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オリガン家の落ちこぼれ  作者: paiちゃん
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E-316 ビーデル団への依頼


 食堂は昔からの場所にあるので、中央広場より少し離れている。

 通りを南に向かって歩き、広場から少し奥まった通りに入ろうとすると東からナナちゃん達があるいてきたことに気が付いた。

 ミクルちゃんと手を繋いでいると、本当の姉妹のようだ。


「どこに行くのかにゃ?」

「ビーデル団の団長と話をしたかったんだが……、丁度良い! ナナちゃん、申し訳ないけど団長に俺が会いたがっていたと話してくれないかな。今日も1日中、指揮所にいるからね」

「分かったにゃ! ちゃんと伝えるにゃ」


 俺に手を振って通りに入って行ったから、後は任せてもだいじょうぶだろう。

 永代相談役だからね。団長もナナちゃんの話は尊重してくれるだろう。

 2人が東からやって来たのは、幼魚の状態を見て来たということかな?

 養魚場はビーデル団の管轄だからね。途中で死んでしまう魚もだいぶ減ったと聞いたことがある。それだけ養魚場の管理が上手く行っているに違いない。

 エクドラル王国も養魚場にはかなり興味があるようだ。他の王国もそれができるならと思っていることだろう。

 養魚場の運営管理についての本を書けば、案外売れるかもしれないな。

 場合によっては、管理指導という名目でエクドラル王国へ人材を派遣することも出来るだろう。エクドラル王国との関係は、グラムさん達のおかげでかなり友好的な状態が続いている。広大なエクドラル王国なら、養魚場をいくつか作ることも可能だろう。


 そんなことを考えながら歩いているから、指揮所に戻る途中で何度か凍った雪で足を滑らせたり、積み上げた雪の壁にぶつかったりの繰り返しだった。

 雪の壁にぶつかった時には、それを見ていた住民にクスクスと笑われてしまった。

 おかしな人間だと思われたんだろうな……。反省しながら歩いていたら、今度は滑って転ぶ始末だ。雪道では考え事をせずに歩くことが肝心だと十分に理解できたぞ。


「ただいま戻りました!」

「お帰りなさい……。だいぶ濡れてますけど、また降り出したんですか?」


 濡れたマントを入り口近くのフックに掛けて頭の雪を払っていた俺に、レイニーさんが問い掛けてくる。

 途中で何度か転んだことを話したら、一緒に暖炉傍でお茶を飲んでいたティーナさんと一緒に笑い声をあげる。

 この歳になって、雪道で転ぶというのが2人のつぼにはまったらしい。


「……それは大変でしたね。直ぐに温まりなさいな」

「今時、子供でも転ばぬぞ。…まぁ、それがレオン殿の良いところでもあるようだ」


 コロコロと小さな声で笑いながら話をしている。

 ティーナさんが席を譲ってくれたベンチに腰を下ろすと、すぐに暖炉で手を温める。


「途中でナナちゃん達に出会ったので、ビーデル団の団長に俺が会いたがっていたと伝言を頼みました。ナナちゃん達は養魚場からの帰りだったようです。その養魚場について考え事をしながら歩いたことで、こんな具合になってしまいました」

「足元の注意がおろそかになってしまった、ということですね? 雪道で転んで動けなくなりそのまま朝を迎えて亡くなったという話もあるんですから、十分注意してください」


 お小言を頂いてしまったけど、熱いお茶を俺のカップに淹れてくれるんだから、俺を心配しての言葉なんだろう。ありがたく拝聴して頷いておく。


「養魚場は依然と変わらなく子供達が管理しているのだろう?」

「そうです。ビーデル団の仕事になっているんですが、始めた当初に比べて、途中で死ぬ魚がだいぶ減ったように思えます。それだけ彼らの養魚技術が高まったということになるのでしょう。その後をどうするかと考えながら歩いた結果が……」


 俺の話を聞いて2人が苦笑いを浮かべる。

 そんなことを雪道を歩きながら考えることもないだろう、という感じだな。


「それで、その結果は?」

「他国への技術提供……。その段階にまで養魚技術が確立しているのではないかと」


 今度は2人が大きく目を見開いて俺を見ているんだよなぁ。

 2人の表情の変化を見るだけでも楽しくなってしまう。

 口をぽかんと空けているから、その間にパイプに火を点けよう。2人とも俺がパイプを使うことは知っているし、暖炉傍なら煙は暖炉の煙突が吸い込んでくれる。


「それはエクドラル王国に養魚場を作ることができるということなのか?」

「可能でしょう。エクドラル王国には いくつかの大きな川があるはずです。養魚場育てている魚と同じ魚をその川で獲ることができるなら、養魚場を作ることができますよ」


「あの魚は美味しいですから、需要はあるでしょう。でもそうなると……、ビーデル団から何人かをその養魚場に派遣することになるのでは?」

「新たな産業ができるのだ。派遣された少年達の安全はエクドラル国王陛下が保証するに違いない。その報酬は士官待遇を越えるに違いない」


 レイニーさんの心配に、ティーナさんが安全安心を請け負っている。確かにそうなるだろうな。貴重な人材ということになるはずだ。

 場合によってはマーベル共和国に戻らずに、その地で伴侶を迎え暮らすこともあるだろう。

 それは彼らの意思に任せれば良い。

 知識と技術を持っているなら、蔑まれずに暮らせるだろう。エクドラル王国では獣人差別等無いからね。


「マーベルを離れることもあるということですね……」

「どこで、どんな風に暮らすか……。それは個人の意思に任せましょう。とはいえ、住民に魅力ある国作りをすれば、たとえ一時的にマーベルを離れることがあっても、戻ってくると思いますよ」


「フム……。国の魅力という考えは初めてだ。他の王国よりも優れているならそれで十分に思えるのだが」

「なにが優れているかによると思います。住民の暮らし良さとは何なのかを十分に考えるべきでしょうね。税金が他国より安くとも、魔族に脅えるようでは問題です。安心して暮らせる。そのためには何が必要かを考えないといけません」


 安心して暮らせる。簡単なようで簡単ではないはずだ。

 魔族や他国の侵略に脅えずに、働きに応じた収入で一家を養える。冬を暖かく過ごす薪を容易に確保でき、自然の災害にも対処できる……。その他にも色々とあるだろうな。それにそれらの要件は次々と増えるはずだ。


「レオンは、それをマーベルで実践しているのですよね?」


 レイニーさんが自信無げな表情で問いかけてきた。


「皆で色々とやっているじゃありませんか。そのため毎晩のようにここで皆で悩んでいると思っています。最初はどうやって皆を食べさせるかが主流でしたが、今ではよりよい生活を送るかに替わってきましたね」


 ここに来た当時は、次の収穫までどうやって食つなぐかを真剣に考えたものだ。

 食料の目途が着くと、今度は魔族に対する対応が出てくる。

 現在は全体調整の段階に来ているんだけど、それによって仕事への対価を平均化して格差を生まないように考えているところだ。


「エクドラルでは建国からだいぶ時が経っている。それだけ安定した統治が出来ているということになるのだろうが、果たして住民からはどう思われているかを、考える必要があるということか?」

「エクドラル王国内で、そんな話を急に始めないでくださいよ。既存権益を乱すようであれば貴族からの反発を受けかねませんから」


 一応釘を刺しておこう。

 この件はグラムさんのような人物が、国王に耳打ちする内容だからな。

 下手に宮廷で声を出そうものなら、闇討ちされかねない。


「父上に話すだけなら問題あるまい。色々と悩んでいる時もあるようだ」


 それなら、問題は無いだろう。案外王子様と一緒になって旧サドリナス領内で始めるかもしれないな。この辺りの統治は王子様が行っているようだからね。


 ビーデル団の団長が指揮所を訪れたのは、ナナちゃんに伝言を頼んでから1時間ほど過ぎていた。

 入ってきた時に息を切らしていたから、慌ててやって来たのかもしれない。

 

「ビレルです。俺に話があると聞いたのですが……」


 3人で入ってきた彼を見たから、ちょっと恐縮しているみたいだな。 

 創設時は副団長だったはずだ。当時の団長はビーデル団を卒業したのだろう。


「寒かっただろう? 俺の隣が空いてるよ。先ずは体を温めてからだ」


 恐る恐る近づいてくると、レイニーさんに促されてどうにか腰を下ろしてくれた。

 ティーナさんがお茶のカップを手渡すと、しきりに頭を下げながら受け取っている。

 大人3人が見ているからだろう。かなり委縮しているようだ。


「ビーデル団の働きに、エクドラさんが感心していたよ。現在、困っていることがあるなら先に聞かせてくれないかな?」

「団結成から、1年も過ぎてませんが、とりあえずは順調です。仕事は整理できましたし、誰がどの仕事を行っているか一目で分かるように仕事と名前を張り出しています。春の種蒔きを終えたところで、ビーデル団を去る者と、新たに加わる者で少し混乱するかもしれませんが、それは俺達内で何とか出来ると思っています」


 ビレルの話を、うんうんと頷きながらレイニーさんとティーナさんが聞いている。

 それにしても、仕事とそれに携わる人間の名前を張り出しているとはねぇ……。

 中々に考えたものだ。

 その仕事に必要な最低限の人数を記載してあればなおさら良いと思うんだが、それは彼らに気付いて貰おう。


「私達も秘密組織を作ろうとしているの。中央広場の西に建物を作っている最中なんだけど……」

「エルドさんから話を聞きましたし、石集めの依頼も受けてますよ。俺達の秘密基地も今年中に立て直してくれるそうです!」


 長屋を提供しただけだったからなぁ。新たな秘密基地なら嬉しいだろう。その対価が石集めと言うことなんだろうけど、雪の中から掘り出すのはかなりの重労働になるんじゃないのか?


「雪の中から石を探し出すの?」

「結構簡単なんです。ナナちゃんが魔法で雪を溶かしてくれますから。射撃訓練場で石を集めているんですが、冬場は閉鎖されていますからね」


 炎の壁を使ってるんだろう。

 あの熱量と効果範囲ならば雪は簡単に融かせそうだ。


 子供達の応用力は侮れないなぁ。エルドさん達も石集めに苦労しているから頼んだんだろうけどね。ビーデル団に依頼することで大量に集まったんじゃないかな。


「俺から見ても、ビーデル団の働きに驚いているんだ。子供達だけで組織を運用しているんだからね。俺達もいくつか秘密組織を作ろうとしてるんだが、多分出だしで苦労するのが見えてるんだよなぁ……。

そこで、俺とレイニーさんからの依頼なんだが、新たな秘密組織の幹部にビーデル団の初期の苦労話を聞かせてやってくれないかな?」


 俺の言葉に、ビレルが大きく目を見開いた。何か言おうとしているんだけど声にならないようだな。

 レイニーさん達は期待の眼差しを向けているから、ビレルがますます答えに詰まってしまっている感じに思える。


「そんな……、無理ですよ!」


 まあ、そうなるな。

 さてここからが説得だ。外堀からゆっくり埋めていくぞ。


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