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オリガン家の落ちこぼれ  作者: paiちゃん
303/384

E-302 溢れ出る魔族と宮殿の崩落


 2時間後に、突入するとグラムさんが告げる。


「その間に準備は整いそうか?」

「問題ありません。エントランス前80ユーデに阻止線を築きます」


 俺の言葉に頷くと、兄上達に顔を向ける。


「30分前には、門の右手に部隊を集結させよう。弓隊の半分は城壁に残すつもりだ」

「小型のカタパルトも運びましょう。まだ爆弾が残っていますからね」

「ワシの方も左手に準備させよう。マーベル国の部隊が突入した後に、素早く広場を左手に動かねばならん。鉄門を左はエクドラル王国軍、右手は貴族連合にお願いするぞ!」


 門を開けてくれるなら助かる話だ。それだけでトラ族兵士が数人必要になってしまうだろう。

 俺達は開け放たれた門から、一気にエントランス前に走れば良いはずだ。


「これが今回一番の大戦になることは間違いない。魔族の群れに飲み込まれるよう十分に注意してくれ」

「ちょっとした障害を作れば、それなりに効果があります。既に荷車を幾つか確保しました。東は我等に任せて頂きたい」


 グラムさんの言葉に兄上が自信を持って答える。

 兄上なら兵士を精鋭に育てたはずだ。出来れば後ろから見てみたい気もするが、俺達の部隊は敵の正面だからなぁ。ちょっと気が滅入ってくるのは仕方の無い事ではあるんだが……。


 ティーナさんが用意していたのだろう。ワインを入れたカップが配られたのを

見計らったグラムさんがカップを夜空に掲げた。


「我等に勝利を!」

「「「我らに、勝利を!!」」」


 俺達の声が揃う。カップのワインを一息に飲み干してテーブルに戻すと、互いに笑みを浮かべて頷いた。


「さて準備を始めよう!」


 自軍に戻る3者を見送りながら、指示を出す。

 直ぐに小隊長達が集まって来たので、王宮突入の再確認をするとともに、突入を円滑にするための部隊配列を指示する。


「我等トラ族が先鋒ということですな。ガラハウ殿に恨まれそうです。放炎筒を持った5人に松明を持つ兵を3人。その後ろに移動柵を5個、残った兵士で運びましょう」

「エクドラル軍のトラ族兵士も手伝えるはずだ。オルガン殿に預けるぞ」


 トラ族1個小隊だからなぁ。助かる話だ。


「ガラハウ殿が突入後に、私達が入ります。3個小隊でエントランスを囲みます」


 役割と順序は各小隊長も十分に理解しているようだ。

 小隊長の報告を頷きながら聞いていく。


「皆理解してくれていて助かるよ。それでは、その順番で門の前に並んで欲しい。そうだな……、1時間後で良いだろう。それまではゆっくり体を休めてくれ。ワインを許可するが、カップに半分だけだぞ! 戦が終われば残ったワインを飲めるからな」


 ちょっと残念そうな顔をしているけど、これから戦だからねぇ。酔った状態で戦はしたくないな。


 小隊長達が部隊に戻ると、直ぐにあちこちの焚火が賑やかになる。

 少年達には何もないのかなと思っていると、ナナちゃんがジュースのビンを持って少年達のカップに注いでいる。

 小母さん達が用意してくれたのだろう。ありがたく後方に控えている小母さん達に頭を下げる。


「我等はトラ族と一緒に先陣を切るつもりだが?」

「さすがにそれは許可できません。グラム殿がエントランスはマーベル国とはっきり言葉に出していますからね。ティーナさんが先陣を切ればそれに反することになります。俺と一緒に石火矢を搭載した荷車と同行してください。魔族との戦が始まったなら、一緒に前に向かいましょう」


「そういう事か……。確かに私が放炎筒を持った兵士と一緒に行ったなら、父上の顔を潰しかねんな」

「とはいえ、いざとなったら頼らせて頂きます。その時、1つだけ約束してください。自分で行ける! と思った場所から、一歩後ろに引いてください。兵士の前に出ようとする指揮官は多いですが、指揮官は手柄を部下に挙げさせるのも務めだと思いますよ」


前線指揮官は状況に応じて兵士を使うのが役目だ。

最前線で指揮官が戦って死傷するようなことがあれば、統率が執れなくなってしまう。


 近くの焚火でパイプに火を点けると、バッグから矢筒を取りだしてベルトに着ける。弓を手にすれば俺の準備は完了だ。

 ナナちゃんも弓を使うのかな? 腰に矢筒が下がっている。

 乱戦の中にオーガ等が出てきたら、トラ族兵士の手にあまりそうだ。

 それは俺が何とかしなければなるまい。もっとも、その前にエニル達が始末してしまいそうだけどね。


「兵士というより狩人だな」


 俺の出で立ちを見て、ティーナさんが苦笑いを浮かべる。


「身軽さが一番ですよ。このバックスキンも裏の要所を補強してはいるんですよ。矢を受けても致命傷にはならないと思います」


「矢は防げても、クロスボウのボルトは無理だろうな。このチェーンメイルでさえ突き通すのだからな」


 クロスボウはそれほど普及していないらしい。有効射程が短いし、何といっても次弾発射に時間が掛かるからなぁ。

 それなら弓兵を使って矢を雨のように降らせる方が効果的だと判断しているからだろう。

 一般に普及している銃は、更に次弾発射に時間が掛かる。

 俺達のライフルはガラハウさんの努力もあって、クロスボウの次弾発射時間よりも短くはなったけど、さすがに矢の発射間隔より短くなることはない。

 

 パイプを咥えながら、東西を眺めると3軍が塀を整列させているのが見えた。

 準備完了の報告は時間の問題に思えるな。

 東西共に、先陣を切るのはトラ族兵士のようだ。長剣を背中に背負って。放炎筒を両手に抱えている。

 

「報告します! 東部隊、準備完了です!!」


 走って来た兵士が大声で報告してくれたんだが、生憎と俺ではなくてティーナさんの前で行っているんだよなぁ。

 やはりこの出で立ちでは、士官に見えないのかな?

 

「レオン殿。どんな時でも、それなりの格好は必要ですよ」


 ユリアンさんが笑いを堪えながら忠告してくれたんだけど、耳痛い話だ。

 さすがにグラムさんの部隊からやって来た伝令は、俺の前で報告をしてくれた。

 これで、全軍の突入準備が整ったことになる。

 門を見ると、左右の鉄扉にトラ族兵士が数人何時でも門を開けられるように待機している。

 さて……、始めるか。


 荷車傍に置いてある木箱の上に立つと、大声を上げる。


「いよいよこれで最後の仕上げになる。俺達の力を魔族に示すのだ! 門を開け!!」


「「「ワアアァァァ……」」」


 鉄の扉が開変えると同時にマーベル軍が一斉にエントランスに向かって動き出す。

 荷車の動きに合わせて俺達も前に出ると、その後ろから東西両軍が宮殿の東西に向かって走っていくのが見えた。

 ゴオォォーという音に目を向けると、エントランスから飛び出してきたゴブリン兵目掛けて放炎筒が火炎を噴き出しているところだった。

 既に移動柵の設置も終わっているようだから、砲煙筒の炎が尽きれば魔族の迎撃を阻止している兵士達は後方に下がってくれるだろう。


 炎が下火になりかけた時、ライフル銃の一斉射撃が始まった。

 2発の石火矢が縁とランス目掛けて白煙を伸ばしていき、宮殿内で爆発する。

 さすがに、飛び出してくる魔族の数が一気に減る。

 これを繰り返すことになりそうだ。

 

「放炎筒、残り10本です!」

「通常型石火矢は、次の攻撃で終了です! 新型の在庫は6本!」


 さすがに使ったからなぁ……。後は各自が持つ、小型の爆弾だけになる。

 

「新型を発射機にセットしておいてくれ。今のところはそれほどでもないが、溢れ出したらそれが頼りだ」


 前方のエントランスを眺めながら、大声で指示を出す。

 兄上は荷車がすれ違えるほどの横幅を持っていると言っていたが、既に20発を越える石火矢を撃ち込んでいる。回廊の破損がどの程度まで進んでいるのかを良く見たいところだが、炸裂する石火矢の爆煙でエントランスの中を見ることが出来ない状態だ。

 

 最後の通常石火矢がエントランスの中に白煙を引いて飛んで行った。

 続いて起こる炸裂炎がエントランスから噴き出した時だった。

 ガラガラと音を立てて宮殿が崩れ始めた。

 濛々と上がる土煙を避けるために、兵士達がその場から後ろに下がっていく。

 さすがにこの状態で魔族が飛び出してくるとは思えない。


 伝令を急いで呼び寄せ、宮殿の東西の寄せ手との工房を行っている部隊にエントランス崩落を伝えるよう指示を出した。

 銃兵達が取り巻いているから、しばらくは状況を見守ることになりそうだ。


 ベルトに差したパイプにタバコを詰めると、近くの兵士が持っていた松明を借りて火を点ける。

 

「余裕だな。やはりあれだけ撃ち込めば崩落するのは仕方のないことだろう」

「兵を少しは休ませられるでしょう」


 後ろを見るとナナちゃんの近くに数人の少年がいた。手を振って少年を呼び寄せると、各小隊の被害状況を確認するよう指示を出す。

 

「何度か白兵戦がありましたからね。大きな被害が出ていなければ良いんですが」

「2体を葬っただけだったぞ! レオン殿は矢筒の矢の数だけ葬っているのだが……」

「まだまだ、大型の魔族が姿を現していません。矢を使い切ったのは失敗でした」


 矢が尽きたから、矢筒と弓をバッグに収めておく。次は短槍ってことになりそうだ。


「風でエントランス内の煙が薄まった時に、数体のオーガを見ました。その後にあの崩落ですから、潰されてしまったはずです」

「ほう、ユリアンは見たんだな? 2個大隊ならオーガのような大型魔族は20体はいるはずだ。まだ残っているぞ」


 オーガに長剣で挑むつもりなんだろうか?

 笑みを浮かべて、ユリアンさんと話をしている。

 その時には、この短槍を撃ち込んでやろう。少しは動きが鈍るに違いない。


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