n.07 無自覚って怖い
ミレニア
「お気に入り登録者様、41人だね。みなさんどうもありがとう。
今後とも、よかったら見てね。
ご意見ご要望、可能な限り答えますので何かあったら言ってくだされ」
「はぁ…ふぅ…」
「おお、成功成功。おめでとー」
ハンマーを打つ手を止める。
これは、結構体力がいるなぁ。
「いい感じいい感じ!いやー、教えた私もここまでうまく作れるとは思わなかったよ」
自分で鍛えた短剣を見てみる。
…自分で言うのはあれだけど、これは結構いいと思う。
取り敢えず初めてなのに形がしっかりしているのはいいと思わせてください。
「これは実用性も十分だね。さすが熾天使は違うねぇ」
「…そう…です…か…」
とはいえ疲れてしまってそれぞころではない。
…よく見たらEPがレッドゾーンだ。鍛冶はEPを消費するのか…。
「どうする?ここまでにするか続けるか」
「も、もうちょっと…やります…」
「んー、わかったよ。じゃあ二十分休憩ね」
生産職の人って、大変なんだね…。
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☆夜風の短剣 耐久力3800/3800
斬:250 刺:120
強化値:+0 ??属性:20
レシオコーティング
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まあまあ高性能だなぁ…耐久も3800回は斬れると思えば結構なもの…だと思う。大体市販の武器ならよくて1000ぐらいだからね。
ちなみに、レシオコーティングとは『武器防具と相対した際の武器消耗を0にする』というもので、つまりこの武器で攻撃した時に武器や防具で弾かれても武器が欠けない。
基本的に対人か人型エネミーと戦うには使える。
うーん、これならウィスプの分私が全部作ってもいいかも?EPが圧倒的に足りないけど…。
ちなみに前作ってもらったバリスタは、耐久力5700だけどボルトの種類によって最高で5の耐久力を消費するため数値ほど耐久性はない…はずだったのだけど、まあ私のボルトは特殊な為耐久力は消費しない。
魔法の力って便利だね。
「ほいじゃ、次は何にする?」
「そうですね、では細工を」
「りょーかい」
取り敢えずこんな感じで一通りの生産を覚えておいた。
スキルに新しく〔万能生産〕が追加された。
ちなみに鍛冶以外のものは、ほとんどEPを消費することが無かった。本格的なものとなると結構消費するものらしいけど、今回は初歩ぐらいなので問題ない。
それと分かったことなんだけど、それぞれ生産にもステータスが関係している。
鍛冶でEPを多く消費したのは、私のATKが少ないのも要因の一つみたいだ。
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☆ホワイトピアス 耐久力5/5
神聖属性+1
アンブレイクコーティング
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「はい、お疲れさまー。これで初歩は完璧だね!」
「ありがとうございます」
これで一応、基盤を作るための材料が揃ったぐらいだ。
まだ本職の人には及ばないけど、一般人が頑張ったら出来るぐらいのレベルだと思う。
「途中から殆ど休憩なしだったから疲れたでしょ?それじゃ、これが達成報酬だよ!」
刺繍針を受け取りました
刺繍用糸を受け取りました
刺青針を受け取りました
刺青用染料を受け取りました
装飾筆を受け取りました
装飾用絵具を受け取りました
「よかったら有効活用してね!」
「は、はい…ありがとうです…?」
なんかいくつか、物騒なものが…。
刺青か…あんまり好きじゃないんだけど、これも分類上は『生産』の派生で『装飾』に当たると思う。
あと装飾用の筆と絵具があるから、色々とできそうだ。
「ふふん、私に任せておけばこのぐらい朝飯前!」
「調子に乗らないでください。これはミレニアの実力です」
「わぁ!リーグちゃんひどい!」
「リーグ様、こちらにいらしてたんですね」
「見学させてもらってた」
気付かない間に見られていたみたいで。恥ずかしいね。
まあ個人的にはよくできたほうだと思うけど…。
でも生産職の人っていつも大変だな、というのは身にしみて分かった。
よくこれだけの作業を一人でできるよね…大きいものだと鎧とか大剣とかだからね。短剣とは桁が違う。
「とりあえず、今日はここまでだね。またいつでも教えてあげるから、暇になったら呼んでねー」
「はい。ご指導ありがとうございました」
「そう言われると、教え甲斐があるってもんだね。んじゃまったねー」
イブ様はどこかに去って行った。
…不思議な人だね、ほんと。
「感覚は掴めた?」
「お陰さまで。さすがは創造の精霊様ですね」
「性格を除けば彼女ほど適任はいないから」
…そうだね、性格を除けばね。
本人も自覚してないしね…。
「本当、あれさえなければ…」
「……」
「「はぁ…」」
二人合わせて盛大に溜息を吐いた。
【フィールド:人間都市 商業都市ファラン】
さて、再びここに戻ってきました。
まあ、今回はちょっとした用事みたいなものだ。
今回は護衛としてキャンサーとハツユキの二人がいる。
キャンサー曰く、ウィスプ隊もどうやら隠れて見張っているらしい。私は全く気付かなかったけど。
それで、私が今回来たのは、
「競売場…?」
「そそ。作ったものを競に出したり、競で買い取ったり出来る場所ね」
ちなみにここはプレイヤーしか利用しない。おそらくそういうAIに組み込まれているためNPCは受付や係員や警備員ぐらいだ。
フリマとかでもいいんだけど、こちらの方が面白そうということでこちらに来た。
もしかしたらいいもの見つかるかもしれないし、ね。
それと、今回は鍛冶で作ったものを一つ競に出す。あの短剣ね。
あれ以外にもう一つ作ったのだけど、そちらはミラ用のものだ。
「いらっしゃいませー。本日はどのようなご用件でしょうか?」
うおい、ここは他の店とは違うんだな。
受付の人の目の前にパネルが表示され、そこに参加や出品と品目が書かれている。
HORに統一感という概念はないのですか?
「…出品で」
とはいえ愚痴ってもしょうがないので出品を選択。
「種類はどちらでしょうか」
「武器ですね」
提示されるものの中から、武器を選択。
「かしこまりました。では、こちらの用紙に必要事項を記入し、商品と一緒に渡してくださいね」
「分かりました」
用紙にあるのは、出品者の名前、最低額、種類、自由欄と。
四つしかないのかい!
「出品者の名前、空白じゃだめですかね?」
「理由をお聞きしてもいいですか?」
「正直、あまり名前を出したくないんですよ…」
とりあえず、出品者名を記入せずに☆夜風の短剣と一緒に出す。
と、何故か受付の人が納得したように頷く。
鑑定とかのスキルがあるのかな。
「事情がおありのようですね。かまいませんよ」
「ありがとうございます。ついでに、参加してもいいですか?」
「ええ、大丈夫ですよ。開始は七分後となります」
まあ、売れることを期待しよう。
あれの材料だけど、山岳の鷲とゴーレム、草原のミミズク、森の兎の素材で作られている。
材料は腐るほどあるから。
「競の会場ってどこかな?」
「多分あっちだよ」
キャンサーの指さす方を見ると、そちらに人がたくさん歩いていってる。
キャンサーの言う通り、多分向こうに会場があるのだろう。
「二人とも、一応注意をお願いしてもいいかな?」
「任せといてよ」
「主の背は私が守る」
心強い(むしろ少し怖い)味方がいるおかげで、安心して見学ができそうだ。
会場は、まあみなさんが予想するようなものだ。
最大収容人数は七百人らしいが、ほぼ満席だ。
私は隅っこの方で左にキャンサー、右後ろにハツユキという感じで始まるのを待っている。
にしても、これだけ人が集まると…
「熱い…」
それに
「気持ち悪い…」
正直、私は後悔していた。
人混みは苦手なのに、どうしてわざわざ自分から飛びこんだのかと。
私は人が多く集まる場所が嫌いだ。もっと正確に言うと限られた空間に多人数の人がいることが嫌いだ。
そのおかげで、一つの箱の中に多くの人間を収容しあまつさえ長時間外出を禁じられる場所、つまり学校という場所も苦手である。
今回も、そこまで小さな箱ではないにせよ一つの箱の中に多くの人間を収容していることには変わりないので、気分が悪くなるのだ。
人として認識しなければいいのだが、生憎とこの条件下ではそれを意識しても行うことは難しいのだ。
世界樹とは違うのだ。あれは精霊であって人間ではないから大丈夫だったのだ。
…そう言えば、前ナムタルを捕まえたあと、ギルドの裏口から出た時もたくさん人いたよなぁ…あの時はとにかく逃げようと必死でこんな感じじゃなかったけど。
「皆様、ご来場いただきありがとうございます」
とか考えていたら、どうやら始るらしい。
「今回の競も、楽しんでいってくださいね」
取り敢えず、どんなものが売られるのかを確認してみよう。
そういえば、武器や防具以外にも素材やアイテムが売れるらしい。
結構、素材というのは相場が決まっているためそれより安く買えないかとこういう場所で買う人もいるらしい。
出品者はNPCに売るより高くれて、消費者はNPCから買うより安く買える。ということだね。
僕はただ見学に来ただけだから、買い手が決まったり売れ残ったりするのをただ見ている。
しかし、結構な熱気だな。みんな頑張って落札しようとしてるんだ。
「出品物も千差万別だねぇ」
「ほとんど粗悪品だけど」
「そんなことはないんじゃない?」
「主の作ったものには及ばない粗悪品」
「私のと比べないでよ…」
三人で軽く話しながら流れていく商品を見ていく。
…人ごみさえ大丈夫なら……
って、私は何を考えているんだか。
「まあ、ミレニアの作ったものに比べたら大体粗悪品だよ」
「それは作った人に喧嘩を売るでしょう。これ以上余計な敵を増やさないでよね」
「主の敵は私の敵。全て切り捨てる」
「それで連鎖的に敵が増えるのよ」
小声なので周りの人には聞こえていないようだ。安心。
「さて、では今回最後の品はこちらです!」
あれ、気が付いたらもう最後か。
「「「おお…」」」
と、その商品が出ていた瞬間に客から感嘆の声があがる。
どれどれ、と…
私の出した短剣かよ!
「こちらはとある女性が持ち込んだもので、切れ味はもちろん、耐久力にも優れるレシオコーティングされています。最低額は5kからです。どうぞ!」
まあ、個人的には妥当な金額をつけたつもりなんだけど…。
判断材料は、ここに来るまでに見てきた武具店や精霊たちに集めてもらった情報だ。
レシオコーティングだけで3kはするらしい。それほどの価値があるのかと疑問だが。
で、落札額は…
「589番が50kで落札です!」
10倍になりました!?
イブとミレニア
無自覚って怖い




