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オリガン家の落ちこぼれ  作者: paiちゃん
333/384

E-332 変人集団を本当に集めるのかな?


 だいぶ日が傾いてきた頃。ティーナさん達が帰ってきた。

 王子様達は既に帰って行ったから、子供達の状況についてはデオーラさんが関係者に話してくれるに違いない。

 夕食前の一時。ティーナさんが俺達に子供達の登録状況を教えてくれた。


「かなり集まったぞ。受付を2つ作っていたのだが、子供達の列がだいぶ伸びてしまったから、改めて受付2つ増やしたぐらいだ」


 荷馬車が1つにテーブルが2つで始めたが、近くのお店からテーブルと椅子を借りだして受付を増やしたらしい。

 デオーラさんが「ちゃんとお礼はしたのでしょうね?」と確認しているけど、ティーナさんが頷いているところを見ると、それぐらいの常識はあるようだな。


「帰る途中の馬車で集計したところでは、185人だ。まぁ、様子を見ていた子供もいるだろうから約200人と考えるべきだろう。明日は、最初にやって来た子供達とこの結果を見ながらいくつかの班を作ろうと思っている」


 子供達のリストを見せて貰うと、名前と性別に年齢、得意な事とやりたいことが書かれてあった。

 読み書きができる子供達が10人ほどいるのは意外だったな。その上簡単な計算ができる子供もいるようだ。

 やりたいことが色々書かれているのは。やはり子供達にはそれなりの夢があるということに違いない。何人かは継続した仕事が欲しいとの要望があったようだ。

 それも考えないといけないだろうな。


「マーベル国のビーデル団が参考に出来るはずだ。男女別に分けて、更に年代で2つに分ける。大きく4つに分けたところで小さな班を作れば良いだろう。さすがに年少組の班には世話好きな年長者を付けねばなるまい」


 思わず笑みが浮かぶ。ビーデル団をちゃんと見ていたみたいだな。

 大人達が気付かない内に、そんな世話係を決めていたみたいだからね。危ない仕事を任せることは無いんだが、ヤギに押されて転んだりすると泣き出す子供だっているからね。


「このまま推移すれば5日もせずに形になりそうだ。そうなると、早めに子供達に託せる仕事を集めねばなるまい」

「明日には、私達が再び集まります。商会ギルドが秘密基地を提供してくれることになっていますから、明日の夜にはティーナに教えてあげられますよ」


 多分いくつか簡単な仕事も提供できるに違いない。10日もすれば秘密基地で子供達が自主的に仕事を分配できるんじゃないかな。

 

「明日もナナちゃんはティーナさんと一緒なのかい?」

「そうにゃ。最初が一番大事にゃ」


 ナナちゃんの答えにデオーラさんが笑みを浮かべて頷いている。

 そうなると、俺はどうしようかな?

 商店街をぶらついてみるか。お土産も買っておきたいからね。


「ティーナの方はしばらく掛かるのだろうが、レオン殿達はもうしばらく滞在して欲しい。話をしたいという士官もいるのだ。明日の夜に会談をしたいのだが?」

「あまり長く御厄介になるのも申し訳ありませんので、予定通り5日でマーベルに帰ります。昨年は魔族が来ませんでしたから……」

「確かに、やってきそうだな。長城造りをもう少し早めるべきだったと反省しているところだ。そうなると、例の魔族の侵入点が気になる。どこから来るか……、魔族側の都合というのが気に食わんところだ」


 これで俺達は予定通り帰れそうだ。

 ティーナさんはしばらく滞在することになるだろうけどね。


 翌日。いつも通りにナナちゃんに叩き起こされて朝食を頂く。

 そんな俺を、お茶を飲みながらデオーラさんが笑みを浮かべて見てるんだよなぁ。

 やはり、困った男だと思っているに違いない。


「それじゃあ、出掛けるにゃ! ティーナ姉さんと昼食を一緒に食べるにゃ」

「ちゃんとした店を選ぶのですよ。ただ食べれば良いと言うことでは無いのですからね?」

「分かっておる。ユリアンが既に予約を入れているそうだ」


 ユリアンさんの名を聞いて、納得したように頷いている。自分の娘よりも信用が置けるということなんだろう。

 確かにティーナさんなら昼食に軍の野戦食を出しても、文句1つ言わずに食べるに違いない。

 だけど、ここは政庁市だからなぁ。市内にお金を回すためにもちゃんとした店で頂くのは貴族としての務めになるんだろう。


「レオン殿は、今日は市内を散策すると聞いてましたが?」

「はい。やはり大きな都市のお店を見るのは楽しみですからねぇ。お土産も買い込まねばなりませんし、仕事の種が見つかるかもしれません」


「そういう姿勢が大切なのでしょうね。レオン殿のような思いで商店街や工房街を歩く人物はエクドラル王国内にいないのが残念です」

「そうでも無いと思いますよ。教育を受けて、それを何らかの形にしたいと思う人物はエクドラル王国内に沢山いるはずです。とはいえ、その多くが館の中で思いだけを巡らしているのではないでしょうか。本の虫なら外出は嫌うでしょうからね」


 興味を覚えたのだろう。食事を終えた俺をソファーに招き、お茶を淹れてくれた。

 ありがたくカップを受け取って、食後のパイプを楽しむことにする。


「サロンでそのような人物の話を聞いたことがあります。彼らはレオン殿に近い考えを持っているのでしょうか?」

「案外同類かもしれません。デオーラさんも知っての通り、俺はオリガン家の落ちこぼれですからね。何とかしようと家の小さな図書室の本を片端から読んでいました。読むだけでも知識はたまるんでしょうけど、何とかその知識を応用することで俺の能力不足を補えるのではないかと当時は真剣に考えていましたよ」


 うんうんとデオーラさんが頷いている。

 武門貴族でありながら兄弟に比べて平凡的な能力しかないと分かれば、それを何とかして補いたいと考えるのは当然と考えたのだろう。

 

「レオン殿にはグラム殿も戦場で出会いたくないと言っていました。オリガン家なら当然なんでしょうけど……、そうですか。そんな過去があったのですね。それなら、本の虫達を数人纏めて表に引き摺りだせば、レオン殿の足元に近付けるように思えるのですが?」

 

 思わず背筋が寒くなった。笑みを浮かべてデオーラさんが話してくれたけど、デオーラさんなら本当に実力行使で引き摺り出しかねない。


「さすがに実力行使はダメですよ。自発的な動きでないと無理だと思います。そんな連中程、ヘソが曲がっていますからね」

「レオン殿もそうなのですか?」

「曲がりに曲がってお腹を1周していますよ。そんな連中を動かすなら……」


 俺の言葉がツボにはまったのだろう。両手で口元を隠しながらしばらく笑い続けていた。

 何とか元に戻ったところで、俺の話を聞いているようだ。


「なるほど、へそ曲がりの連中をその気にさせるのは、煽てれば良いということですね? それに、そんな連中を集めて互いを競わせる……。最初の顔合わせは引き摺り出すしかなさそうですが、その後を考えると面白そうですね」


 やはり引き摺り出すことは変わらないのか……。まぁ、たまに外の空気を吸わせれば少しは態度も変わるかもしれないな。

 だけど、変人集団を作ることになるから、誰かが監視していないととんでも無いことを始めかねない。

 彼らと正反対の人間を何人か用意して置く必要もありそうだな。


 お茶を頂いたところで、外出することをデオーラさんに告げる。

 既に知っているけど、これも挨拶の1つだろう。市内の食堂でどんな食事が出されるのかも楽しみだ。

 客間を出る際に、再度デオーラさんに体を向けて頭を下げた。


 玄関に向かって歩きながら、最初は何処に向かうかを考える。

 大きな都市だからなぁ。1日で回るのは無理がある。やはり最初は商店街に向おう。店の種類と品揃えは是非とも確認しなければなるまい。


 オルバス館は敷地が広いから、通りに出るまでに結構時間が掛かる。

 貴族街を囲む塀の門番に頭を下げて、中央通りへと足を運んでいく。

 中央通りにある広場で一休み。ここまで歩くと30分は掛かってしまうようだ。いくつか並んでいる屋台で飲み物を買う。自前のカップにも入れてくれるとのことだから、真鍮製のカップをバッグから取り出して入れて貰った。近くにベンチに腰を下ろして通りを歩く住民を見ながらパイプを楽しむ。

 小綺麗な姿をしているから、それなりに裕福な住民達に違いない。

 中には侍女を伴って歩いているご婦人もいるようだ。


「あまり見かけない顔だな?」


 突然上から声を掛けられた。顔を向けると2人の警邏の姿があった。

 綿の上下にバックスキンの丈の長い袖なしの上着は、レンジャー姿に合わせた物なんだけど、確かにこの界隈ではちょっと目立つかもしれないな。


「政庁市の貴族に招かれたんですよ。普段は北東の山暮らしです」

「良い獲物が取れたってことか! 1人ってことは、土産探しってことかな? なら、この通りを探すより、1つ裏の通りで探した方が良いぞ。良い酒はこの通りなんだが、それほど高くない酒はそっちの方がたくさんある」


「ありがとうございます。一通り眺めてから、裏で買うことにしますよ。それにしても皆良い服を着てますねぇ」

「景気が良くなったし、何といっても昔よりだいぶ税金が安くなったからなぁ。もっともレンジャーは税金を払わないんだろう?」

「ちゃんと払ってますよ。獲物はギルドに運んでますからね。その対価はギルドが税を引いているそうです」


「そういうことか! その中にはギルドの取り分もあるんだろうが、エクドラル国民である以上は税は義務ってことだ。レンジャーも自由人ではないってことか」

「その税金で俺達は暮らしてるんだから、ちゃんと見回らないとな。……邪魔をしたな。せっかく政庁市に来たんだ。ゆっくり楽しんでくれよ。だが、あまり飲み過ぎるなよ。酔っ払いの始末も俺達なんだからなぁ」


 警邏2人が俺に手を振って、通りを歩いていく。

 不審人物を見ると、今みたいに確認しているのだろう。

 都市の治安を守る大切な連中だからなぁ。たぶんナナちゃん達の近くにも待機しているんじゃないかな。


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