21話「ことばにする日」
21話「ことばにする日」
朝。
研究棟。
ジュンは、白い画面を前に止まっていた。
これまで書いてきた記録とは違う。
今回は——“外に出すための言葉”。
タイトルだけが、ぽつんとある。
「灯台のあり方について」
宙がのぞき込む。
「風がね、“むずかしそう〜”って言ってる!」
ジュンは少し笑う。
「……難しいんだよ」
絵凛が隣に座る。
「どうして?」
ジュン
「……ここにあるものってさ」
少し間。
「言葉にすると、ちょっと違って見えちゃう気がして」
透が静かに言う。
「抽象と具体のズレですね」
真昼(手話)
「でも必要」
雫
「……伝わらないと、届かないしね」
ジュンはゆっくり頷く。
キーボードに手を置く。
そして、打ち始める。
——灯台荘は、特別な支援施設ではありません
——ただ、“無理しなくてもいい暮らし”を大切にしている場所です
少し止まる。
また打つ。
——私たちは、人を変えるのではなく、
——環境を整えることで、人が自然に落ち着くことを目指しています
透が小さく頷く。
真昼(手話)
「いい」
宙
「風も“それそれ〜!”って!」
わらわら。
ジュンは書き続ける。
——すべての人に合う場所はありません
——だからこそ、選べることが大切だと考えています
その一文を書いたとき、
ジュンは少しだけ、息を吐いた。
「……書けた」
絵凛が微笑む。
「うん。ちゃんと“灯台の言葉”になってる」




