなければ危ない。


「"大地よ大きく壁を伸ばし上にある者を押し上げよ"!」


 大きな術式、大量の魔力を使い、大地を隆起させる魔術を構築する。流石に大規模な術の構築は時間がかかる。相手を超えて移動したことで相手が振り向くまでの時間を大きく稼いだからこそ、構築する余裕ができる。

 牛呑みも遅れてこちらを向くが、それまでに術は完成した。あとはタイミングだ。牛呑みがこちらに向かって突進してくる。その移動、足の片方が上がったところを狙い、脚の設置していた側の大地を隆起させ、上半身からひっくり返す。そのまま下半身もつられてひっくり返り、じたばたともがくだけだ。


「っと、あまり悠長にもしていられないか」


 ずっとひっくり返ったまま、というわけでもない。じたばたともがくうちにたまにどこかにひっかかり元に戻ることもあるらしい。それに、じたばたと動かれるとこちらも動きの余波を食らう危険がある。とっとと討ち取るに限る。

 生物は弱いところというものがある。口の中とか、目だ。


「"炎の槍よ土の槍よ焦がし溶けるのの熱量で彼のものを焼き貫け"」


 魔力はそこまで使わないが、属性を複合させての魔術行使だ。術式はかなり複雑で、構築に時間がかかる。まだひっくり返ったままなのはありがたい。もがいている牛呑みの目を狙い、全力で叩き貫く。

 びくっ、と貫かれた痛みで体を震わせ、その土が溶けるほどの熱量が頭部を焼き、脳まで焼いて、その命を潰えさせる。


「……はあ。きっついなぁ」


 とりあえず、倒した。魔力の余裕はまだある。


「アルツ、大丈夫か?」


 あまり心配しても仕方がないと思うが、牛呑みは普通単独で戦うような相手ではない。心配だ。








 アルツが駆け、牛呑みを斬りつける。しかし、その入りは浅い。


「くっ、まだまだだな俺も」


 アルツは牛呑みに対してダメージの与えられない自分の腕を悔しく思う。神儀一刀の技を使えば大きなダメージを与えることは簡単にできるだろう。しかし、彼は技なしで倒したいと思ってしまっている。自分の実力を上げるためだ。彼は冒険者になった目的は自身の実力を高めるためのものだ。

 テンカウントを使い、何度も時間の加速に入り斬りつける。テンカウントは神儀一刀の技というよりは、基本的な技術だ。それを使うことは技を使うことには当たらない。何度も斬りつけるうちに、徐々に相手に与える傷が深くなっていく。相手の動き、硬さに適応してきたからだ。どのように斬れば斬りやすいのか、どこを斬れば斬りやすいのか。それを戦闘の中で学んでいく。


「この調子ならいける……なっ!」


 アルツの攻撃は四肢と体を狙うもので、いまだ致命傷には届かない。しかし、徐々に牛のみの傷は増え、致命傷を負わせずとも倒れるまでは時間の問題だっただろう。そして牛呑みもそれを理解していた。


「あ、待て!」


 牛呑みがアルツから逃げ始めた。アルツが逃げ始めた牛呑みを追う。


「きゃあっ!?」

「む? あ、シェリーネ!」


 牛呑みが逃げる先、そこにはシェリーネがいた。向かってくる牛呑みにシェリーネがその場で悲鳴を上げ硬直してしまう。


「うおおおおお!!」


 テンカウントを使い、アルツはシェリーネの下まで向かう。ハルトからシェリーネを守れと言われていたことを、今まで全く意識していなかったそれをアルツは思い出した。アルツは思う。もしそれができなかった時のハルトは絶対に怖い、と。


「おい、シェリーネ! ちょっと揺れるぞ!」

「え? ひゃああっ!?」


 シェリーネの下に到達したアルツはシェリーネを抱き上げ、テンカウントを使い時間を加速させ、牛呑みの逃走経路から外れる。最も、牛呑みは追ってきたアルツが前に現れたことで横に逸れた。アルツはその反対の方向にシェリーネを運ぶ。


「あ……」


 抱き上げ、自分を運ぶアルツ、その表情を見てシェリーネの心が跳ねる。真剣な表情で自分を助ける男の姿は今まで男性と関わることがほとんどなかった少女の心にはとても大きなものだった。


「よし、ここなら大丈夫だな!」

「あっ」


 アルツが抱き上げていたシェリーネを下す。


「待てえええええ!!!」


 また先ほどと同じように逃げた牛呑みを追う。








 アルツの様子を見に来たら牛呑みが前を走っていった。おい、アルツ逃がしてるんじゃない!」


「"風よ彼のものの動きを阻害せよ"」


 風で牛呑みの手足を縛り、動きを止める。しかし、それも一秒ほどだ。即席の術式でそれだけ動きを止められれば十分だろう。


「うおおおおおおお!!」


 目の前を風が走っていく。いや、違う。アルツだ。テンカウントを使っているから音が速く聞こえる。


「"風よ彼のものの動きを阻害せよ"」


 先ほどと同じ術、だが籠める魔力を増やす。これで先ほどよりも少しだけ長く止められる。先ほどの一秒より少し伸びた程度だが、アルツ、神儀一刀にはテンカウントがある。その僅かな時間が数秒に値する。


「アルツ!」


 アルツに向けて叫ぶ。


「神儀一刀! 鬼振り!」


 さくっ、と振られた剣が豆腐を斬るかのように肉を切り裂く。まだ生きている。


「"風よ彼のものの動きを阻害せよ"!」


 三度目。アルツがいる以上、動きの阻害に努めるだけでいい。アルツも続けて同じ技を振るい、牛呑みを切り裂く。数度、同じ行動をくりかえり、牛呑みは動かなくなった。はあ、疲れた。

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