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第2話:崖下の巨大備品

ボスゥゥゥン!!


凄まじい衝撃音と共に、雪煙が舞い上がる。

 普通なら即死コースだけど、落下の衝撃は構造把握(スキャン)で見つけた『巨大な鉄の塊』が、私の魔力に反応してクッション代わりになってくれたおかげで、かすり傷一つ負わずに済んだ。


(……ふぅ、死ぬかと思った。

 前世のホームセンター時代、脚立から落ちた時よりはマシだけど、心臓に悪いですわね)


私はドレスの雪を払い、自分が着地した「足場」を見上げた。

 それは鉄の塊なんてレベルじゃなかった。

 数百年前に打ち捨てられ、雪に埋もれていた伝説の守護神(アイアン・ゴーレム)の右手のひらだったのだ。


「ゴ、ゴゴッ……ギギィ……」


地響きのような重低音が鳴る。

 どうやら、私の着地時の衝撃と魔力注入が、スリープ状態だったこの子の起動スイッチを叩いてしまったらしい。


(……ひっどい。

 全身の関節が固着(スティック)してるし、魔力伝導路はスカスカ。

 これ、王都の魔導技師が見たら『廃棄物』って即答するレベルだわ)


でもさ、一番困惑しているのは、いきなり叩き起こされたこの子だよな。

 ネット小説を読み込んでいた私には、すぐにこれが「隠れチート枠」だってピンときたけど。

 

 私は職人気質に火がつき、自然と手が動いていた。

 

「安心なさい。この接点不良(コネクト・エラー)、私が直して差し上げますわ」


私は指先から構造最適化(メンテナンス)の魔力を流し込む。

 魔法なんて高尚なものじゃない。

 前世でサビついたボルトに『潤滑剤』を吹き付けて、じわじわと回していくあの感覚だ。


ギギッ、ガシュゥゥゥ……!


固まっていた魔力回路が繋がり、ゴーレムの目に青い火が灯る。

 雪を跳ね除け、立ち上がったその姿は、全高十メートルを超える圧巻の威容だった。


(……おおーっ、これはかなり使えるわよ!

 王宮のお偉いさん方は、これを『動かないガラクタ』だと思って放置してたんだろうけど。

 これだけの出力密度パワー・ウェイト・レシオがあれば、家ごと移動できるわよ)


とりあえず、今の私の状況を整理してみた。


・所持金:ドレスの隠しポケットにあった金貨10枚(約10万円分)。

 ・装備:ボロボロの夜会ドレス(防御力ゼロ、作業適性マイナス)。

 ・味方:伝説の守護ゴーレム『アイアン』(ただし空腹……じゃなくて魔力不足)。


「プふぅ……?」


足元を見ると、ゴーレムの熱気に誘われたのか、雪玉みたいな綿毛兎、プフがひょっこり現れた。

 野生の魔物だろうけど、全然警戒心がない。

 試しにドレスの飾りリボンを解いて、構造最適化(メンテナンス)で『丈夫な紐』に作り直して遊んであげると、すっかり懐いてしまった。


(ストリート・モンスターも逞しいですわね。

 まずは、この格好じゃ風邪を引くし、作業もしにくいわ)


私はアイアンの手のひらに乗り、周囲を構造把握(スキャン)した。

 崖下の廃棄場には、王都から捨てられた「使えない魔導具」が山ほど転がっている。

 でも、私から見ればここは宝の山だ。


・壊れた魔熱ヒーター → 構造調整(チューニング)すればキャンプ用石釜になる。

 ・破れた防魔マント  → 裁断(カット)すれば最強の作業着に作り直せる。

 ・ひび割れた魔力結晶 → 研磨(サンディング)すればアイアンの最高級燃料だ。


(……よし。あのアホ王子たちの尻拭いをするより、ここで『自分専用の拠点』を組む方が百倍マシね。

 この崖下を、世界一快適なセレクトショップ(ホームセンター)に構造改革してやりますわ!)


王都の方では、私がいないせいで基幹システムが不具合(バグ)を起こし始めてるだろうけど、知ったこっちゃない。

 私はアイアンの広い肩の上に座り、新しい生活の設計図を脳内に描き始めた。


まずは今晩を凌ぐための簡易防寒シェルター(テント)と、温かいご飯ですわね。

 

 よし、本格的な拠点構築(DIY)は明日から、早速取り掛かるわよ。

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