5話 灯台荘に新しい風が吹く朝
宙
「風も“5話いけ〜!”って言ってるよ〜!」
真昼(手話)
「自然につながってる」
雫
「……優しい朝だと思う。」
5話 灯台荘に新しい風が吹く朝
灯台荘のリビングでは、 住人たちがそれぞれの“夜”を過ごしていた。
みかが光を落として、 部屋全体が柔らかい夜色に包まれる。
真昼は手話で 「今日は、いい日だった」 と伝える。
雫は、 「……うん。落ち込まなかった」 と小さく笑う。
透は、 「先生、今日は二回だけでしたね」 と蝦蟇口先生に言う。
蝦蟇口先生 「あはは〜! 明日はゼロ回を目指すよ〜!」
綾乃先生 「……目指すだけじゃなくて、気をつけてください。」
宙 「風がね、今日は優しいよ!」
あくあは静かに座って、 住人たちの会話を聞いている。
ジュンは、 「……こういう夜、好きだな」 と呟く。
絵凛がその言葉を読んで、 ふわっと微笑む。
「junさん、灯台荘の夜はね、 みんなが“今日を終える場所”なんだよ。」
夕陽が海原に落ちていくと、 灯台荘の廊下には長い影が伸びた。 昼の賑やかさが少しずつ静まり、 風の温度がひんやりと変わる。
雫は洗濯物を取り込みながら、 「……今日も、なんとかやれた」 と小さく呟く。
真昼は手話で 「夕ごはん、手伝う?」 と絵凛に伝える。
透は海の音に耳を澄ませて、 「夕方の波は、音が柔らかいですね」 と静かに言う。
宙は庭を走りながら、 「風が夜の準備してるよ〜!」 と意味不明な報告をする。
文子さんは湯気を揺らしながら、 「そろそろ夕ごはんよ〜」 と声をかける。
そして、 研究棟から戻ってきたジュンが、 Macを抱えて玄関に姿を見せた。
絵凛が微笑む。
「junさん、おかえり。 夕ごはん、もうすぐできるよ。」
夕陽がジュンの肩を照らし、 灯台荘の一日は静かに夜へと流れ込んでいった。
夜が深まり、住人たちがそれぞれの部屋で静かに過ごしていたころ、 灯台荘のポストに、ひとつの封筒が落ちた。
コトン。
その音に気づいたのは、 風の気配に敏感な宙だった。
宙 「……手紙が来たよ!」
絵凛が玄関に向かい、 ポストから白い封筒を取り出す。
差出人は—— 「海沿いの療養院」。
絵凛
「junさん、これ……灯台荘に来たいっていう手紙だよ。」
封を開けると、 丁寧な字でこう書かれていた。
——灯台荘に入居を希望します。 ——静かな場所で、もう一度生活を立て直したい。 ——海の音が聞こえる家がいい。 ——弱さを隠さなくていい場所があると聞きました。
文子さんが湯気を揺らしながら言う。
「まぁ……またひとり、灯台荘に来たい人がいるのねぇ。」
真昼は手話で 「来る?」 と聞き、 雫は 「……いいと思う」 と小さく頷いた。
透は 「海の音が好きな人なら、きっと灯台荘に合いますね」 と静かに言う。
ジュンは手紙を読みながら、 胸の奥が少しだけ温かくなるのを感じた。
——灯台荘は、誰かの“帰る場所”になっている。
絵凛
「junさん、明日……その人が来るよ。」
灯台の光が、 その手紙をそっと照らしていた。
翌日の昼前、 灯台荘の玄関に小さな影が立った。
白い帽子、 薄いコート、 手には小さな鞄。
その人は、 静かに深呼吸をしてから、 玄関のチャイムを押した。
ピンポーン。
絵凛が扉を開ける。
「こんにちは。灯台荘へようこそ。」
新しい住人は、 少し緊張した声で言った。
「……あの、手紙を送った者です。 ここに……住めますか?」
雫がそっと近づき、 「……大丈夫。ここは、そういう場所だから」 と優しく言う。
真昼は手話で 「ようこそ」 と胸の前で手を開く。
透は 「足元、段差がありますから気をつけて」 と声をかける。
宙は 「風が歓迎してるよ!」 と意味不明なことを言う。
文子さんは 「お茶いれるわねぇ」 と湯気を揺らす。
みかは光を少し明るくして、 “歓迎の帯”を作る。
そしてジュンは、 「……灯台荘へようこそ」 と静かに言った。
新しい住人は、 その言葉に少しだけ肩の力を抜いた。
「……よろしくお願いします。」
灯台荘に、 またひとつ新しい風が吹いた。
翌朝。 灯台荘の窓から差し込む光は、 昨日よりも少しだけ柔らかかった。
海原を照らす灯台は、 今日もゆっくりと光を回している。
絵凛が玄関の鍵を開け、 「おはよう、灯台荘」 と小さく呟く。
真昼は手話で 「おはよう」 と胸の前で手を開く。
雫は 「……今日も、ゆっくりでいいよね」 と小さく言う。
透は 「波の音が静かですね。 新しい人にも優しい朝です」 と微笑む。
宙は 「風がね、今日もいい感じだよ!」 と走り回る。
文子さんは湯気を揺らしながら、 「朝ごはんできてるわよ〜」 と声をかける。
そして—— 新しい住人が、 少し緊張した顔で食堂に入ってきた。
ジュンが言う。
「おはよう。 今日から、灯台荘の朝だね。」
新しい住人は、 小さく頷いて言った。
「……おはようございます。」
灯台の光が、 その言葉をそっと照らしていた。




