↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
god slayer
133/485

12

 依頼の川原に行くまでの時間は半日かかる。今から行って着いたら夕方だろう。流石にその時間帯に採取や討伐を行うのは危険なので、街道沿いにある休憩所で一泊してから仕事をすることになった。

 押しに弱いせいで半ば強制的に依頼に参加させられることになったシェリーネはちょっと落ち込んだような感じだったが、しばらくすると普通にアルツと話していた。わりとタフなんだろうか。

 今回の依頼に討伐対象である牛呑みを運搬するための人員を連れ添っている。これは正式に牛呑みの討伐を受けることで派遣される人員だ。この人員に関してはギルド側の負担である。なお、依頼を途中で放棄した場合は彼らに払う人件費などは依頼を放棄した側が払うことになる。彼らは依頼中は休憩所で待機し、こちらが戻って討伐した旨を報告することでようやく仕事の開始だ。戻ってこない場合はこちらが死んだものとみなされ、ギルドに戻って報告することになる。

 街道沿いにある休憩所は、商人や旅人などが休むための場所だ。宿のようなしっかりしたつくりのものではなく、掘っ立て小屋のような感じだ。誰でも休むことができるが、その分自分の身の回りは自分で守らなければならない。

 一応男女の休む場所は分かれているが、あまりあてにならない。


「シェリーネは一人で大丈夫なのか?」

「え? あ、大丈夫……です」


 口で大丈夫とは言うものの、不安そうな表情をしている。


「……部屋を布で区切るから同じところで寝よう。知らない男の二人組と一緒ってのは不安かもしれないが……」

「いえ! そんなことないです!」

「なら大丈夫だな。アルツ、手を出すなよ?」

「? そりゃ殴ったりとかするわけないだろ」


 そういう意味じゃない……もしかして性教育とか受けていないタイプか? まあそういう教育は場所や家庭によりけりだからな。


「ああ、うん。大丈夫そうだな」


 一応魔術で感知式を作っておいて、人が来た時に気付けるようにしておこう。アルツも人が来たら気付くだろうが念のためだ。まあ、手を出してくる奴なんていないと思うが。








 特に問題なかった。まあ、ないのが普通だろう。

 翌日、休憩所に仕掛けた諸々を片付け、川原に向かう。着く頃は大体真昼ごろだ。


「採取はこの辺りのか」

「そうです。えっと、採取するのはこの青口花です。高さが殆ど伸びなくて草の中に隠れてます」


 そう言ってシェリーネはがさがさと草をかき分けて見せてくれる。その中に青くて小さい、親指ほどの蕾のような花があった。通常花は花弁を広げるように咲くものだが、この花は蕾の状態からちょっとだけ開くだけで、ほとんど蕾に見える。中に水が溜まっていればそれが咲いた状態である証らしい。


「探すのを手伝えばいいんだな?」

「はい。ちょっと採取の仕方にはコツがいるので、採取はわたしがします」

「そういうことだから、アルツ。探すのを手伝え」

「え? ああ。わかった」


 流石にアルツでも探す程度なら問題はない。っと、その前に。


「少し魔術を使ってくる」

「ん? どうした?」

「探している間に魔物が出てきたら厄介だからな。何か来たらわかるようにしておくんだ」

「ふーん」


 説明しても興味なさげだ。まあ、アルツは戦い以外への興味は薄いからな。

 杖を抜いて術式を構築し、呪文を唱える。


「"風よ触れた者を伝えよ"」


 風の感知式だ。地雷みたいなものでそれに触れた生物がいればそれをこちらに風で伝えるものだ。流石に探査まではできない。一応感知する大きさの制限をしておくが、下手すれば普通の動物が引っ掛かったりしそうだ。

 この探知式を川原一帯に配置する。何か近づけばわかるだろう。


「さて、採取の手伝いでもするか」


 まずは採取依頼を片付けて牛呑みに挑むとするか。しかし、シェリーネの扱いをどうしよう。討伐に参加させるわけにはいかない。まあ、こちらが強引に依頼に連れてきた形なのだが。こちらが何とかして守るのが道理だろう。

 採取中に幾つかの設置した術に反応が出る。ただ、その方面を探るがちょっとした野生生物だ。こちらに危害を加えてくるよう生物もいたが、軽く魔力を出して威圧すれば勝手に逃げていく。







 異変は採取を終えたあたりに起きた。設置した術が一斉に反応した。


「っ!?」


 設置した術はかなり広範囲に配置したはずだが、その多くが一気に反応したのだ。それはつまり高範囲をカバーする巨大な生物が現れたということである。


「アルツ! 注意しろ!」

「ハルト? どうした?」

「ど、どうかしたんですか!?」


 シェリーネはともかく、アルツは気付いてもいいものかと思ったが。


「"風よ探れ"!」


 簡易だが探査を使う。すぐに反応が確認できる。かなり巨大な……鰐だ。


「牛呑み!?」


 牛呑みが南下しているのは聞いていたが、ここよりもまだ北西の方角で確認されていたはずだ。しかし、ここにいるということはさらに南下してきたということなのだろう。


「え!? 牛呑みですか!?」

「そうみたいだな」

「討伐か!!」


 アルツは討伐対象が来たということで元気いっぱいだなちくしょう。本来なら牛呑みは討伐準備して挑む相手なんだぞ。


「ああ、しかたない。シェリーネは手を出さなくていい。近づかれないようにだけ気を付けていればいい。アルツ、シェリーネに近づけないようにしっかり牛呑みを引き付けるぞ!」

「ああ!!」


 探知した牛呑みに近づく。でかい。向こうは餌を探しているようで、こちらを見るといきなり走ってくる。やばい。怖い。アルツも血気盛んに向かってくる鰐に挑みかかる。


「うおおおお!!」


 鰐の突進に巻き込まれないように動き、その剣で体を切り裂く。浅い。いや、鰐が固いんだろう。爬虫類系の魔物の鱗はそこそこ固い。そもそも、本来牛呑みは直接戦闘をして倒すような相手ではない。事前に穴を掘ってそこに落とし、ひっくり返して倒す相手だ。もしまともに戦うならば桃のレベルになってしまう。やばい。


「"炎の弾よ焦がし穿て"」


 アルツが斬りつけている間に、術式を構築し、炎の弾を牛呑みに撃つ。一つ撃っては次を構築し、撃ち出す。流石に体を焼かれる方が斬られるよりダメージが大きいのか、こちらを見て向かってくる。アルツがその動きをテンカウントで追い、攻撃している。移動を阻害するために足を狙っているようだ。

 流石に近づかれるとやばい。こちらも高速移動の準備をしないと。


「"風よ我が動きを加速せよ"」


 風により体を押し出し、速度を上げる術を発動する。昔練習していたころは姿勢制御の魔術を使わないときつかったが、今はなしで動けるようになっている。

かなり牛呑みが近づいてきたので、横に回り込みかわす。向こうも追いかけようとしてくるが、こちらが横に回るほうが速い。

 少し、そうした攻防が続く。しかし、それを続けることは出来なかった。


「えっ!?」


 思わず声を出す。先ほどと同じ、一斉に設置した感知式が発動したからだ。


「"風よ探れ"!」


 即席の術を構築し、周辺の探知を行う。一瞬だったが、十分だ。


「アルツ! こいつは任せる! シェリーネもしっかり守れ!」

「ハルト!? どこにいく!?」

「もう一体いたんだよっ!!」


 先ほど行った探知、それにもう一体の牛呑みが反応していた。ギルドはもう少ししっかり調査していろよっ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。